韓流文化は好きでも‥ 欧米人やムスリムが嫌悪する韓国の食

1695年のきょう12月５日は、将軍・徳川綱吉が出した「生類憐れみの令」の一環で、中野に巨大な犬小屋が作られた日。
中野の住民は強制退去を命じられたから、綱吉の中では「庶民＜犬」だったようだ。
極端な動物愛護を掲げた「生類憐れみの令」にはいろいろな批判がある一方で、これによって、日本人が犬肉を食べなくなったというメリットもある。

食文化の脱・東アジア　日本人が犬肉を食べなくなった理由

いまでもこの習慣があって、困っているのがお隣さん。
韓国では犬肉食に対し、反対と支持の立場に分かれて対立が続いていて、つい先日も AFPにこんな記事があった。(2023年12月1日）

「生きる権利を奪うな」畜産業者、犬肉食禁止に抗議韓国

特に若い世代が「犬肉を食べるのは残酷だ！」という理由で反対し、年配の人たちは「これも韓国の食文化だ！」と維持しようとしているが、全体的な流れとしては廃止に向けて進んでいる。
韓国で犬肉の消費量は減少傾向にある。
それでも、まだ毎年約 100万匹の犬が食べられているから、この食文化を支持する人はまだまだ多いことが分かる。
犬肉の畜産業者は廃止に大反対していて、「食べる権利と生きる権利が剝奪されている。犬肉食を禁止するな！」と書かれた横断幕を掲げてデモを行った。
韓国で犬肉食に反対する理由は、動物愛護の精神のほかに“愛国心”もある。

先月、韓国の尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領が、国賓としてイギリスを訪問した。
尹大統領は英議会で行ったスピーチでこんな話をする。

「イギリスがビートルズ、クイーン、ハリー・ポッター、そしてデービッド・ベッカムを持つ国なら、韓国は BTS、BLACKPINK、イカゲーム、そして孫興民を持つ国だ」

＊孫興民（ソン・フンミン）は有名なサッカー選手。

そう言えば前政権の時代、大統領の支持者が「大韓民国は文在寅（ムン・ジェイン）保有国だ！」と自慢気に言っていたっけ。
韓国人はよくこういう言い方をするらしい。
それはさておき、韓流文化が世界中に広がっていることに、韓国民が自信やプライドを持っていることは事実。

友人の韓国人は、犬肉食は BTSやBLACKPINKのクールなイメージと合わないどころか、むしろそのイメージにダメージを与えているという理由で、犬肉を食べる習慣には大反対の立場だ。
知り合いのアメリカ人やイギリス人は、日本に住んでいるにもかかわらず、ネットフリックスで日本のドラマよりも韓国ドラマを楽しんでいる。
韓国でオリンピックなどの国際大会が行なわれると、欧米メディアはよく犬肉食の記事を報じるから、この食習慣は世界的にも広く知られるようになった。
韓国が好きな知人の欧米人もこれにはドン引きだ。
日本人もイルカやクジラを食べて欧米から批判されるけど、犬は家族のような存在だから、それを食べる行為には、イルカとは比較にならないような強い嫌悪感があるらしい。

韓流文化はワールドワイドで、国境や宗教は関係ない。
知人のバングラデシュ人やインドネシア人のイスラム教徒も K-POPや韓国ドラマのファンだ。
しかし、イスラム教で犬は「汚れた生き物」とされている。
だから、彼らが韓国に興味を持ち、より深く知ろうとする中で、犬肉を食べる習慣があることを知って、「信じられない！」と衝撃を受けるムスリム（イスラム教徒）もいると聞いた。

「犬は家族の一員」という欧米人とは理由は違うが、イスラム教徒にとっても犬肉はタブー、禁忌だ。
日本人も犬肉は食べない。でも、これも一つの食文化と認めていて、きっと欧米人やムスリムほど強い嫌悪を感じていない。

韓国の政府や民間が文化を世界へ広めていくほど、「韓国は BTS、BLACKPINK、イカゲームを持つ国だ」と国民は自信や誇り持つようになる。
きょうの中央日報のコラム「文化で広げる韓国領土＝韓国」（2023.12.05）には、韓国の文化と精神が世界に浸透すれば、「わが領土ははるかに広大になれる」と書いてあった。
しかし、韓国のブランドイメージが向上し、“領土”が拡大していくほど、犬肉食が外国人へ与える負のイメージも大きくなる。
かといって、国内には「生きる権利を奪うな！」と廃止に反対する人が多い現状がある。
韓国の人たちが、このジレンマから解放される日はまだまだ遠そうだ。
綱吉はイイ仕事をしてくれた。