日本でのハロウィーンは本場アメリカと違って、子どもたちではなくて、大人がコスプレを楽しむ日になっている。
それで以前、アメリカ人女性からこんなことを聞かれ、答えに困った。
「天皇のコスプレをしてもいいの?」
不敬罪のあった戦前の日本なら完全アウト。
でも、今はどうだろう?
法的には問題ないとしても、やっぱり天皇は特別な存在だから、平安時代の天皇ならよくても、今上天皇のコスプレはマズい気がする。
今の日本社会の常識から考えて、このへんのOK/NGの基準はよく分からない。
では立場を変えて、このコスプレは日本なら無問題だけど、アメリカ社会ならどうなのか?
東京に住んでいたアラブ人が渋谷のハロウィーンに参加したとき、イエス=キリストのコスプレをしている外国人がいたから、ツーショットを撮ってSNSにアップした。
日本は無宗教の人が多い国だから、キリストやブッダの格好をしても問題ない。
ちなみに、アマゾンではキリストのコスチュームが2,499円(税込み)で販売されているし、その商品レビューには「神になれます」というコメントもある。
アメリカでもキリストのコスプレは大丈夫かどうか、ポーランド出身のアメリカ人に聞いてみた。
彼女の感覚では、今なら“ギリOK”だけど、もうすぐダメになりそう。
最近のアメリカ社会は人種や宗教に対して敏感肌になっていて、すぐに怒り出す人が増えている。
表現の自由や宗教に対する寛容さは失われつつあり、ネット上では、キリスト教や神を批判したり茶化したりするコメントがあると、感情的になって激しく反応する人が多い。
だから、これまではキリストのコスプレをしても問題なかったけれど、今ではきっと文句を言う人たちが出てくる。
彼女としては、アメリカ社会で怒りっぽい人が増えて、自由や寛容さが無くなっていくのはとても残念。
ただ、アメリカは地域によって、価値観や考え方に大きな違いがある。
だから、北部のニューヨークやロサンゼルスなら、まだキリストのコスプレができる雰囲気があるけど、南部ではそれを許さない空気が強いと言う。
それでも彼女に言わせると、キリスト教の影響の強い多いポーランドに比べれば、アメリカ社会の方が自由度は高い。
たとえば、アメリカならローマ法王のコスプレができるけど、ポーランドでそれはむずかしい。
多くの国民は、ポーランド人として初めて法皇になったヨハネ・パウロ2世(1920年 – 2005年)を尊敬しているから、法皇を“いじる”ことは社会的に許されない。
そもそもポーランドでは、ハロウィンという「異教の祭り」に批判的な雰囲気があるから、法皇のコスプレは二重の意味でマズいらしい。
ミンストレル・ショーのパフォーマー
アメリカで、キリストのコスプレは近いうちにNGになると予測する知人が、「それは完全アウト」と太鼓判を押したのは違う人種の格好をすること。
たとえば、19世紀には白人が自分の顔を黒く塗って、黒人のようになって踊りや音楽を披露するミンストレル・ショーが行なわれていた。
現代のアメリカでそんな「ブラックフェイス」は、人種差別行為になるから絶対に許されない。
また、白人がネイティブアメリカンのコスチュームを着るのもアウト。
基本的に、かつて白人は“差別する側”だったから、彼らが違う人種や文化のコスプレをすると特に厳しく非難される。
アジア系アメリカ人がネイティブアメリカンの格好をするのもマズいけど、白人よりはたたかれにくい。
知人の意見では、白人や黒人が日本の着物を着ることは何とか許されるが、芸者の格好をするのは侮辱的に見えるからダメ。
日系、中国系、韓国系のアメリカ人は外見が似ているから、着物、チャイナドレス、韓服を自由に着ることができる。
最近ではハロウィーンで、魔女やゾンビならいいけれど、アニメキャラのコスプレもやりにくくなっている。
たとえば、白人がドラゴンボールに出てくるアジア人キャラの格好をしただけで、「差別的だ」と食ってかかる人がいたという。
近ごろは日本社会でも人権意識が高まって、以前は問題なかった言動でも、「ポリコレ棒」でポカポカたたかれることが増えてきた。
それでも、今回の話を聞く限り、アメリカと比べると、日本では宗教や人種については表現の自由度が広そうだ。
ミンストレル・ショー
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