【英雄王キュロス】ペルシア帝国の創始者&ユダヤ人の救世主

 

きょう10月12日は、紀元前539年にペルシア国王のキュロス2世が新バビロニア王国の首都バビロンを占領した日のようだ。
個人的にこの王は、古代オリエント世界における織田信長のパワーアップ版と考えている。
キュロス2世にはすさまじい攻撃力があり、メディア王国やリュディア王国などの周辺国を征服し、オリエント諸国を統一してペルシア帝国を築いた。

現代のイラン人はこの英雄王を建国者と考えていて、1971年の10月12日、キュロスが首都バビロンを占領した日に「イラン建国二千五百年祭典」を開催した。

 

キュロス2世

 

キュロス王が率いた軍団「不死隊」を再現したもの

 

キュロス2世は大帝国の創始者であると同時に、ユダヤ教徒にとっては偉大な救世主。

紀元前580年ごろ、新バビロニアの王ネブカドネザル2世によってエルサレムが攻略され、ユダヤ人たちは捕虜としてバビロンへ連行された。
この「バビロン幽囚」以降、ユダヤ人は異国の地で異民族の支配を受けながら、おそらく奴隷のような過酷な生活を送っていたと思われる。
しかし、悪いことばかりではない。
この時期に、彼らが自分たちの宗教について改めて考えたことによって、ユダヤ教が確立する。
それによって、その後、ふたたび国を失ってヨーロッパなどへ移住しても、ユダヤ教徒としてのアイデンティティを失わずに済んだ。

紀元前6世紀の日本というと、まだ文字もなく、人々が森でドングリを拾っていたころだ。
もし、この時代に日本人が戦争に負け、外国へ移住させられていたら、きっと日本人としてのアイデンティティは無くなり、その国の人間に同化していただろう。

 

「バビロン幽囚」でエルサレムから移動するユダヤ人

 

春の来ない冬はない。
紀元前539年10月12日、キュロス2世が新バビロニア王国を倒すと、とらわれていたユダヤ人たちを解放した。
彼はユダヤ人をエルサレムに帰国させ、信仰の自由を認めてエルサレム神殿の再建を命じた。
バビロン捕囚を終わらせ、ユダヤ人に自由をもたらしたことで、キュロス王の名前はユダヤ教の歴史に永遠に刻まれることになる。
彼はこの功績から、ユダヤ人の救世主(メシア)と認められ、ヤハウェ(神)から油を注がれたという。
このような立場で崇拝される人間は、歴史上、ユダヤ人以外ではキュロス(Cyrus)しかいない。

Cyrus was anointed by Yahweh for this task as a biblical messiah; Cyrus is the only non-Jewish figure to be revered in this capacity.

Cyrus the Great 

油を注がれた者は、神によって支配権を与えられるとされている。(油を注がれた者
救世主であるキュロスはユダヤ人の王になったのだ。

 

緑がペルシアで、赤い部分が新バビロニア王国

 

それ後、トキは流れて2023年になると、イスラエルでイスラム武装集団『ハマス』による大規模テロが発生し、1000人以上のユダヤ人が犠牲になった。
ハマスの背後にいたのはイランだ。

NHKニュース(2023年10月11日)

イラン “ハマスに技術移転 大規模攻撃は支援の成果” 誇示

イランの支援によって、ハマスの兵器開発能力が向上し、今回の悲劇につながった。
現在、ユダヤ人にとってイランは完全に敵国となっている。
これには英雄王もガッカリだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。