大航海時代の1492年、コロンブスがアメリカ大陸に到達した。
彼はそこをインドとカン違いし、現地の人たちを「インディアン(インド人)」と呼び、その言葉が欧米社会で定着してしまう。
しかし、それは明白な間違いだから、アメリカ先住民は英語で「ネイティブ・アメリカン」と言われるようになる。
個人的に、中学校でそう学んだ記憶があるのだけど、最近では「ファースト・ネイション」と呼ぶと聞いた。
辞書を見ると、先住民は「インディジナス・ピープル」と書いてある。
何が正解なのか、知人のアメリカ人女性(大卒の20代)に聞いてみた。
ーー先住民は差別問題と結びつくことが多くて、時代によって言葉も変わる。
だから、ポリコレ的に正しい呼び方がよくわからない。
アメリカ先住民の場合、いまの政治的に正しい言い方ってなに?
まず、「indigenous people」は先住民のことね。
アメリカのインディジナス・ピープルは「ネイティブ・アメリカン」、カナダのインディジナス・ピープルは「ファースト・ネイション」って呼ばれている。
で、アラスカの先住民は「イヌイット」。
ーーということは、北海道のインディジナス・ピーポーは「アイヌ」になるわけか。
イグザクトリー。
「ネイティブ・アメリカン」はアメリカ英語で、「ファースト・ネイション」はカナダ英語で、呼び方が違ってもポリコレ的にはどっちも正解。
でも、アメリカ先住民はいろいろな部族があるから、厳密には、チェロキー、イロコイ、ナバホみたいに部族ごとに呼んだ方がいい。
ーーなるほど。
でも、まえに先住民出身のアメリカ人と話をしていた時、彼は「インディアン」と呼んでいたのだけど。
そういうケースもある。
先住民の人の中には、アメリカにある部族をまとめて「ネイティブ・アメリカン」と呼ぶのを嫌って、「インディアン」と言う人もいる。
ーー1周回ってきた!
というわけで、同じアメリカ先住民でも、アメリカなら「ネイティブ・アメリカン」、カナダなら「ファースト・ネイション」と呼んだ方がいいらしい。
カナダ人と話をしていて、アメリカ合衆国の先住民について言うのなら、「ネイティブ・アメリカン」を使った方が分かりやすいと思う。
話はややズレる。
知人の台湾人は、日本語の「先住民」という言葉を聞いて、「それって差別的な響きがありますね」と意外なことを言った。
台湾での呼び方をたずねると、「原住民」と言う。
その方が侮辱的では? という気がするのだけど、台湾ではこれが人権に配慮した表現になるらしい。
つまり、正解は場所によって違うのだ。
アメリゴ・ヴェスプッチ(1454年 – 1512年)
「コロンブスが“インド”と呼んでいた大陸は、じつはインドじゃなかった!」と発見したのがイタリア人のアメリゴ・ヴェスプッチ。
そこはヨーロッパ人が知らなかった大陸で名前がなかった。
そこで、彼にちなんで「アメリカ」と呼ばれるようになる。
アラスカの先住民
アラスカに住む人たちは、一般的に「エスキモー」と呼ばれていた。
しかし、これは「生肉を食べる人(=未開の人たち)」という侮辱的なニュアンスがあるという理由から、 アラスカの先住民は「イヌイット(人間)」という言葉を使いはじめ、カナダもこの呼称を採用している。
ただし、エスキモーという言葉は差別語ではないという見方もあって、廃止されてはいない。
外国人と話すときは、まず「イヌイット」を使ってみて、それがマズいようなら、最適解を教えてもらった方がいい。
ところで、「エスキモー(生肉を食べる人)」が侮辱語になるなら、ドイツで「スシボンバー」と呼ばれる日本人は一体…。
日本人のようにも見えるアラスカ先住民
英語になった日本語 「Sensei」がアメリカで有名になったワケ
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