【安い日本】まさかの10年後 外国人料金の導入も必要に

 

アンコールワットは日本人に大人気で、「行きたい世界遺産」ランキングで2年続けて1位になったこともある。
10年以上前にカンボジアを旅行して、アンコールワットに感動したり、フレンドリーな人たちに出会ったりして、良い思い出をたくさん作ることができた。
ただ、残念だったのは観光スポットに行くと、こんな案内がよくあったこと。

 

 

入場料が、カンボジア人なら300リエルなのに、外国人だと4000リエルと11倍以上も爆上がりしている。
といっても、2023年の今日のレートで換算すると、300リエルは約10円、4000リエルは約138円だから、日本人にとっては、うどんにのせる具材レベルで大した額ではない。
しかし、同じ場所に入るのに、「外国人? なら地元民の◯倍払え」と、当然のように請求されることが何度もあると、じわじわと腹が立ってくる。
個人的には外国人料金を取られることは、横入りと同じように平等や公平に反する行為で、具体的な損害は小さくても、受ける精神的なストレスが大きい。

海外では、自国民と外国人向けに、2つの種類の料金システムを使っている国もある。
その差は国によってバラバラで、経験上、タイだと数倍の外国人料金が多くて、インドやエジプトでは10倍以上に跳ね上がった。
さらに、金額は時期によって変動する。
20年以上前にインドのタージマハルへ行った時、外国人の入場料はインド人の10倍以上だったのに、ことしタージマハルに行った人の情報によると、インド人なら約425円、外国人だと約2000円になっている。
この差が縮まっているのは、インドの経済力が増大しているからだ。
インドネシアのボロブドゥール遺跡の入場料も、外国人だと10倍以上の鬼畜レベルだったのに、いまネットを見たら、外国人が25ドル(約3500円)、インドネシア人は50000ルピア(約460円)で、タージマハルと同じく差が縮まっている。
外国人にはドルで支払わせるのは、外貨を稼ぐためだろう。

 

ただ、高額の外国人料金には、メリットが含まれている場合もある。
たとえばタージマハルでは、インド人用のチケット売り場にはとんでもない数の人が並んでいて、1時間ぐらい待ちそうだったところ、外国人専用の売り場だとほとんど並ばずに買うことができた。
ファストパスが付いていると思うと、不快指数はやや下がる。

日本や欧米などの先進国と違って、インドやカンボジアなどでは月収1万円ほどで生活している人も多い。それで、高い外国人料金を設けて負担を公平にしようとする。
考え方としては累進課税と同じだから、不合理なことではない。
お寺や博物館などの観光スポットで、自国民と外国人で料金が違うことは発展途上国なら「あるある」でも、日本ではあり得ない。
…そんなふうに考えた時期がオレにもありました。

 

日経新聞の年末の社説で、日本もこれから外国人観光客に対して、「モノやサービスの価格を、日本人より高めに設定する」ことを提案していたから、ビックリした。

日本経済新聞の社説(2023年12月27日)

[社説]外国人価格の設定は根拠を説明可能に

いま日本の観光業界では、外国人価格への関心が高まっているという。
理由は簡単で、日本の物価が安くなっていて、訪日外国人がバンバン買い物をしているからだ。
そう言えばことしの夏ごろ、京都でタクシードライバーをしている人がSNSに、最近は東南アジアの若者が5千円以上の移動をすることが増えていて、以前はこんなことはなかったと投稿していた。
いまの日本は2〜30年前に比べて、国際社会で経済的なパワーや影響力をかなり失っていることは間違いない。
そんな背景から、「負担能力の高い外国人」に対しては価格を上げ、一方で日本人にはこれまで通りの価格で提供しようという、外国人料金の発想が自然に生まれたと社説に書いてある。
ただし、こういう二重価格は外国人の不満や怒りを引き起こしやすいから、合理的に説明できる根拠が必要だという。

 

現在、日本では外国人観光客に対して、格安で新幹線に乗れる特別チケットが提供されている。
これまで日本は「物価の高いの国」だったから、発展途上国とは反対の意味で、外国人には割安の料金が設定されていた。
でも、こんな優遇制度はもう廃止していい。
最近の日本は発展途上国のように、外国人料金が必要なほど経済的に落ちぶれたのだから。…というのは極端な話で、日本は現在でも世界第3位の経済力を持っていて、先進国の中の先進国であるG7のメンバーでもある。
とはいえ、豊かさを実感している国民は少ないし、日本は“金持ち国”ではあっても、もはや物価の高い国とは言えない。
となれば、外国人料金の導入は当然アリだ。

問題は、世界における日本経済の地盤沈下がさらに進んでいって、日本人と外国人の料金の差がどんどん広がっていくこと。
それが10倍を超えると、外国人観光客から「日本は鬼畜か」と毒づかれるかもしれない。
10年前には想像できなかったことがすでに起きているのだから、10年後なんて誰にもわからない。
外国人料金の導入という“屈辱”が、日本経済復活につながればいいのだけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。