富士山のオーバーツーリズム 米国人の意見・複雑な背景

 

1945年の8月15日、2度の原爆投下をくらって、ボロボロとなった日本はアメリカに降伏した。
そして、78年後の現代、FRIDAYデジタルがこんな記事を掲載した。(2023年08月15日)

「もうグチャグチャ…このままでは事故は多発するし、富士山もボロボロになる!」富士登山ガイドが警鐘 

ボクは静岡住みだもんで、富士山はいつ噴火してもおかしくないと前々から聞いていた。
でも、今のところそんな気配はなく、そのまえに富士山の人気が大爆発した。
とんでもない数の登山者がやってくるようになったから、山小屋は平日でも満員状態で、富士山は完全にキャパオーバー。
富士山登山では、徹夜で歩いて降りる「弾丸登山」が問題になっているが、山小屋に泊まれないことも結果的にこれを助長している。

それに最近では、安全よりカネもうけを優先する業者も多いらしい。
通常、1人のガイドが担当できる登山者の数はなら8~10人で、海外ではガイド1人当たり○人と制限されていることが多いのに、日本ではそんな規制がないから、トラックの「最大積載量 つめるだけ」みたいな状態になっている。
そのため、1人のガイドが40人を担当する、超無責任で危険な富士山ツアーもあるようだ。
おそらく富士山が世界遺産に登録された影響なんだろうけど、 山小屋を増築することはできない。だから、登山者はどうしても外にあふれてしまう。

そんな富士山のオーバーツーリズムの様子を見て、記事の中で経験豊富なガイドがこう怒る。

「富士登山は、もうグチャグチャです。このままでは、いつ大きな事故が起きても不思議じゃない」

こんな現状にネットの感想は?

・完全予約制にしろよ
・富士山を観光地化してお金儲けの道具としてしか考えてこなかった連中の責任
・軽く考えているやつは登らせない強制力がないとダメだな。
・何か起こってからでないと動けないのがこの国
・人気出過ぎて客をさばき切れない
ワンオペ飲食店みたいなこと言うとるな

ことし、知り合いのウクライナ人が富士山へ登った。
彼が驚いたのは、想像を超える数の登山者がいて、山頂まで大渋滞があったこと。
それにゴミの問題も深刻で、富士山については課題が山積みだ。

 

富士山は重要な聖地であり、観光地でもある。
もし、富士山を信仰の地として完全な聖地にしたいのなら、オーストラリアのウルル(エアーズロック)のように、登山を完全に禁止するのも一つの方法だ。
でも、最近の富士山は観光地と見られる傾向が強いから、それは現実的には無理。

 

 

富士山のオーバーツーリズム問題について、静岡県に住む知人のアメリカ人に意見を聞いてみた。
彼は、現在の”任意”の入山料(1000円)に反対で、5000円に増額したうえで義務化し、登山者から徴収したお金をトイレなどの管理費にあてるべきだと考えている。
そして、さらにこんなことを言う。

「Ankor Wat is a world heritage site and you need to pay to get into the city. I don’t see why Mt. Fuji should be different.
Residents of Japan shouldn’t have to pay the same price though as it’s our taxes that help build the infrastructure that allows Mt. Fuji to be a tourist attraction in the first place.」

世界遺産のアンコールワットでは、街に入るためにはお金が必要だ。富士山がなぜ違うのかわからない。
日本に住んでいる人は、同じ料金を支払う必要はない。私たちの税金によって、富士山が観光地として整備されているのだから。

アンコールワットと富士山を、同列に考える発想はなかなか斬新。
それにしても、カネで問題を解決しようとするのはアメリカ人らしい。
ただ、彼が言っているのは、アンコールワットを含め、いろいろな遺跡が点在する広大なエリアのことだと思われる。
そこに入るには入場料が必要だけど、アンコールワットのある街(シュムリアップ)には無料で入ることができる。
いまアメリカではラーメン1杯が3000円ほどだから、アメリカ人観光客にとって、5000円なら問題ないだろう。

 

入山料を徴収するという発想はシンプルでも、富士山の管理状況はすごく複雑だ。
富士山全体を管理しているのは環境省で、8合目から上は浅間神社、そして8合目までの登山道は静岡県と山梨県の土木課の管轄となっている。
さらに、5合目付近は富士宮市(静岡県)と富士吉田市(山梨県)が管理している。
入山料を義務化するには、こうした関係者の意見をまとめないといけない。
ほかにも、それに反対する人たちの説得も必要だ。

静岡新聞が入山料の義務化について、山小屋を運営している事業所にアンケート調査を行った。
その結果、「分からない」「その他」を除くと、12の事業所が反対し、賛成した事業所は1つしかなかった。
つまり、登山者が減っては困るのだ。

いま山梨県では、「富士山登山鉄道」の導入を検討している。
ここでも地元の自治体で賛否が分かれていて、それによって儲かりそうなところは歓迎するが、そうでないところは反対だ。
富士山のオーバーツーリズムについては、実際のところ、それで困っている人と笑いが止まらない人がいるから、具体的な対策がなかなか出てこない。
現時点で、グチャグチャ状態の富士山がボロボロになるまえに、有効な改善策を導入できるかは不透明だ。
富士山から得られる利益をめぐって、人間界がグチャグチャになっている。
アンコールワットみたいに簡単にはいかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。