韓国の人たちは愛国心が強く、自国の文化とくにハングル文字に誇りをもっている。
ということを誰よりも知っているのが韓国人で、だから有名人がときどきこんな愛国パフォーマンスをする。
中央日報の記事(2017年08月29日)
<大リーグ>呉昇桓、ハングルのユニホームを着て投球
阪神タイガースでも活躍した呉昇桓(オ・スンファン)選手はこのとき、米メジャーリーグのカージナルスに所属していた。
そして自身の名前をハングル文字で書いたユニホームを着てプレーをして、韓国人をよころばせた。
当然、この「逆」をすると怒られる。
韓国のあるバレーボール選手は、シューズに描かれた日本企業のマークをガムテープでおおって試合に出場している。
さて、いま韓国の人たちはハングル文字をどう思っているのか?
韓国の国立国語院の調査によると、韓国人の「ハングル愛」は相変わらず健在だ。
朝鮮日報の記事(2019/08/26)
ハングルに対する認識(複数回答)では、美しい文字(92.1%)、科学的な文字(91.8%)との回答が多く、ハングルやハングル文化に関心があるとの回答は88.9%に達した。
国民の90%「ハングルは美しく科学的な文字」
ほぼすべての韓国国民がハングルに対して、「美しくて科学的な文字」という印象をもっている。
ちなみに2017年の時点で、世界の言語使用者ランキングでハングルは13位だったという。
ところで日本人だったらどうだろう。
いまの日本人は平仮名についてどう思っているのか?
世宗
数年前、ソウルにある王宮「景福宮」に行ったとき、現地の日本語ガイドもハングルの優秀さを話していた。
ただその説明の仕方が、
「ハングルは世界一科学的な文字で、どんなに頭の悪いで人でも10日で覚えることができると言われています」
という「上げて落とす」というスタイルだったから、これを聞いて笑い出す日本人観光客もいた。
このハングルをつくったのが朝鮮の第4代国王・世宗(セジョン:1397年 – 1450年)だ。
当時、朝鮮半島では漢字が使われていたけど、漢字はいまも昔もむずかしい。
文字がそれしかないと、庶民はいつまでもたっても読み書きができない。
それで世宗は「訓民正音」をつくろうと思い立つ。
わが国の語音は中国と異なり、(中国の)文字と互いに通じない。故に愚かな民は言いたいと欲するところがあっても、ついにその心情を伸べることができないことが多い。余がこれを憐憫に思い、新しく二十八字を制定した。人々がたやすく習い、日用に便ならしむるためである。
「朝鮮儒教の二千年 (姜 在彦) 朝日選書」
こうして生まれたのがハングル文字だ。
ただ当時は「訓民正音」(民を教える正しい音)と呼ばれていた。
現在の「ハングル」という呼び方が生まれたのは、韓国人にとっては不本意ながら、日本の統治時代といわれる。
「ハングル」という呼称が文献上に初めて現れるのは大日本帝国による韓国併合以降の1912年のことであり、周時経に始まる。
そしてハングル(訓民正音)に対するイメージはいまと正反対。
漢字と別の文字を使うということは、中国との「文化的独立」を意味する。
当時の知識人には耐えられないことだ。
いまの韓国では国民の90%以上が「美しく科学的な文字」と思っているけど、約600年前の韓国人(朝鮮人)は「野蛮な国(夷狄)の証拠」と思っていた。
第一には、わが王朝は祖宗以来、誠意を持って事大の礼をとり、華制を遵守してきたのに、「事大慕華」にとって恥ずかしいことである。
ただ蒙古、西夏、女真、日本、生蕃にはそれぞれの文字があるが、夷狄だから語るに足らない。
朝鮮が中華を捨てて夷狄と同じくなることである。「朝鮮儒教の二千年 (姜 在彦) 朝日選書」
平仮名という中国とは別の文字をもっていた日本は「野蛮な国」というのがこの時代の朝鮮人の見方だ。
でも戦国時代の日本にやって来たヨーロッパ人宣教師は、独自の文字をもつということで日本を高く評価していた。
こちらも参照のこと。
また側近の中にはどうしてもと言うのなら自分を殺して文字を制定して下さいと頑なに阻む者もあり漢字による知識を独占したい両班(ヤンバン)の反対も受けた。
静岡市に「清見寺」というお寺があって、そこに朝鮮通信使が書いた詩がたくさんある。
すべて漢詩で、ハングル文字で書かれたものはひとつもない。
世宗がつくったものの支配階級にいた両班(ヤンバン)が認めなかったから、訓民正音はあまり広がらなかった。
でも、ハングル創製という文化的功績は大きい。
これによって世宗はいま韓国で最も尊敬される人物のひとりになっている。
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朝鮮で「訓民正音」が制定されたのは、当時の朝鮮における正式言語である中国語(=漢文)を正しく発音できるようにするためだった、つまり元々は発音記号として考えられたものだったという説があります。なので、中国語を必要としない庶民には拡がらなかった。
「訓民正音」から「ハングル」という呼称に変えて、朝鮮語を「漢字ハングル混用書き下し文」で表現できるように文法を整理して、庶民への教育普及を行ったのは、朝鮮を併合した明治政府の功績です。
日本語のひらがな・カタカナは縦横五十音の一覧表に整理できます。
これに対し、ハングル1文字は、「左側」「右側「脚部(たとえば漢字「然」の下の四つ点に相当)の有無」の三要素で構成されているので、全部を整理しようとすれば縦・横・高さの三次元に並べなければならず、その全ての組合せを数え上げれば何千種類ものハングル文字があり得ます。
ただ、その膨大な文字の全てが現実に使われている訳ではないが。よく使われるのは500字くらいかな?
世宗が訓民正音をつくった理由には、王権の正当性の確立があると思っています。
その具体例が「竜飛御天歌(りゅうひぎょてんか)」で、これはいまの10万w札のデザインになっています。
庶民にそれを読ませて、李家の統治を正当化したのでしょう。
デザイン的に見てどうみても