【勝利の女神】NIKEにホンダ… 世界中でニケが人気のワケ

 

本田宗一郎が築いた世界的なバイクメーカー、ホンダのロゴがこれ。

 

 

世界的なスポーツメーカーであるナイキのロゴはこれ。

 

 

ホンダとナイキが躍進し、世界的な企業となったことには共通の理由がある。
それは、勝利の女神を味方につけたこと。

 

14世紀、オスマン帝国は「ニコポリスの戦い」でヨーロッパの連合軍に勝利し、ヨーロッパ人は戦意を失った。

ニコポリスの戦い:オスマン帝国に、ヨーロッパが戦意喪失

ニコポリスの「ポリス」(polis)とは、古代ギリシアにあった都市国家を指す。
このギリシャ語のポリスは、police(警察)や politics(政治)などの語源となり、現代でもコスモポリス(世界都市)、メガロポリス(巨大都市)、テクノポリス(高度技術集積都市)とよく使われている。
そして、「ニコ」は勝利の女神ニケを意味する。
ニコポリスとはギリシャ語で「勝利の町」(City of Victory)を意味し、古代ギリシアの人たちは、上のブルガリア以外の都市にもこの輝かしい名前を付けていた。

約2千年前、オクタウィアヌスはアクティウムの海戦でアントニウスやクレオパトラを破ると、
彼は戦いの勝利を記念して、ギリシアに「ニコポリス(Nicopolis)」という都市を建設した。
そしてオクタウィアヌスは、初代ローマ皇帝のアウグストゥスとなる。
そのほかにも、エジプトやトルコにニコポリスという都市がつくられた。

 

アクティウムの海戦

 

フランスのルーブル美術館には、世界的に有名な古代ギリシア時代の彫像「ミロのビーナス」と「サモトラケのニケ」がある。
偶然にも、どちらの女神も両手を失っている。
サモトラケのニケ」の場合は頭部さえ無い。

 

 

サルモネラに似た響きのサモトラケは、ギリシャのエーゲ海の浮かぶ島の名前で、1863年にここで勝利の女神ニケの像が発見された。
この像は紀元前2世紀に制作されたと考えられていて、高さは約2m50㎝もあるから、間近で見たらきっと圧倒される。
2000年以上前に作られた像で、このクオリティーは驚異的だ。

サモトラケのニケの「ニケ」は、英語ではサモトラケの「Winged Victory」(翼をもつ勝利)と表現される。
「ニケ」が勝利の女神であることは間違いない。
でも、古代ギリシアの人々がこの女神や像についてどのように考えていたのか、正確には分かっていない。
サモトラケのニケの解釈にはこんな説がある。
船首に舞い降りる勝利(女神ニケ)の像は、重要な海戦に勝利した後、人々が大神に感謝の気持ちを示すための捧げ物とした。

a representation of Victory landing on a ship’s bow can be interpreted as an offering to thank the Great Gods following an important naval victory.

Winged Victory of Samothrace

 

古代ギリシア人たちは海戦に勝利すると、それを神のおかげと考えてニケの像を立てた。
日本語版ウィキペディアの説明によると、サモトラケのニケは、ロードス島の人々がシリアとの戦いに勝ったから、勝利の女神ニケに感謝して、サモトラケ島にこの像を立てたとされている。
感謝する対象が大神(Great Gods)なのか、女神ニケなのかはよく分からん。
ケースバイケースかもしれない。
とにかく、これならギリシア人が戦いに勝った地に「ニコポリス(勝利の町)」と名付けたことも理解できる。

 

古代ギリシャの都市エフェソスにあるニケの彫刻(トルコ)

 

ニケ(紀元前5世紀)

 

デロス島のニケ

 

 

ルーブル美術館にある「サモトラケのニケ」は、船首に立っているイメージだ。
台座を含めると、高さは約5.5mもある。
腹筋や足の筋肉を見ると、ニケはミカサ並みに鍛え上げられているらしい。
でも、それでいて、女性らしい柔らかさも感じられる。
上の3つと比べると、サモトラケのニケは頭部や両腕が欠けていることで、これについて考える余地がうまれるから、魅力がより引き立っているような気がする。
言わば、永遠の未完だから、想像にも終わりがない。

1997年に公開された映画『タイタニック』では、ヒロインがタイタニック号の船首近くで両手を大きく広げる印象的なシーンがある。
あれは、翼を広げて船首に立つニケをイメージしたものだ。

ちなみに、ギリシャ政府はフランスに対して、「ルーブルにあるサモトラケのニケは略奪されたもので、本来の所有者は我々だ! だから、早く返せ!」と訴えているが、フランス側は聞く耳を持っていない模様。

 

 

この NIKE(ニケ)は、英語で読むと「ナイキ」となる。
このロゴには「SWOOSH」(スウッシュ)という名前があって、「躍動感」や「スピード感」を表現しているらしい。
これはまさにニケのイメージ。

 

 

ホンダのロゴ(Wing マーク)については、「サモトラケのニケの翼に世界に羽ばたくHondaの姿を重ねシンボライズしたもの」と公式ホームページに書いてある。
Honda Motorcycle philosophy

 

 

ナイキもホンダも、勝利の女神をシンボルに取り入れることで、その恩恵を受け(たぶん)、世界的な企業に躍進することができた。
アクティウムの海戦で勝利し、ニケに感謝したオクタウィアヌスが初代ローマ皇帝となったことも、ナイキやホンダのイメージにピッタリマッチかも。
ちなみに、エナジードリンクのレッドブルの「Gives you Wings(翼を授ける)」は、ニケの翼とは別ものだ。

 

こんな逸材を日本のアニメやゲーム界が見逃すわけない。

 

 

日本 「目次」

英会話 「目次」

仏教とギリシャ神話の共通点 “三途の川”で欧米人が思ったコト

ヨーロッパ人が思う神道とキリスト教の違い:神・聖人・奇跡

【閻魔とサタン】仏教とキリスト教の“王”、その共通点と違い

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。