日本人の美意識:白い肌を尊ぶ風潮と「九条の黒姫様」

 

1915年のきょう11月10日、京都御所で大正天皇の即位礼がおこなわれた。
それにちなんで、今回は日本人の「美意識」について書いていこう。

古代から変わらない日本人の価値観、それは「美しい」の条件に肌の白さがあること。
だから、奈良時代の日本の女性たちは白粉(おしろい)を使って顔を白くしていた。
そして、平安時代の女性は美しい肌を手に入れるために「ウグイスの糞(ふん)」を使っていた。

ウグイスの糞といっても、安心してください、本物のクソではないですよ。
…と言いたいところだが、じつはガチ。
これは本物のウグイスの糞を乾燥させて粉末にしたもので、肌につけると小じわが取れたり、肌がキメ細かくなったりすると信じられていた。
また、「ウグイスの糞」はにきびの治療薬としても使われた。
『源氏物語』には「白く美しげに透きたるやうに見ゆる御膚つきなど」と書いてあり、当時の日本人が白くて透き通るような肌を“美しい”と感じていたことがわかる。

イギリスのアイドルグループ、スパイス・ガールズの元メンバーで、デヴィッド・ベッカムさんの妻であるヴィクトリア・ベッカムさんもこれを試したことがある。
ニキビに悩まされていた彼女は日本人女性の肌の透明感に憧れ、そこから「ウグイスの糞」の存在を知り、肌の改善のために使ったという。

Victoria Beckham, who has long suffered with acne, has used uguisu no fun to improve her skin. It was reported that Beckham admired the clarity of the skin of Japanese women and subsequently learned about the droppings.

Uguisu no fun

 

ヴィクトリア・ベッカムさんからも、日本人の肌は「白く美しげに透きたるやうに見ゆる」だったかも。
ウグイスの糞はいまでも、東京・浅草にある百助化粧品店で売っているらしい。

余談

上の英語版ウィキペディアの「Uguisu no fun」を機械翻訳したら、「うぐいすは面白くない」となった。
ナニコレ? と思ったら、「no fun」を「ノー・ファン」と訳したらしい。

 

日本では、白い肌は美しさや高貴さを象徴していた。
そのため、仏教僧の最澄もマスクを付けているように真っ白な顔で描かれている。

 

日本人が美白に憧れ、尊重していたことは「色の白いは七難隠す」という言葉にも表れている。
白い肌を持つ人はそれだけで美しく見えるから、欠点や醜さが見えなくなる。
現代なら「ルッキズム」として、差別につながりかねない見方だが、日本では昔からこんな考え方があった。

時代が進むにつれて、美白の概念は変化したけど、その重要性は変わらない。
でも、大正天皇の結婚相手である貞明(ていめい)皇后は、肌が浅黒かったことで知られている。
大正天皇が皇太子だったころ、色白で美しい容姿の禎子(さちこ)女王が妃として内定していた。
しかし、このとき日本の天皇は西洋の一夫一妻制を採用することが決まっていて、健康面に不安があった禎子(さちこ)女王は“不適格”と判断される。
代わりに急浮上したのが後の貞明皇后。
彼女は貴族の生まれでありながら農家の雰囲気で育ち、子どものころは裸足でトンボを追いかけるような元気な少女で、「九条の黒姫様」と呼ばれるほど健康的な女性だった。
「色の白いは七難隠す」と違う発想から、彼女が大正天皇と結婚することとなる。

色黒すなわち容姿端麗ではないことよりも、先述の通り『黒姫』と呼ばれるほどに健康であることが重視され、1899年(明治32年)8月21日に婚約が内定した。

貞明皇后

貞明(ていめい)皇后

 

まえにアメリカ人とイギリス人と一緒にファミレスに行った時、テーブルにこんな広告があった。

 

 

アメリカ人は驚いたというか、あきれたように「白人の日本人なんて何人いるんだ? これは日本人を向けの広告だからさ、一般的な日本人をモデルにしたらいいのに」と言う。
これには反論できない。
美しいと感じるものは素直にそう思えばよく、ポリコレを重視して、白い肌を美しいと感じる感性を否定する必要はない。
けど、「九条の黒姫様」のような美の基準もあっていい。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【日本のミスコンの歴史】東京百美人・初代NO.1は末弘ヒロ子

日本よ、これが魔女だ。ドイツのパッペンハイマー魔女判決

混血、美白、魔女狩り… ウクライナに美人が多い理由

【美の条件】秋田・チェンマイが“美人の産地”と言われる理由

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。