韓国のジレンマ日本の「歴史妄言」は許せない、でも…

10年ほど前、東京に住んでいた韓国人の女子大学生と一緒に靖国神社へ行った。
彼女はずっと前から、そこが超気になっていたけれど、韓国人の自分が１人で行くと何が起こるか分からなかったから、足を運ぶ勇気が出なかったらしい。

実際に靖国神社に行ってみると、彼女は２つのことに強い印象を受けたと言う。
まず、そこは旧日本軍の軍服を着た人や旭日旗を持った人が集まる「軍国神社」ではなく、子ども連れやカップルが参拝する普通の神社と変わらなかったこと。
もう一つは、そこの博物館（遊就館）に、ビックリするほどたくさんの外国人がいたこと。
そこには、韓国の歴史認識を否定する説明が英語で書かれていて、多くの欧米人が熱心に読んでいた。

靖国神社に行った後、「なんであんなに外国人がいるんですか？」と質問されたから、「日本の政治家が歴史について発言すると、韓国側が“妄言だ！”って大騒ぎするからじゃないの」と答えると、彼女は黙ってしまった。

韓国人の立場からしたら、日本の政治家が慰安婦の強制連行はなかったといった「妄言」をしたら、激しく否定するしかない。
でも、そのことで日韓のテンションが高まると、外国人の注目を集めてしまい、日本の主張を知ろうと、外国人が靖国神社へ来ることにつながる。
かといって、日本の「妄言」を放置することなんて絶対にできない。
彼女は、そんな韓国人ならではのジレンマに悩まされた。

最近、島根県で公立高校の入試がおこなわれ、社会科のテストでは「竹島」（韓国名・独島：トクト）に関する問題がでた。
この領有権問題について、日本が韓国に「ここで解決しようぜ」と提案した国際連合の機関は何か？　という問題で、答えは国際司法裁判所だ。
島根県の高校入試では毎年、竹島問題について基本的な知識を問う問題がだされている。

日本政府は「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土です」と主張しているが、その認識はどれだけ国民に浸透しているのか。

ソウルのスーパーでは、「独島ノリ」が普通に売られていた。

日本の有名大学で、国際関係を教えている韓国人の教授（講師？）が、竹島に対する日本人学生の知識と関心の無さに驚いた。

朝鮮日報（2024/03/02）

「竹島をただで韓国にあげよう」と言う日本の学生を見て【寄稿】

彼が授業で竹島を知っているか聞くと、学生はまわりの様子を見て、教室は変な空気になる。
約30人の学生のうち、初めて「竹島」という言葉を聞いた人が10人ほどいて、なかには「竹島」が島であることさえ知らなかった学生もいて、その韓国人は衝撃を受けた。

残り20人は竹島を知っていたが、10人はその場所を知らなかった。
最後の10人は、竹島の位置や日韓の意見の違いを知っていたから、解決策を尋ねると、半分ほどが「韓国にあげればいい」と答えた。
こんな小さな島のせいで、日韓が対立する理由が分からないから、という理由で。

国際関係の授業を選択した有名大学の学生でも、竹島についてこれほど関心がない。
韓国では絶対にありえない状況だ。
『独島は我が領土』という“愛国歌”は、日常のいろいろな場面で流れるから、これを知らない国民はまずいない。
韓国では、幼稚園児がこれを歌えることも、中学校の部活動に「独島部」があることも珍しくない。

日本ではここ15年ほど、小・中・高の学習指導要領を改正し、子どもたちに竹島が日本の領土である理由や、韓国が不法占拠している経緯などを教えることを強化している。
それにもかかわらず、内閣府の世論調査（2022年）によると、竹島について「関心がある」と答えた人は、60代以上で70％を超えたけど、30代では52％、18歳から29歳まででは36％しかいない。
日本の若い世代は、上の世代に比べて竹島について知識も関心も薄い。

韓国はこの現実を知らず、むしろ日本を「利する」ことをしているという。
日本政府が学習指導要領を改正するたびに、韓国では政府もメディアも沸騰し、日本大使を呼びつけて抗議したり、新聞やテレビで猛烈な日本批判を展開したりする。

全国紙・ハンギョレ新聞によると、日本の学習指導要領の改善は韓国への挑発行為になる。（2016-03-19）

歴史の真実に目をつむり、隣国との関係も念頭に置かない厚かましい有り様だ。日本政府の是正を促したい。

高校教科書にまで至った独島、慰安婦問題の挑発

日本では、指導要領の内容が変わることより、韓国の激しい反応の方に関心が集まる。
その結果、竹島問題について知る日本人が増えていく。
そこで、先ほどの韓国人は“独島”問題への「真に強力な対応」として、「静かな対応」を提案している。
この指摘は正しい。
日本での認知度を高めるには、政府や島根県がアピールするよりも、韓国が大騒ぎしてくれた方が圧倒的に効果的だ。

しかし、それが分かっていても、日本から「妄言」が出てきたら、韓国人が冷静な態度をとることはむずかしい。
韓国側が歴史や領土についての“挑発行為”に、スルーすることはまず不可能だ。
愛国教育がでっかいブーメランになってしまった。