きのう11月20日は、アメリカで「トランスジェンダー追悼の日」だった。
これは1998年に、トランスジェンダーの女性リタ・ヘスターが殺害されたことに由来する。
ちなみに、アメリカでは同じ年に別のトランスジェンダー女性も殺害された。
ということで、今回は性的マイノリティーであるLGBTQについて書いていこう。
知識を共有するプラットフォーム『クォーラ』で、ある人が「LGBTQに最も寛容な国はどこですか?」という質問を投じた。
すると、同性愛者の日本人男性が個人的な意見として、「日本だと思います」と意外な回答をする。
アメリカやヨーロッパ諸国では同性婚が認められているのに、日本ではそうなっていないから、「日本は遅れている」と批判する人が多いのに、なんで当事者がそう思うのか?
その理由は大体こんなものだ。
欧米社会ではキリスト教の影響が強く、同性愛に対して、強い嫌悪や偏見を持つ人が少なからずいる。
だから、同性愛者の権利を守る法律があっても、ヘイトクライムなどの暴力や蔑視、イジメなどが日常的にあって、日本よりもずっと深刻な状況にある。
一方、日本では法的整備は進んでいないとしても、次の点で欧米と決定的な違いがある。
日本にいるLGBTに対して差別的な人というのは、ほとんどの場合「気持ちが悪いから」「生理的に無理」程度のものであって、要するに価値観の問題です。
以前、知人のアメリカ人も同じような話をした。
聖書には、神が同性愛を“悪”とみなし、その行為をしていた住民を都市ごと滅ぼしたという記述がある。
アメリカ社会ではキリスト教の信仰から、LGBTQの人たちへに強い嫌悪を感じる人たちがいる。同じ理由で、LGBTQを否定するイスラム教徒も多い。
このアメリカ人は無神論者で、LGBTQの権利を支持している。
彼の話では、アメリカでは差別意識が信仰と深く結びついていて、同性愛を否定することを“正義”と考え、攻撃的な言動で表す人たちが問題になっている。
「トランスジェンダー追悼の日」がつくられた背景にも、そんな憎悪感情があったはずだ。
LGBTの尊厳とや社会運動を象徴する旗(レインボーフラッグ)
欧米でも日本でも、同性愛者やトランスジェンダーの人たちへの差別はある。
でも、大ざっぱに言って、欧米ではその理由が信仰、無宗教の日本では感覚に由来することが多いという違いがある。
先ほどの知人は、アメリカ社会には“神の意思”を理由に、LGBTの人たちの権利や存在を認めず、暴力に訴える人も多いと言う。
ある意味、強い差別意識や危険な状況があったから、法的に彼らを守らないといけなくなったとも言える。
それでも、今年の夏にこんな悲しい事件がおきた。
英BBCの記事(2023年8月21日)
LGBTQ+のレインボー・フラッグ掲げた店主を射殺、米カリフォルニア州
この店主は「LGBTQ+」の当事者ではなく、その権利を守ることを支持していて、経営する店でレインボー・フラッグの旗を掲げていた。
犯人は射殺する前、その旗について「中傷的な発言」をしたというから、これはヘイトクライムとみて間違いない。
朝日新聞が最近のアメリカ社会の空気を伝えている。(2023年7月13日)
浮き彫りになる文化戦争の「戦場」拡大 米国で巻き返す反LGBTQ
いまアメリカでは、LGBTQの権利を祝うイベントがあっても、「反LGBTQ派に攻撃されるかもしれない」という理由から、人混みには行かないと言うLGBTQの人もいる。
実際、この日本人記者の住む近所のバーで、LGBTQをののしる客が現れたという。
こうした反LGBTQ派には、保守党の支持者で熱心なキリスト教徒が多い。
さて、先ほどの日本人男性はこんなことを書く。
同性愛者を「気持ちが悪い」と言う人に話をよく聞くと、だからといって、自分がそれで迷惑しているわけでもないから、「自分の知らないところで好きにやってる分にはかまわない」といった意見が出ることが多い。
日本では、価値観や感覚の違う相手には積極的に関わろうとしないで、距離をとることが一般的だ。
お互いに干渉しないから、無用なトラブルも発生しない。
この人は自分の経験と欧米のゲイの人たちと交流した結果から、「私は日本は少なくとも先進諸国の中ではもっとも居心地が良い」と感じているという。
ただ、こういう意見は日本のLGBTの人たちには受けが悪く、「必ず感情的になって」反論されるとのこと。
日本に比べて欧米では、性的マイノリティの法整備は進んでいるという見方は多い。
でも、日本では、差別意識と信仰が結びついていることはほぼなくて、他人とは関わらないで距離をとる人が多い。
日本では、LGBTQの人たちを襲ってケガをさせたとか、殺害したという事件は聞いたことがない。
「トランスジェンダー追悼の日」なんて不幸な日がつくられることも考えられない。
そんなことから、欧米よりも、日本の方が生きやすいと感じる当事者もいる。
LGBTQに関する日本メディアの報道で、こういう視点を紹介するものはほとんどないと思う。
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