韓国人のハングルへの愛や敬意はホンモノだが、限度はある

 

韓国で10月9日は「ハングルの日」だ。
韓国の人たちはこの文字を大好きだし、誇りに思っている。
ボクも15年ほど前、そんな韓国人のハングルに触れる経験をした。
韓国人の友人とソウル市内を歩いていると、とつぜん彼女が立ち止まり、「あれを見てください!」と言って指をさす。
そこにあったのは、このスタバ。

 

 

「スターバックスは世界中にあります。でも、ハングルで店名が書かれているのはここだけなんですよ!」

この情報が正しいかは不明だが、「ハングルはとても優秀な文字と言われています」と友人がドヤ顔で言ったのはホント。
そうは言われても、こっちはハングル・ラバーじゃないから、「へー、そうなんだ」とやや棒読みで返事をした。
すると、少し変な間があって、「写真を撮らないんですか?」と言われたから、「それを待っていたのか」と気づいて、カメラを取り出してシャッターを切る。
上の写真がブレているのは急いで撮ったせいだ。

 

2007年の「ハングルの日」に、韓国の全国紙・中央日報が「グローバル化・情報化時代のハングル」という見出しの社説でこう強調した。(2007.10.09)

・ハングルは、中国の漢字や日本の仮名に比べて、コンピューターでの入力速度が7倍も速い。
・ハングルの日が、ただハングルの優秀性を称える日であってはいけない。
・基本には、ハングルと韓国語に対する愛と尊重が重要だ。

つまり、韓国国民はハングルの優秀性をしっかり理解し、「世界文字」にさせる努をしなければならない、と。
思えば、友人が「あれを見てください!」と言った行動も、こんな考え方が元になっていたのだろう。

日本人だったらどうだろう?
「すたあばっくす」と平仮名で書いてあるスタバの店舗を見て、外国人に誇らしげに紹介するだろうか。

 

韓国のスタバで買ったハングルタンブラー

 

韓国の人々がハングルを優秀な文字と認識し、それに愛し、尊重する心はホンモノだ。
でも、愛にも限度がある。

中央日報の記事(2023.01.06)

「偽物かと言われるかも」…ハングルで「グッチ」と書かれた320万ウォンの新作

グッチが韓国の消費者に向けて、ブランド名の「グッチ」をハングルで書いた商品を売り出した。
半袖Tシャツが約10万円、下の上着だと約35万円ナリ。
強気の価格設定のように見えるが、世界的な高級ブランドとしては常識的か。

 

*グッチ公式サイトのキャプチャー

 

記事によると、グッチのチャレンジに対する韓国の消費者の反応はイマイチ。
「斬新で面白い」という好意的な反応は少なく、「東廟(トンミョ)に行けばありそう」「偽物かと言われる」といったネガティブな声が多かったらしい。
個人的には、韓国人がSNSで「正気か?」と紹介しているのを見て、初めてこの商品を知った。

「誰がこれに 320万ウォンも出すんですか! これを着て街を歩いたら、絶対グッチのパクリ商品と思われますよ」

そんな彼のメッセージは多くの韓国人の同意を集め、コメント欄には酷評の嵐が吹き荒れた。
みんなハングルが大好きでも、「グッチのハングル化」にはついていけないらしい。
愛が足りないワケではなく、ハングルと高級品はカップルにはなれない、ということだろう。

 

 

【漢字とハングル】韓国人が日本のお寺で感じた”過去との距離”

アニメでみる日本人と韓国人の感覚の違い:丁寧さとスピード感

日本と韓国の職人の違い。文化を育てる「天下一」の考え方

旅㉑おにぎりをめぐる日本と中国・韓国の食文化のちがい

現在と600年前では正反対!韓国人のハングル文字への印象は?

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。