【日本観の変化】韓国で、“反日もの”が受けなくなった理由

 

多くの人気俳優を起用し、75億円以上もの予算をぶっ込んで制作した韓国ドラマ『京城クリーチャー』。
満を持して公開したところ、韓国内では失敗だったらしい。
*これは「シーズン1」のこと。

朝鮮日報の記事(2024/01/02)

ヒットの公式を詰め込んだのに酷評の嵐…700億ウォン投じたネトフリ韓国ドラマ『京城クリーチャー』

このドラマの元ネタは満州で活動してた日本軍の「731部隊」で、この部隊は生物兵器の開発のために人体実験を行ったとされている。
彼らの活動について詳しいことは判明していないが、戦後に生まれた日本人にその罪や責任はない。
だから、感情的になる必要もない。
ちなみに、この部隊にいた人たちは、アメリカに研究資料などを提供することで、戦争犯罪の責任を免れた。

731部隊の実験があったとされる場所は中国東北部で、京城(日本統治時代のソウル)は関係ない。
『京城クリーチャー』は歴史ドキュメンタリーではなく、怪物が人間を襲うホラー作品だから、細かい歴史的な事実は度外視されている。
このドラマには、京城にある病院の地下室で、日本軍の「731部隊」が朝鮮人を手術台に乗せ、生きたまま腹を切って解剖するシーンがある。
しかし、そんな残酷な描写を強調し、丁寧さに欠けていたため、全体的には“がっかりドラマ”になってしまったらしい。

スポーツソウルの記事(2023年12月26日)

細かくない描写は、政治外交史的な悩みを解消することができず、日本軍をただ極悪非道に表現した。

「日本軍をただ極悪非道に表現」“反日ドラマ”との指摘も出た『京城クリーチャー』、酷評される理由

 

「君の胸に朝鮮という国はないのか」というセリフを何度もくり返し、「愛国心」に訴えるやり方も、現代の韓国人には安っぽく感じたのでは?

 

ドラマのためとはいえ、「白骨の山」という演出はさすがにやり過ぎ。

 

日本軍をただ極悪非道に表現するという「反日(抗日)もの」は、以前に比べて韓国で受けなくなっている。
去年、李舜臣や安重根をテーマにした映画が公開されたが、ビックリするくらい客が入らず、興行的には失敗だった。
その理由について、朝鮮日報の記事にこんな分析がある。(2023/02/19)

最近の抗日映画は相次いで無残な興行成績となっており、「映画館街で『無条件の反日』や『ノージャパン(No Japan=日本製品不買運動)』が通用した時代は終わった」という見方が出ている。

「何が何でも反日」にNO…韓国で興行不振続く抗日映画(上)

 

一昔の韓国では、「何が何でも日本に勝ちたい!」という強い気持ちが共有されていたから、「抗日」を描くだけでヒットした。
しかし、いまの若い世代は、そんな「無条件な反日」を越え、「克日」の状態にいるから、日本に対する見方が変わったという。
映画業界を支える20〜30代の観客に受けなかったら、無残な興行成績になることは必定。
ある専門家は、監督やプロデューサーなど映画を作る側はほとんどが40〜50代で、過去の“成功”にとらわれていることも問題だと指摘した。

 

日本に対する韓国の若者の見方は、以前と比べて大きく変わっているーー。

個人的にも、その変化を実感したことがある。
10年ほど前、20代の韓国人に、最近の日本では「KARA」や「少女時代」が流行っていて、K-POPの人気が高いと話すと、彼は「それはうれしいですね」と誇らしそうな顔をした。

そんな経験があったから、2年ほど前に20代の韓国人と知り合った時にも、日本で「BTS」や「BLACKPINK」が受けていると話すと、今度は「そうなんですか」とそっけない反応が返ってきた。
こっちはリップサービスをしたつもりだったのに、肩透かしをくらった気分。
話を聞くと、K-POPのほかにも「パラサイト」や「イカゲーム」などが欧米でヒットし、彼は世界で韓流文化の人気が高いことを知っているから、日本の反応はあまり興味がないらしい。
すでに韓国が日本を上回った部分もいくつかあるから、「日本に勝ちたい!」という対抗心も、若者世代ではそれほど大きくないと言う。

 

いまから考えると、彼は韓国文化に自信を持っていて、「克日」を達成していたと思われる。
昔の韓国では、日本軍をただ極悪非道に表現するだけで支持されたのだろうが、いまでは、「反日」をアピールするだけではソッポを向かれ、無残な結果に終わってしまう。
韓国の若い人たちは質の高いドラマや映画を見ていて、合格基準が高く設定されているから、「クッポン(盲目的な愛国心)」は以前ほど通じない。

とはいえ、「抗日(反日)」がオワコンになったわけでもない。
正義の韓国人が悪者の日本をやっつけるという設定は、心がスカッとする“サイダー効果”があ期待できて、いまでも「ヒットの公式」の一つだ。
ただ、「何が何でも反日」という演出では、観客にNOと拒否される。
後は、フィクションとファクトをしっかり分けてくれるといいのだけど。

 

 

愛国無罪:「法が国民感情に勝てない!」と韓国人も困り果て

【空想と事実】韓国では侵略の象徴、伊藤博文が実際にしたこと

韓国人の日本の文化への見方とは①小学校の歴史教科書から

恋愛事情にみる韓国人との違い①日本人の男は情けない!?

韓国の除夜の鐘①ソウルの普信閣・鍾路・明洞の観光(歴史)案内

 

2 件のコメント

  • 確かに韓国では反日感情は少し減りました。
    左翼文政権時代には無条件の反日扇動を国家的に試みたため、日本に友好的な韓国人も息を殺していたが、もうそんなことが解除されたので日本に旅行に行きたくて狂った人たちが皆日本に飛んで行っています。しかし、これは表面的な現象であり、日本に対する韓国人の反日感情が消えたわけではありません。反日感情が消えたのではなく、国内の政治家に対して嫌気がさしたため相対的に日本に友好的になったのです。数日前に無罪判決を受けた「帝国の慰安婦」を書いたパク·ユハ教授はメディアとのインタビューで、「私は日帝が慰安婦を強制的に引きずって行ったという事実を否定しなかった」と語りました。慶應義塾大学で学んだ朴教授でさえ、依然として日本を残忍非道な軍国主義者と見ています。今はあまりにも国内政治に嫌気がさして、日本に対する怒りが弱まっただけです。 依然として学校では反日歴史教科書がそのまま生徒たちに教えられている実情です。

  • 文政権から尹政権になって、日韓関係が大きく変わりました。
    戦後最悪の状態からかなり好転したので、大統領や選挙の結果で、また大きく変わるかもしれません。
    基本的に歴史認識は変わっていないから、両国関係が安定するのはむずかしいです。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。