「反日」地雷に触れて、日本での仕事が激減した韓流スター

 

1909年に前韓国統監だった伊藤博文が、中国のハルビンで安重根に襲われ死亡した。
安重根に対する日本と韓国の見方はみごとに真逆。
元首相を暗殺された日本の立場ではテロリストでも、韓国では国のために正義の行為(義挙)を行なった英雄だ。
安が「朝鮮の独立運動家」という点では、日韓の認識はたぶん一致している。

そんな安重根がいま韓国で注目を集めているらしい。

朝鮮日報(2022/10/16)

小説・映画・ミュージカル…韓国は今「安重根ブーム」

「安重根は李舜臣(イ・スンシン)と共に、韓国国民全てが敬慕する英雄だ」という記事の指摘は分かるとして、なぜいまこのタイミングで彼なのか?
記事にある分析だと、まず韓国社会はいま新型コロナの問題、経済的不況、物価上昇といった社会的危機に見舞われているから、「大衆は安重根に共感と慰めを得ている」という。
安重根とは歴史の中だけの存在ではなくて、「困難の際に呼び出されて韓国人にプライドと慰め、刺激を与える存在」だと。

これとは別に先月にも、安重根をテーマにした映画『ハルビン』が韓国で公開されると、日本である“異変”が起きた。
韓流ドラマ『愛の不時着』に出演した俳優、ヒョンビンさんの人気が日本で昇竜拳のように急上昇して、日本からファンミーティングや写真集のオファーが舞い込んだ。
でも、『ハルビン』でヒョンビンさんが安重根を演じたことから暗転し、日本からの仕事の依頼が急になくなったという。

Record Koreaの記事(2022年12月3日)

「愛の不時着」ヒョンビンの日本でのイベントが続々中止に、安重根役が原因か=韓国ネット「敏感すぎ」

所属事務所に1億円規模の仕事を依頼していた日本企業からは、ヒョンビンさん以外の俳優に変えてほしいと連絡があるなど、「(日本側は)態度を180度変えている」という状態だ。
日本での韓流人気に特に変化はなく、この急変に韓国メディアも注目している。

億単位の仕事がスッ飛んだとなれば、芸能事務所やメディアがこの動向から目を離せるワケない。
でも、日本で安重根が「テロリスト」とされているとはいえ、暗殺は100年以上も前の出来事で、ヒョンビンさんは仕事でその役を演じただけでしかない。
にもかかわらず、日本サイドがここまで注意深くなっているというのは正直意外。
「反日」はタブーで、危険な地雷になっているというのは知ってたけど、想像以上に爆発しやすくて破壊力もあるらしい。

 

それで失敗したのが女優のキム・テヒさん。
キムさんはもともと韓国で大人気だった女優で、2010年ごろに日本の芸能事務所と契約を結び、日本語を学んで本格的な活動をしようとしたところ、過去の言動が障壁となる。

2005年にスイスで、独島は韓国領であるとアピールする「独島愛キャンペーン」を行ない、「独島は我らの領土」と書かれたTシャツを着てさらにそのCDを配布した。
日本進出の際、これを一斉に報じた韓国メディアに、キム・テヒさんは「ざけんなバカ!」と怒ったかも。

キム・テヒが2011年にドラマの日本進出する際に、韓国では、ほぼ全てのメディアが2005年にキムが独島愛キャンペーンを行った事に触れながらドラマ日本進出の報道をした。

キム・テヒ

 

「独島愛キャンペーン」をした芸能人が日本で活躍するというのは、韓国人の気持ちとしてはこの上なく愉快痛快なんだろうけど、そんなことが通じるはずない。
日本のメディアからこのことを突っ込まれた本人は、

「私は理数系の人間で、歴史や政治のニュースにはウトいので。もっと勉強しなくてはいけないと思います」
「日本に30回以上訪問したし、日本という国に興味と好感がある」

と言っていて、やがて日本から消えていった。
当時の韓国メディアは、この中央日報の記事のようにキムさんを擁護する。(2012.02.22)

キム・テヒが反日女優?…日本極右派の標的・デモ動画登場

そうは言っても、もしスイスで「竹島は我らの領土」と書かれたTシャツを着てアピールし、さらにそのCDを配布した日本の女優が韓国へ進出しようとしたら、韓国ではどんな反応が出てくるか?
「わたしは韓国に30回以上訪問したし、韓国という国に興味と好感がある」と言えば許されるのか?
そんな甘いことはなく、メディアは「嫌韓女優」と書いて、極右ではなくて一般的な韓国人のターゲットになり、攻撃されてもおかしくない。
きっとサンドバッグが過保護に見えるぐらいぶっ叩かれて、韓国から追い出される。
「竹島愛キャンペーン」を行なった日本の芸能人が韓国でデビューして、何の反発も起こらず成功することはあり得ない。

この時とは時代が変わったけれど、いまでもやっぱり日本で「反日」の地雷は極度に恐れられている。
自分から愛国活動をしたわけではないが、ヒョンビンさんもこの流れにはどうしようもない。

 

 

韓流ブーム:「韓国人になりたい日本人」第一号、藤原惺窩

Kpopアイドルと韓国の歴史認識。”豊臣秀吉が好き”で猛批判

韓国の軍隊生活④最大の楽しみ・人気Kpopアイドルの慰安公演

中国に弱い韓国②一番嫌いな日本人・豊臣秀吉と朝鮮出兵

ケンチャナヨ精神③韓流時代劇のデタラメ・戦国時代にハイヒール

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。