【日本料理】茶碗蒸しの歴史・台湾とアメリカでの知名度

 

「最近、面白いコトがありましたよ! 日本にも関係することです」

知り合いの台湾人から、そんな連絡をもらった。
台湾にある回転寿司屋で、男性の客同士によるケンカが発生し、まぁそれ自体はめずらしいことではないけれど、その様子が台湾で公開されると、世間の注目と笑いを集めたという。

ケンカの中で、相手を挑発するために、「てめえ! 茶碗蒸しみたいなカオしやがって!」といったセリフを吐いた人がいて、それが台湾人の心に刺さった。
その動画が拡散されると、台湾全土で茶碗蒸しの売り上げが上がったり、「你長得像茶碗蒸!」(お前の顔は茶碗蒸しにそっくりだ!)は流行語になったりして、台湾ではちょっとした茶碗蒸しブームが起きているらしい。

 

 

この料理は台湾で「茶碗蒸」の日本語が使われていて、レストランで食べるだけでなく、個人的に家庭料理としても作られている。
そんな話をした知人は、茶碗蒸しを日本料理と思っていたけれど、ルーツは中国料理かもしれない。

江戸時代に、外国と交易をしていた長崎で、中国人から茶碗蒸しの“元ネタ”となる卵料理が伝わったという話がある。
また、日本初の専門店とされる「吉宗」(よっそう)のウェブサイトには、寛政年間(1789年~1801年)に京都・大阪で生まれ、江戸や長崎に広まったと書いてある。
伊予藩士だった吉田宗吉信武が長崎で茶碗蒸しに出会い、「こんなに美味しい料理があったのか!」と感動し、茶碗蒸しと蒸し物専門の料理店を開いたという。(吉宗の歴史
初期の茶碗蒸しには具材がなく、後にシイタケ、ギンナン、鶏肉、海老といった食材が加えられ、現在の茶碗蒸しできあがった。

 

知人のアメリカ人は日本に10年以上住んでいて、日本語はペラペラで文化や歴史にもくわしい。
そんな彼がある時、「茶碗蒸しは西洋料理の影響で生まれた食べ物と思った」と言う。
そうか?
使われている食材は昔から日本にあるもので、出汁(だし)はまさに日本料理の象徴で、どこにも西洋要素が見当たらない。
でも、彼からすると、箸ではなくスプーンを使って食べることに違和感を覚え、茶碗蒸しは西洋に通じているのでは? と考えたらしい。
その視点はなかった。

 

 

台湾では茶碗蒸しは超有名だが、アメリカではほぼ無名らしい。
先ほどのアメリカ人はこんなことを言う。

「日本料理に関心のある一部の人なら、茶碗蒸しを知っているかもしれない。でも、一般的のアメリカ人にはその可能性すらない。」

ネットを見ると、「Chawanmushi」だけでは分からないため、「Japanese Steamed Egg Custard」 、「Savory Egg Custard」、「Umami packed Japanese savoury egg custard」という説明がセットになって紹介されている。
この場合のカスタードは、卵を溶かして熱を加えて固めたものを指す。
それに、甘くなくて良い味の食べ物を意味する「Savory(savoury)」(セイヴォリー)や「Steamed(蒸した)」を付け加えると、外国人は茶碗蒸しをイメ-ジすることができる。
「Umami packed(うま味たっぷり)」のウマミはわりと有名な英語だから、特に説明は不要のようだ。

アメリカで有名な日本料理というと、スシが圧倒的で、ラーメンやトンカツも徐々に知られるようになってきている。
全体的には、日本料理に関心のあるアメリカ人は増えているというから、いまは知る人ぞ知る「Chawanmushi」も、それだけで通じる日がくるかもしれない。
が、アメリカ人のケンカで「茶碗蒸しみたいなカオしやがって!」という言葉が自然に出てくるようになるまでには、あと軽く200年はかかりそう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。