今回の話はバングラデシュのことだから、まずはこの国のキホンを知っておこう。
面積:14万7千平方キロメートル(日本の約4割)
人口:1億7,119万人(2022年)
*人口の過密度では堂々の世界ナンバーワン。
首都:ダッカ
民族:国民の大部分がベンガル人だけど、山間部に少数民族がいる。
言語:ベンガル語(国語)、成人(15歳以上)識字率:77.7%(2022年)
宗教:イスラム教徒91%、その他(ヒンズー教徒、仏教徒、キリスト教徒)9%(2022年)
ソース:外務省HPのバングラデシュ人民共和国(People’s Republic of Bangladesh)基礎データ
きのう4月14日はバングラデシュ国民にとってめでたい日、お正月だったから、SNSでこんなメッセージをいくつも見かけた。
「Wishing you and your Family “Shubho Noboborsho”1431 May the Bengali New Year be full of good health and happiness.」
(あなたとあなたの家族にとって、ベンガルの新年が健康で幸せでありますように。)
ベンガル語のボボボーボ・ボーボボじゃなくて、「শুভ নববর্ষ(シュボ ノボボルショ)」とは、「あけましておめでとう」という意味で、バングラデシュの人たちは新年のあいさつとしてこれをよく使うらしい。
バングラデシュには西暦以外にも、伝統的なバングラデシュ暦があって、それによると4月14日から新しい一年がスタートする。
この日をベンガル語で「ポヘラ・ボイシャック」と言う。
「ポヘラ(1日)」と「ボイシャック(最初の月)」を合わせた言葉だから、まさにベンガル暦の元旦だ。
バングラデシュの伝統衣装・サリーを着る女性
ベンガル暦は593年にはじまるから、西暦2024年は1431年になる。
伝統的に農業国のバングラデシュでは、4月14日は稲作をはじめる目安になっていて、その意味では、日本で田植えの時期におこなわれる御田植祭(おたうえまつり)と似ている。
日本に住んでいるバングラデシュ人のグループから、「一緒に正月を祝おうぜ!」と招待されたから、彼らのアパートへ行くと、こんな正月料理を振る舞ってくれた。
これはバングラディシュの代表的な魚で、「国魚」とされるイリッシュの揚げ物。
現地でイリッシュはかなり高級な魚で、一年のはじめに食べる料理にふさわしいらしい。
そういや、日本の国魚ってなんだろう? と思って調べてみたら錦鯉だった。これは予想外。
バングラデシュの伝統的なカレー料理マトン・レザラ
これがバングラデシュの正月料理。
一晩、水で浸したお米(パンタバート)にイリッシュのフライなどを載せた一品で、スパイスが効いていて、辛いけどおいしい。
食後のデザート
かなり甘い。
バングラデシュ人は正月にはサリーを着て家族や親戚、友人と会って新年のあいさつを交わしたり、エンドレスでおしゃべりを楽しんだりする。
彼らの話を聞いて感じた日本との違いは、ベンガル暦の新年では神さまが「不在」という点だ。
日本の正月は神道の行事で、玄関にしめ飾りや門松を飾り、家の中に鏡餅を置いて新年の神様を迎え入れる。こうして歳神さまが家を訪れてくれると、新しい年の「good health and happiness」を授けてくれる。
それに対して、バングラデシュの正月では特定の神を祭ることはないため、イスラム教徒もヒンズー教徒もキリスト教徒も祝うことができる。
イスラム教徒の祭りはヒンズー教徒には関係ないし、逆もまた同じ。
バングラデシュでは宗教を超えて、すべての国民が一緒に祝う機会はなかなか無いから、宗教色の無い正月は誰もが平等に祝うことができ、国全体で「すごい一体感を感じる」となるらしい。
この辺りの事情は、クリスマスが終わって1週間後には、神社でもお寺でも好きなところで初詣をする日本人とはかなり違う。
バングラデシュの新年「ポヘラ・ボイシャック」の日、首都ダッカでは数千人の市民によるパレードが行なわれる。
ベンガルタイガーや鳥、魚などバングラデシュに関連する生き物のどデカい模型と一緒に人びとが練り歩き、歌ったり踊ったりする。
この行進(マンガル・シャブハジャトラ)はユネスコ世界無形文化遺産に登録されている。
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