イスラム教徒とコーラン 世界を動揺・激怒させた件 

 

すべての日本人にとって最も大事なもの、それは人によって違うから分からないが、イスラム教徒にとってのソレなら簡単にわかる。
神(アッラー)のメッセージがアラビア語で書かれている聖典、クルアーンだ。

*クルアーンはアラビア語で、英語にするとコーラン。

イスラム教徒をアラビア語で「ムスリム」と言い、これは「神に絶対服従した者」を意味する。
すべてのムスリムにとって、コーランはこれ以上ないほど重要で神聖なものだから、それを侮辱する行為は絶対に許されない。
最近、イスラム国家のパキスタンで、日本ではありえない出来事がおこった。
若い女性がアラビア語のデザインのある服を着ていると、民衆がそれをコーランの一節とカン違いし、彼女を取り囲む。
そして、彼女はもう少しで殺されそうになる。

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こんなことをしたのは無知で過激なイスラム教徒で、一般のイスラム教徒は女性ではなく、一方的に誤解し、エキサイトした民衆の方を非難している。
こんな例外的な出来事とは違って、教育レベルや信心の強さに関係なく、世界中のイスラム教徒を激怒させる事件がアメリカで起きた。

 

アラビア語で書かれたポカリ

 

2001年9月11日、アメリカでイスラム過激派による同時多発テロ事件が起こり、24人の日本人を含む約3000人が犠牲になった。
その悲劇から9年後の7月、アメリカ人の牧師、テリー・ジョーンズが9月11日に200冊のコーランを焼却すると発表し、彼はそのイベントを「国際クルアーン焼却日」(International Burn a Koran Day)と名付ける。

これにアメリカ政府は激しく動揺し、世界中のイスラム教徒が激怒した。
当時のオバマ大統領は「破壊的な行動」と非難し、「アメリカの建国精神に反する」「イラクやアフガニスタンのアメリカ人兵士を危険にさらす可能性がある」と計画の中止を強く訴えた。この計画は世界を巻き込み、カナダやドイツなどもジョーンズを批判し、イギリスは少し後でジョーンズの入国を禁止する。
NATO事務総長は、この計画はNATOの価値観に反し、兵士の安全に悪影響を与える可能性があると警告し、国連事務総長は「非常に動揺している」「容認できない」と述べた。

ジョーンズにとっては想定外の騒ぎだったのか、彼は結局、このイベントの中止を発表し、コーランクを燃やさないと誓う。
といってもこの時点で、世界中でイスラム教徒による抗議デモが発生して、少なくとも20人が死んでいるのだから、「やっぱりやめた」ですむわけない。
しかし、世界はこの時、ジョーンズにだまされていた。

 

翌2011年の3月、ジョーンズは自分の教会で「コーランの裁判」をおこなう。
彼は裁判官の姿になり、コーランを“被告”にし、テロを助長したなどの“人道に対する罪”で有罪判決を下す。
そして、コーランに火をつけて“処刑”した。
完全に狂っている。
ジョーンズはコーランが燃やされる様子をネットで配信した。

その反応はすぐに現れた。
アフガニスタンではマザリシャリフなどの都市で、怒り狂ったイスラム教徒たちが支援活動をしていた国連の組織を襲撃し、少なくとも7人の国連職員を含む30人が死亡し、150人が負傷した。

Protesters in the northern Afghanistan city of Mazar-i-Sharif and elsewhere attacked the United Nations Assistance Mission, killing at least 30 people, including at least seven United Nations workers, and injuring at least 150 people.

Dove World Outreach Center Quran-burning controversy

 

この「コーラン裁判」が原因で、後に、アフガニスタンの警察官が2人の米兵を殺害した。
アフガニスタンだけでこれほどの騒ぎが起きたのだから、ジョーンズの行動が全世界にどれだけの影響を与えたのか、想像が追いつかない。
世の中には絶対に超えてはいけない一線がある。
イスラム教徒にとってのそれは、最も神聖なものへの侮辱だ。

 

また、2023年にスウェーデンで「コーラン焼却」がおこなわれた。
当然、暴動が発生し、街は大混乱になった。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。