韓国の歴史教科書には、「われわれの先祖が日本へ先進的な文化を教えてあげた」といった記述があって、それが社会的な常識になっている。
客観的な根拠がなくても、そのイメージに合っていれば「真実」と信じられやすいから、剣道や寿司、日本刀など、さまざまな日本文化の韓国起源説が昔から止まらない。
隣国のこんな動きは日本でも知られていて、2022年にはヤフコメにこんな質問をする人がいた。
「そろそろ茶道は韓国起源だと言い出す頃ですか?」
韓国の印象を悪くさせ、日韓関係に地味に悪い影響を与えているから、こういう主張はやめてほしいと思うのだけど、韓国メディアの「蔚山毎日」がまた韓国起源説を掲載してくれた。(2024.04.11)
“일본의 다도 문화는 울산 초암다도에서 전수 ”
(日本の茶道文化は蔚山草庵茶道から伝授)
草庵茶道の創始者について研究している韓国のお坊さんが言うには、1478年にこの創始者が韓国の蔚山(ウルサン)にいた日本の僧たちに草庵式茶道の作法を伝授し、帰国後にその僧がこれを伝え、現在の日本の茶道文化の基礎となった。
しかし、日本で目にする情報はまったく違う。
韓国で茶道が知られるようになったのは日本統治時代で、1970年代になると、「日本の茶道はわれわれの先祖が伝えたもの」という逆転現象が起こった。
ただ、日本茶道の「韓国起源説」が何度も浮上するというのは、根拠がそれだけアイマイということでもある。
例えば、韓国には「茶道面」という地名があるけれど、日本には茶道の付く地名がないこと取り上げ、韓国起源の根拠としているケースもある。
しかし、実際には、この地名は1914年に茶庄面と道川面が一つになった時に作られたもので、この場所と茶道との間に関連性はない。
上の説についても、1478年に存在したという「蔚山草庵茶道」について、その思想やルール、使用した道具、行われ方などの具体的な記述が見当たらない。
それが日本に伝わり、茶道の基礎となったという主張にも根拠はなく、その重要な部分はこのお坊さんの想像力に基づいて展開されている。
しかも、彼がこの結論にたどり着いたきっかけは、お寺の天井でたまたま資料を発見したことだという。
アニメのはじまりじゃないんだから…。
この「日本の茶道は蔚山草庵茶道から伝授された」説は根拠が弱すぎるから、日本のネットユーザーもネタとしか見ていない。
・久しぶりに来たなw
・じゃあここにトイレットペーパー置いときますね
・まーた始まった
・これはむしろ日本から伝わったというべき
・非常に説得力のある良記事だ
しかし、日本の茶道について韓国にはいろいろな見方があって、こんな都市伝説レベルの話もあれば、日本人を感心させるようなすばらしい説明もあるのだ。
きょねん日本のSNSで、韓国の国立中央博物館にあった日本語の解説文が、「日本人より武士のことを理解している!」と注目を集めた。
その内容はザッとこんな感じ。
平安時代、武士は貴族に雇われていた身分の低い存在だったが、貴族たちが紛争の解決で武士の力を必要としたことで、彼らは政界で存在感を増していった。
そして、12世紀末に幕府を創設し、日本の支配階級となる。
しかし、武士たちは決して武力だけの支配者ではなく、日本の文化と芸術を支え、さまざまな時代の文化形成において中心的な役割を果たした。
以前の支配階級であった貴族たちとは違う独特の美意識を持っていて、伝統芸能や茶道、絵画、工芸、陶磁器などの分野で独自の芸術を創り出す。
武士が新しい芸術を創造したことは、「戦士」としての自我を保ちながらも、「統治者」という新しいアイデンティティを確立する上で大きな役割を果たした。
そして、こんな言葉で説明を終える。
「刀を持った戦士であると同時に、教養を備えた文化人であり統治者だった武士を理解することは、近くて遠い隣国である日本を正しく理解する第一歩になるだろう。」
武士たちが貴族たちとは違う独特の美意識を持っていて、茶道や絵画などで独自の芸術を創り出し、「戦士」と「統治者」のアイデンティティを確立していったーー。
これは武士についての解説だが、派手なものが好きだった平安時代の公家とは違い、武士が主体となって「わびさび」という独特な美意識で、茶道を確立していったことは間違いない。
やっぱり、専門家が書いたホンモノは違う。
国立中央博物館の説明には、茶道が日本で生まれた歴史的、社会的な背景が書いてあり、「天井裏で見つけました!」といった韓国起源説とは別のステージにある。
これなら、日本人が「まーた始まった」とあきれることなく、「勉強になりました」と素直に感謝する人が多いはず。
真実は日韓関係にも良い影響を与える。
コメントを残す