スコットランド人が「日本人の無知」にイラっとした理由

 

知り合いのイギリス人女性は、日本にもう5年以上住んでいる。
イギリスにいたころ日本に興味を持ち、来日して英語を教えながら生活してみたところ、日本が大好きになって、気づいた時には抜け出せなくなってしまった。

とはいえ、日本は良い国であっても完璧ではないから、彼女には「コラコラ」から「ざけんな!」まで、大小の不満を感じることは今でもある。
今回の話は彼女が「日本人の無知」から、最大級のストレスを感じたという内容だ。
それを紹介するには、彼女のルーツについて説明する必要がある。

彼女は、スコットランド人の父とウェールズ人の母のもとに、スコットランドで生まれ育ったから、自身を「スコットランド人」と考えている。
だから、日本に来てから、イギリスの事情を知らない一般の日本人がスコットランドを「イギリスの一部」と考えていることにショックを受けた。

 

 

イギリスの正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」で、英語では「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」となる。
外国人に「イギリス」と言っても、知ってる人にしか通じないから、「(The)U.K」と言えばOK。
イギリスは、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの「国(Kingdom)」が集まってできている。
だから、この4つは決して「地方」ではない。

上のスコットランド人女性は「イギリス」という言葉に違和感を感じて、調べてみたら、これはイングランドに由来する日本語と知る。
ぶっちゃけ、多くのスコットランド人はイングランドを嫌っているから、彼女も「イギリス」に良い印象を持たなかった。

 

そんなスコットランド人がある日、母国のスコットランドにいる父親に、日本の食べ物を送るために荷物を持って近所の郵便局へ行った。
彼女の日本語スキルは日常会話をギリ話せるでレベルで、事前にネットで調べていたから、まぁ何とかなるだろうと考えていた。
実際、彼女は郵便局の職員と話をしながら、必要な手続きをすべて済ませて、手ぶらで帰ることができた。
父が日本の食べ物をおいしそうに食べる様子を想像すると、彼女は幸せな気分になる。
でも、そんなハッピーな気持ちを打ち消すような出来事が郵便局で起こった。

彼女はどの国に荷物を送るか聞かれ、「スコットランドです」と笑顔で答えた。
すると、郵便局のおばさんは一瞬、困った顔をして「ああ、イギリスですね」と言う。
これは聞いた彼女は内心で「ちがうわっ! スコットランドはイギリスじゃなーい」と叫び、表面ではニッコリと「いいえ、スコットランドとイギリスは違います」と言った。
そこへおじさん(局長?)がヘルプにくる。
そしてまた、「ああ、イギリスですね」「ちがうわっ!」というやりとりを繰り返す。

結局、スコットランドに荷物を送る手続きを済ませることはできたが、彼女は大きなストレスと不満を感じた。
だから、帰りにコンビニへ寄って、新作スイーツを買うしか選択肢はなかったったという。

 

現在のスターリング・ブリッジ

 

きょう9月11日は、1297年に「スターリング・ブリッジの戦い」が起きた日だ。
この前年、スコットランドはイングランドに至宝の『スクーンの石』を奪われる屈辱を味わった。
『スクーンの石』は戴冠式に必要不可欠で、これが無いと戴冠式を行うことはできない。
日本で言えば、『三種の神器』のような超重要アイテムだ。

【泥棒が英雄へ】イギリスを震撼させたスクーンの石盗難事件

イングランドはこの石を奪うことによって、スコットランドをイングランド王の支配下に置く意思を明確に示した。

でも、その翌年、さっそく独立を求める戦いがぼっ発。
1297年の9月11日、スターリング・ブリッジの戦いで、スコットランド軍がイングランド軍を打ち破り、スコットランド人は歓喜し、自信と名誉を回復することができた。
そして、1320年にスコットランドはイングランドからの独立を宣言する。
でも、これは始まりに過ぎず、スコットランドとイギリスの屈辱と憎悪の歴史はその後も続くことになる。

スコットランドの歴史

 

もし、イギリスについて、イングランドを中心にスコットランド・ウェールズ・北アイルランドの3つの地方があると考えている人がいたら、その誤解は脳内で削除した方がいい。
イギリスはあくまでも「United Kingdom」で、1つの国の中に、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの国があるのだから。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。