1993年は、日韓の慰安婦問題において重要な転換点だった。
日本政府はこの年に初めて日本軍の関与を認め、「おわびと反省」を表明した。
内閣官房長官だった河野洋平氏にちなんでこの声明を「河野談話」という。
日本政府はいまでも、この談話を全体的に受け継ぐ立場を取っている。
読売新聞はこの談話について、日本が”強制連行”を認める代わり、韓国政府は日本の責任を追求しないという合意があったと報じた。
もし、このやり取りが事実なら、歴史の事実を無視した政治的解決だったことになってしまうが、河野洋平氏はその「密約」を否定している。
結局、河野談話で慰安婦問題を解決することはできなかったし、日本が朝鮮人女性を強制連行したという根拠はいまも見つかっていない。
その発表があったのが30年の今日8月4日だったから、あの談話に改めて注目が集まっている。
先日、韓国の慰安婦支援団体などが主催し、日韓の研究者が参加するシンポジウムが開催され、韓国側からは日本へ”例の要求”があったようだ。
共同通信社(2023/08/02)
歴史問題で「何度も謝罪した」という主張が日本側から出ることに「歴史的に重要な事件は重ねて立場を表明するのが当然だ」と述べ、日本政府の姿勢に疑問を呈した。
「河野談話」30年で日韓シンポ 形骸化懸念、日本に重視訴え
慰安婦問題では、日本側が「もう何度も謝罪した」と言うと、韓国側は「あれでは不十分だ」と反論し、さらなる謝罪を要求するエンドレス状態が続いていた。
このシンポジウムは韓国の慰安婦支援団体が主催したというから、「日本は重ねて謝罪を表明するのが当然だ」という結論も決まっていたと思われる。
河野談話で日本が初めて「おわびと反省」を表明したから、この30年の間に慰安婦問題について、日韓でどんな動きがあったのか?
2001年には、小泉首相が元慰安婦の人たちに対して「心からおわびと反省の気持ちを申し上げます」と表明し、2015年には安倍首相が同様に「心からおわびと反省の気持ち」を表明した。
もっとも重要なことは2015年の日韓合意だ。
日韓両政府は話し合いを重ね、ようやく慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認することができた。
(慰安婦問題についての我が国の取組)
この合意が日韓の”ファイナルアンサー”だ。
慰安婦問題の解決についてもう両国が話し合うことはなく、「不可逆」とされているから、過去の状態に戻ることもできない。
合意前の状態に戻すことは「不可逆」の約束に反するから、日本にその選択肢はない。
慰安婦問題を含む日韓の歴史問題にとって、2022年は重要なターニングポイントとなった。
この年に新しい韓国大統領となった尹(ユン)大統領は、15年の合意を重視し、日韓関係をうまく管理しようとしている。
日経新聞(2023年3月21日)
韓国大統領「日本すでに数十回謝罪」 反日利用に反論
尹大統領は、「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べ、これ以上、日本に謝罪を要求するのはやめようと国民に訴えた、だけじゃない。
同時に、韓国社会には「反日を叫びながら政治的利益を取ろうとする勢力」がいることを指摘した。文脈からすると、その存在を”糾弾した”といっていい。
国民に「脱・謝罪要求」を呼びかけ、野党を中心とする左派勢力を公然と批判した韓国の大統領は記憶にない。
それでも韓国社会では、「日本は重ねて謝罪を表明するのが当然だ」という考え方が根強く存在している。
でも、その根拠は国民感情だ。
いまさら河野談話をつつくと、すごくやっかいなことになるから、日本は継承すると言うしかない。
韓国側の「歴史的な事件は重ねて謝罪を表明するのが当然」という要求には、「すでに最終的な解決を約束した」という事実を示せばいい。
30年前に日本政府は慰安婦問題について初めて「おわびと反省」を表明し、その後も謝罪を繰り返した。
河野談話から得られた重要な教訓は、日本が何度謝罪しても問題は解決しないということだ。
「不可逆」を約束したから、慰安婦問題でもうターニングポイントはない。
日本は日韓合意を基に、それを尊重する尹政権と前向きな日韓関係を築くのが吉。
解決するのが難しい問題です。
しかし解決しなければならない問題なら、「真実」と「事実」を確実に明らかにすることが最優先です。不幸にも韓国人の大多数(おそらく98%)は、日本が強制的に朝鮮の娘たちを拉致して性奴隷にしたことを「事実」と受け止めています。さらに、尹大統領でさえそのように考えているに違いありません。彼が日本に慰安婦問題でこれ以上謝罪や賠償を求めてはならないと言ったのは、「そのこと」について日本が十分謝罪したと思うからです。
そこで河野談話は、韓国人に日本の朝鮮娘強制連行が明らかだという誤ったメッセージを与えたもので、明白な失策です。
韓国人自らが歴史の歪曲を正し、強制連行ではないという事実を理解しなければなりません。
日本と日本人がしなければならないことなら、たとえ正当な代償を払ったとはいえ、日本の戦争に何の関係もない隣国の娘たちを徴発したことに対して申し訳ない気持ちを表すものです。
朝鮮が自分たちの国をまともに運営できず、日帝の植民地となったが、そのことによって数多くの朝鮮人が命を失い、苦痛を受けたのは事実です。それを両国国民が理解し合えば、韓日両国の将来は明るいでしょう。
もう日本が解決済みとして、自分から慰安婦問題に触れることはないでしょう。
韓国側には不満に感じる人も多いでしょうが、また蒸し返すと日韓関係に悪影響が出ます。
日本側にも河野談話に不満を持っている人は多いのですが、もうそれをいじることもできません。