1月の終わりごろ、メキシコ人と会った時に、「スーパーやコンビニで“悪魔”の顔をよく見るんだが、あれは一体何なんだ?」と聞かれた。
もうすぐ節分の日になるから、店には豆が売られていて、彼が見た“悪魔”とはそれをぶつけられる鬼の顔だった。
「魔を滅する」という意味(こじつけ)から、鬼退治にはマメが使われるらしい。
日本人がまだウイルスの存在を知らなかったころ、病気は悪鬼がもたらすものと考えられ、「追儺」という行事が行われた。
これが現在の豆まきにつながる。
病気の原因は悪鬼にあると考えると、それを家に入れないという発想が生まれる。
下の絵では、赤い紙(布?)や何かを燃やす火が魔除けになって、赤い悪鬼が家に入ることができないでいる。
そんな魔除けの考え方はインドにもある。
これは、デリーに住んでいるインド人の自宅玄関の写真。
玄関の上に飾られている絵が気になったから、インド人に聞いたところ、これは唐辛子とレモンの絵だと言う。
インドでは魔除けとして、建物の入口に「唐辛子&レモン」を吊るすことがある。
彼が言うには「This is a very age-old tradition in India」で、これはインドのとても古い伝統文化だ。
では、なんで、唐辛子とレモンがタッグを組んだのか?
日本では、不幸は悪鬼がもたらすと考えられていたが、インドはそれは「邪悪な目」によって起こると信じられていた。
それで、レモンと唐辛子をぶら下げておけば、その酸味と辛味によって、「邪悪な目」から守られるという考え方が生まれる。
家の前にこの2つがあると、「邪視」はそこから視線をそらすから、中にいる人たちは安全でいられる。
インドにはそんな魔除けの文化があるという。
また、これには「科学的な理由」もある。
酸っぱいレモンと辛い唐辛子はハエや蚊を遠ざけるから、それを入口に置くことで、病気を予防し、健康を維持することができる。
上記のソースは「India TV」の解説記事。(March 10, 2022)
Do you know the scientific reason behind hanging lemon-chilli on entrance? Find out
日本でも、唐辛子は魔除けとして使われてきた。
もともと唐辛子はメキシコのあたりが原産地で、15世紀からはじまる大航海時代にヨーロッパへ伝わり、世界中へ広がっていった。
英語の「チリ(chili)」は、メキシコの言葉で唐辛子を指す「chilli」に由来する。
(南米にある国名のチリとは無関係。)
日本には、16世紀にポルトガル人が持ってきた。
日本語の唐辛子の「唐」は外国を意味するから、「海外から伝わった辛子」といった意味になる。
最初は唐辛子を食べるのではなく、見て楽しんだり、足袋(たび)の先に入れて防寒用に使ったりしたという説がある。
日本では伝統的に「赤色」は太陽や血を象徴し、強い生命力を表すとされていて、魔除けに使われてきた。
鳥居が赤い理由もこれによる。
こんな考え方から、邪気払いとして玄関に唐辛子を吊るす風習があって、「This is a very age-old tradition in Japan」となっている。
ネットを見れば、唐辛子デザインのいろんな魔除けグッズがある。
生まれたばかりの赤ん坊は生命力が弱いから、昔の日本人は赤いものを身に着けてさせ、「悪鬼」から守ろうとした。
満60歳を迎えた人にはお祝いとして、赤いちゃんちゃんこと頭巾を贈ることがある。
暦が一周して生まれた歳と同じ干支になって、「また赤ん坊に戻った」という考え方から、魔除けとしてこれを身につけるのだ。
日本とインドには唐辛子を使った「悪霊退散」の文化があるから、あのインドの人宅の絵はそのまま日本の家に飾ることもできる。
ひょっとしたら、この風習の起源は同じかもしれない。
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