1か月ほど前、世界的に有名なアメリカのラッパー、カニエ・ウェストが奴隷制度について言ったことが大騒ぎになった。
でもその言葉のまえに、「カニエ・ウェストってだれ?」という人のために簡単に説明させてほしい。
カニエ・ウェストはアメリカを代表する黒人ラッパー(ミュージシャン)。
2016年までにグラミー賞に57回ノミネートされ、21回受賞している。
2000年に、「カトリーナ」と呼ばれる大型ハリケーンが発生して、アメリカ南部に大きな被害を出したときのこと。
ウェスト氏はテレビの生放送中に、「ブッシュ大統領は、黒人のことは何も考えていない」と当時のアメリカ大統領を非難して、大きな問題になった。
でも、そこはラッパー魂(?)で、問題視されたこの言葉で曲をつくってしまう。
The politically charged song is a response to the Bush administration’s heavily criticized response to Hurricane Katrina. Its title comes directly from a statement Kanye West made on U.S. national television.
こんなウェスト氏が発した一言が、また大きな問題になってしまった。
自身も黒人である蟹江市は、いや、カニエ・ウェスト氏は、アメリカメディア「TMZ」とのインタビューで黒人奴隷が「チョイス(選択肢)」であったと言う。
この「チョイス」発言に、黒人の番組スタッフが激怒する。
ウェスト氏に「何を信じてもいいけど、物ごとには事実がある。君が言ったことには重大な結果がともなう」と真剣な顔で言う。
そして、「ガッカリした!信じられないほど傷ついたよ!」と非難する。
この言葉をどう受け止めていいのか分からない表情で、ウェスト氏はあごに手をあてて話を聞いている。
その様子がTMZのツイートにある。
Kanye West stirs up the TMZ newsroom over TRUMP, SLAVERY and FREE THOUGHT. There’s A LOT more that went down … and the fireworks are exploding on @TMZLive today. Check your local listings for show times. pic.twitter.com/jwVsJCMPiq
— TMZ (@TMZ) 2018年5月1日
アメリカで奴隷制度が400年も続いていたことに対して、ウェスト氏は「that sounds like a choice(それは1つの選択のようだ)」と言っている。
でも、それはちがう。
黒人は自由意志で奴隷になったわけではない。
動物のようにとらえられ、船で運ばれて奴隷にさせられたのだ。
奴隷という生き方をチョイス(選択)したのではなくて、強制的にそうさせられていた。
だから、このチョイスという言葉には批判が殺到。
世界中のメディアがこの発言を報じて、大きな騒ぎになった。
これにあわてたウェスト氏は発言を修正する。
黒人奴隷は自由意志でアメリカに来たわけではなくて、自分たちが「精神的に奴隷にされていた」ということを言いたかったのだと説明した。
「George Bush Doesn’t Care About Black People(ブッシュ大統領は、黒人のことは何も考えていない)」の一言で批判をあびたときは、それを曲に変えることができたけど、さすがに「奴隷はチョイス」はムリ。
ラッパー魂があっても、どうすることもできない。
アメリカ社会でこの発言は受け入れられない。
そんなアメリカではむかし、黒人奴隷はどのような状態にあったのか?
また、いまのアメリカ社会は奴隷制度について、どう考えているのか?
次回、そのことを書いてきます。
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