【情か法か】朝鮮人追悼碑でわかる韓国と日本社会の違い

 

韓国の全国紙、中央日報&ハンギョレ新聞がいま群馬県の公園に注目している。

中央日報(2024.01.27)

日本市民団体「群馬県、朝鮮人追悼碑を撤去しないで…歴史に背を向ける蛮行」

ハンギョレ新聞(2024-01-26)

[ルポ]撤去危機の群馬「朝鮮人追悼碑」…「韓日友好20年の象徴、なぜなくすのか」

 

県立公園の「群馬の森」には、2004年に市民団体が建てた朝鮮人追悼碑がある。
この碑は、戦時中に群馬で働いて亡くなった朝鮮人労働者を悼(いた)むためのもの。
県がこの設置場所を提供した際、「政治的行事を行わない」という条件があったが、追悼式で出席者が「強制連行の事実を訴え、正しい歴史認識を持てるようにしたい」といった発言をしたため、県はこれを条件に違反したと見なし、碑の更新を認めなかった。

これに反発した市民団体は県を提訴し、最高裁まで争ったが、きょねん6月に上告が棄却された。
これによって、「『強制連行』という文言を含む政治的発言があり、碑は中立的性格を失った」とする判断が確定。

群馬県は最高裁の判決にもとづき、追悼碑の撤去命令を出したが、市民団体はこれに応じなかった。
そしてきょねん10月、年内に撤去しない場合は代執行すると通知したが、団体側はこれにも従わない。
その結果、代執行で撤去することになり、いまその作業が行われている。

 

この碑には、「かつてわが国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し」と刻まれている。
これが撤去されることについて、市民団体側はこう訴えた。

「群馬県が追悼碑の撤去を代わりに執行するのは『強制連行はなかった』という歴史否定論者の嫌悪発言と嫌悪犯罪に加担することだ」

韓国でも一般的に、「朝鮮人労働者は日本に強制連行された」と考えられているから、この市民団体の意見はそれと合致する。だから、韓国メディアは「右翼はより露骨に動いた」ことで、追悼碑の撤去に追い込まれたと同情的に報道する。

しかし、日本政府は「強制連行」説について、事実と裏付ける根拠がないため否定している。
「強制連行の事実」を訴えるのなら、まずはその証拠を提示する必要がある。それに、一部の団体が考える「正しい歴史認識」を公園で主張するべきではない。
群馬県が政治的発言と見なし、最高裁が「碑は中立的性格を失った」と判断したのも仕方ない。
きっとほとんどの日本人も同意する。

 

山本一太知事は碑の撤去についてこう説明する。

「碑文や設置の趣旨に問題があるといったことではなく、設置の際に定めたルールに反したことがすべてだ」

「碑を公園に置いておくことは公益に反するため、知事として決断した。ルール違反だから撤去を決めたわけで、碑を『反日』とも思っていない。撤去することと歴史認識をねじまげることは私の中ではつながらない」

そして、県は最高裁の決定に従い粛々と処理すると強調した。

ただ、山本知事は市民団体側に、できる限りの配慮をしている。
県の担当部から、「もっと早く進めたい」という意向があったが、知事は「もう少し丁寧に代替地の提案も含め期間を延長して交渉するよう要請した」と話す。
でも結局、それもうまくいかず、ルール違反と司法判断に従わない状態が続くことは公益に反するため、「ここまでが限界」と知事は判断して撤去に動いた。
ハンギョレ新聞は「なぜなくすのか」と非難するが、一言でいえば「ルール違反をしたから」だ。また、「韓日友好20年の象徴」と書いたが、知事は「外交ルートで何か来ているわけでもない」と語っていて、日韓関係への影響は特にない模様。

「追悼碑は現在、静かにたたずんでいる」という市民団体の主張に対しても、知事は「静かにたたずんでいるのなら、そもそも裁判にはならない。最高裁まで行った以上、その決定に従う」とバッサリ。
知事としては、約束が破られたことがすべてで、「右翼が〜」というのは見当違いだ。
ちなみに、県は市民団体に撤去費用の約3000万円を請求するという。
これもルールに基づいている。

 

これが韓国社会だったら、今回の撤去命令を撤回できる可能性が高い。
2018年に釜山の日本総領事館の近くに、市民団体が朝鮮人労働者の像を設置した。
しかし、これは違法行為だったため、釜山市の市長が法に基づいて像を撤去する。
すると、市長は猛バッシングを受け、「市民、労働者の皆さんに心配をかけたことを謝罪する」と謝罪し、像を市民団体に戻すことを約束した。

撤去の撤回に成功した市民団体側は、「官と民が手を取り合って民族の自尊心のために一つになった事例は韓国全土で釜山しかない」と勝利に酔う。
しかし、これは韓国の国内法と国際法に違反する暴挙。

朝鮮日報が社説で、この無法状態を猛批判したのもアタリマエ。(2019/04/19)

労働者像を撤去したのは国として当然やるべき行為だった。ところが法律を執行した釜山市が違法行為者に謝罪し膝を屈した。世の中にこんな国があるだろうか。

法を執行した釜山市長が無法者に謝罪、こんな国がほかにあるのか

 

韓国では、法より国民感情が優先され、法を守った側が破った側に頭を下げるというめちゃくちゃなことが実際に起こる。
こんな社会なら、朝鮮人追悼碑の撤去命令を無効化し、逆に知事を謝罪に追い込めるかもしれない。
そして、「官と民が手を取り合って民族の自尊心のために一つになった事例は日本全土で群馬しかない」と勝利宣言が出るかも。

しかし、日本ではルールや司法判断が尊重されるから、ソレは無理。
日本は法治国家だから、“違法行為者”に謝罪し、膝を屈するようなことがあってはいけない。

 

 

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2 件のコメント

  • 韓国にはこのように嘲弄する言葉があります。「憲法の上に群れの法がある」.
    韓国では法より感情が優位な場合がよく現れます。とても恥ずかしいことです。
    朝鮮人労働者が当時、太平洋戦争末期の約1年間、徴用されていった事実はあります。
    しかし、それが「強制連行」ではなく、給料をもらいながら労働をしました。 つまり会社員としての待遇を法的に保障されたという意味です。強制的に連れて行かれ、奴隷労働をしたのではありません。しかし、勤労過程で事故で死亡した勤労者たちが発生し、彼らを追悼する碑石が作られたのは韓日両国の友好のために良いことです。しかし、それを政治的に利用して「日帝が朝鮮人を強制的に搾取して死亡に至らせる暴挙を犯したのだから、日本は謝罪せよ」というふうに扇動してはいけません。それは事実でもなく、過ぎ去った過去の歴史であり、韓日両国の将来のためにも望ましくありません。

  • アメリカ人やインド人などいろいろな外国人が良くも悪くも、「日本人はルール厳守」と言います。
    それで社会に秩序がありますが、「ルールはルール」と例外を認めないことも問題があります。
    朝鮮人労働者の碑については、手を合わせて静かに祈るのならいいのですけど、そこで政治的主張をするのはNGです。
    その後の展開は、日韓では違うと思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。