日本と中国の違い インドカレー・歴史・国際化

 

ことしの12月、浜松市の大学で学んでいた知人の中国人が母国へ帰ることになった。
その前に、彼とご飯を食べに行っていろいろな話をしたから、今回はその中の「インドカレー・歴史・国際化」について紹介しようと思う。

 

「ボクがおごるから、食べたいものを何でも言ってくれ。ただし2千円以下がのぞましい。」と伝えると、彼はコレを選んだ。

 

 

ーーで、なんで今日はインドカレーにしたかな?

日本に来てインドカレーを初めて食べて、それがとても気に入ったんです。
中国でもインドカレーの店は上海とかの大都市にはあるんですけど、わたしの出身地の地方都市にはないんです。
だから、日本を離れたら、もうしばらくは食べられません。

ーー中国人が日本でインドカレーのファンになった。
インド人もビックリの案件かも。

日本人は本っ当にラーメンとカレーが好きですよね。
この3年間でいろいろなところへ行きましたが、地方の小さな都市でもラーメンとカレーの店は何軒もありました。
カレーは競争が激しいから、全体的に味のクオリティーが高いし、お腹いっぱいになってコスパも良いです。

 

ーー「日本でインドカレーを知った」ってことなんだけど、それは本場のカレーと違うってことは知ってるかな?
日本のインドカレーの店にはネパール人がよくいて、「インネパ店」なんて呼ばれてる。
看板に「本格的なインドカレー」と書いてあっても、やっぱり本物とはちょっと違うんだ。

なにが違うんです?

ーーたとえば「ナン」。
日本にあるインドカレーの店では定番中の定番だけど、あのスタイルはネパール人が日本人の好みに合わせて作ったと言われてる。

ナンと!
インドにナンはないんですか?

ーーもちろんあるよ。
でも、
インド人がよく食べるのはチャパティで、ナンは一般的な食べ物じゃないんだ。
日本のインドカレー屋で、初めてナンを食べたというインド人もいたぐらい。

それは衝撃的な事実ですね。
わたしの頭の中では、日本のインドカレーが標準になってました。
ラーメンもそうですけど、日本ではいろいろなものがオリジナルと変わりますね。

ーー魔改造は日本の文化だから。

 

左にあるのがチャパティという薄いパン。
インド人に食事に招待されたら、きっとこれが出てくる。

 

ーーところで、なんで中国にはインドカレーの店が少ないの?

私の考えですけど、中国料理はバラエティ豊かで、いろいろな味を楽しむことができるから、インドカレーの需要は少ないんですよ。

それに、日本とは「国際化」の違いもあるでしょうね。
中国はここ10年ぐらいで経済的にすごく発展して、都市の近代化が急速に進んでいます。浜松ぐらいの都市はいくらでもありますよ。
でも、日本と比べると、中国では大都市と地方との格差がすごくて、地方では国際化が進んでいません。
上海や北京などの大都市には外国人がたくさんいて、いろいろな国のレストランもありますが、地方都市では状況がまったく違います。

日本では、浜松ぐらいの地方都市にも外国人がたくさん住んでいて、私が知っているだけでも、中国人やトルコ人、イギリス人がレストランやバーを経営しています。
私にはそれが印象的で、中国とは違うなと感じました。
中国で外国人が店を開くことは日本よりも難しいですし、インド人がカレー店を経営しているという話は聞いたことありません。

ーーなるほど。

*ネットで調べてみたら、中国にもカレーはある。
上海ではスーパーでバーモントカレーが売られているし、「ココイチ」は中国に50以上の店舗がある。
日本のカレーはそこそこ浸透しているらしい。
ちなみに、中国のバーモントカレーには中国人の好みに合わせて八角が入っている。

 

日本海軍では明治時代、脚気を予防するために兵士の食べ物が洋食化されて、カレーライスが提供されるようになった。(海軍カレー

 

中国では、都市と地方で大きな差があるとしても、国としての経済力は日本を上回っている。
知人は日本に住んでいた経験から、近代化よりも国際化の面で、中国と日本の大きな違いを感じたと言う。
その理由は、中国には日本のように、西洋文化を全力で学んで吸収した時期がなかったからでは?

 

日本にカレーは幕末か明治初期に、インドではなく、インドを支配していたイギリスから西洋料理のひとつとして伝わった。
明治維新の時期、日本人はカレーを食べながら、西洋列強の先進的な部分を取り入れて、国を近代化させることに成功した。

中国でも明治維新のような改革があって、それを洋務運動という。
1840年のアヘン戦争でイギリスにボコられた後、清朝は変化しないといけないと危機感をおぼえ、西洋の技術や文化、思想を導入し、国を近代化させようとした。
明治維新で、日本人として西洋の知識や技術を受け入れる考え方を「和魂洋才」と言ったように、洋務運動では「中体西用」というスローガンがあった。
しかし、それは結局うまくいかず。
1895年に日清戦争で敗北したことで、洋務運動の失敗が明らかになったから、日本が“ダメ出し”をしたとも言える。

戦後、日本はアメリカに実質的に支配され、政治や教育の制度などを根底から変えられたが、中国は第二次世界大戦の戦勝国だったから、そんな経験はない。

 

奈良・平安時代の日本は唐から文明を学び、国を発展させた経験があり、もともと学習能力は高かった。これはある意味、中国さんのおかげ。
19世紀後半、その能力の違いが両国の近代化で、明暗を分けることにつながった。
中国の歴史では日本と違って、明治維新のように海外の優れたポイントを真剣に学んで国を大きく変えたり、外国から民主主義国家へ変えられたりした経験がない。
洋食を採用して、国民の食生活がガラリと変化した時期なんて知らない。
そんな経験の違いから、日本では海外文化の受け入れに抵抗が少ない反面、中国ではハードルが高く、現在の日中では近代化よりも、国際化で大きな差がうまれた。

中国がこれから国際化を進めていけば、中国の地方都市でも外国人が経営する店が増えて、知人も近場で本格的なインドカレーを食べられる日がくるかも。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。