日本とフランス、ドイツ、イタリア、イギリスはG7加盟国で、政治的な価値観や経済規模などは似ているけど、日本とヨーロッパ諸国とでは国境の感覚が天地のレベルで違う。
日本に住んでいたドイツ人の話を聞いて、そのことを実感した。
彼は日本のコンビニが好きだと言っていたから、ドイツのコンビニとどう違うか聞くと、そもそもドイツにはコンビニが無いと言われた。
その代わり、ガソリンスタンドに24時間営業している店があって、彼の家から一番近い店には車で20〜30分ほどで行けるらしい。
驚いたのは、彼はドイツ南部のバイエルン州に住んでいて、その店が隣国のオーストリアにあったこと。彼は何回か車でそこまで行って、ガソリンを入れた後に買い物をしたことがある。
EU圏内だからパスポートなんていらない。
財布と免許だけ持って行けばOK。
しかも、オーストリア人はドイツ語を話すから、彼には言葉の壁もない。
もちろん、ドイツとオーストリアは別の国だから国境はあるが、日本で言うなら県境ぐらいの意味しかない。1時間で往復できるなら、市内の移動と同じ感覚だ。
「ちょっと隣の国へ車で買い物してくる」というヨーロッパ人の常識は島国の日本人にはありえない。
だから、ややこしいコトも起こる。
ドイツの街並み
1938年のきょう3月13日は、ナチス・ドイツによってオーストリアが併合された日。
もともとドイツもオーストリアも、神聖ローマ帝国の時代には同じ国の一部として存在していた。
17世紀に三十年戦争がぼっ発すると、神聖ローマ帝国は力を失い、ドイツ語圏はバラバラになる。
それで、この戦争の講和条約であるウェストファリア条約(1648年)は、「神聖ローマ帝国の死亡診断書」と言われた。
ドイツ人もオーストリア人も、ドイツ語を話すドイツ民族であることは変わらない。
三十年戦争が終わった後、ハプスブルク家のオーストリアと、ホーエンツォレルン家のプロイセンという2つの大国が自国を中心にドイツを統一したいと望んでいた。
そんな情勢下で、あの男が生まれる。
幼少期のアドルフ・ヒトラー
1889年にオーストリアでヒトラーが誕生する。
その後、彼はドイツへ移動し、1933年にヒトラー政権を樹立した。
すると、オーストリアのナチス党員が強硬にドイツへの併合を主張しはじめる。
オーストリア政府はそれに反対し、ナチスを弾圧したが、時代の勢いには勝てなかった。
1938年にオーストリアはドイツに吸収され、新しいドイツの州・オーストリア州が爆誕。(アンシュルス)
これで、国家としてのオーストリアは消滅した。
とはいえ、多くのオーストリア国民はずっと前からドイツとの統一を望んでいたから、これはむしろ祝うべきことで、「イヤッホーイ!」とビールで乾杯したと思われる。
しかし、相手はヒトラーだ。人類の悪魔だ。
ナチス政権下で、オーストリア人は「二流市民」として屈辱的な扱いを受け、結果として、多くの人が「自分たちはドイツ人じゃない。オーストリア人だ!」というアイデンティティーに目覚めた。
第2次世界大戦後、オーストリアは「ドイツによる侵略の最初の犠牲者」という立場を強調し、連合国から「ドイツの一部」とみられることを全力で避けようとした。
イギリス、アメリカ、ソビエトなどに占領されていたオーストリアが1955年に再独立した際、戦争の反省から、オーストリアとドイツの合併は永久的に禁止された。
といっても、現在では「ちょっとオーストリア(ドイツ)へ買い物してくる」という状況になっているから、この時の取り決めも意味を失っている。
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