日本で4月ははじまりのシーズン。
「明日は失敗があってはいけない!」と前日からドキドキして寝られず、当日は起きるのが遅れ、遅刻しそうになった新人もいれば、いつもと同じように寝て起きて会社へ向かった猛者(もさ)もいたはずだ。
新入社員はフレッシュな価値観や感覚を持っているから、その言動が職場を超え、ネット上で日本全体で物議をかもすことはよくあるが、最近でタイで起きたコトは次元が違った。
『タイニュース・クロスボンバー』の記事(2024/4/20)
出社初日にやって来ない、こんなタイ人いませんか? その驚くべき理由とは…。
その日、会社の人事担当者がメールを確認すると、初出社を予定していた新人からメールが届いていた。
この人はそれを見て、直感的に“不幸フラグ”と気づいたと思われる。
彼は朝5時にメールを出し、こんなやむを得ない理由から、仕事をはじめる日を延期してほしいと訴えた。
「ガールフレンドを医者に連れて行かないといけない」
タイのメディアがあまりにも緊張感を欠いた社員のメールを公開したところ、ネット上で議論になったという。
いやいやいや、ボクが日本人の代表と言うつもりはないけれど、まず会社と社員のメール内容をメディアが公開することがおかしいだろ。
それに、ここは「非常識なメールに対して批判が殺到した」という場面で、意見が分かれる余地があるとは思えない。
思えないのだけど、タイ人の価値観や感覚は日本人とは違うから、ネット上では、
「ウソ。コイツはまだ仕事に行く準備ができていないだけ」
「彼女と別れろよ」
「これはさすがにおかしい」
とさまざまな意見が見られ、大多数の人はこう受け止めたという。
「この人はまだ仕事を始めていない。だから、この主張は妥当だ」
日本とは世界が逆転している。
フランスの作家カミュの作品『異邦人』で、裁判長から殺人を犯した動機を聞かれた人物が「太陽のせい」と答えるシーンがある。これには深い文学性を感じるが、この新人のメールには幼稚性と自己中心性しかない。
もし当日の早朝、「彼女を病院に連れて行くから、出社日を別の日に変更してほしい」とメールを送る社員がいたら、日本の会社なら、その日の午前中の会議で解雇が決まりそう。
この新人こそ、一度病院で診てもらったほうがよさそうだ。
しかし、タイのメディアは“まとも”だ。
会社では新入社員をスムーズに迎え入れるために、担当社員を決めるなど、事前にさまざまな準備をしてきたと指摘し、新人の無責任さを非難する。
そもそも初日からドタキャンするような人間は、これから何度も休むだろうし、仕事も長く続かない可能性が高いと指摘した。
タイの「意識高い系」の人たちの感覚で、日本人なら最低限の常識になるらしい。
15年ほど前にタイを旅行した際、タイ人女性と結婚した日本人が経営するゲストハウスに泊まった。
タイに20年以上住んでいたオーナーは、タイ人を雇ってビジネスをしていたこともある。
タイの人たちは笑顔がステキで、細かいことを気にせず、他人のミスを笑顔で許す寛容な性格をしているが、自分のミスにはもっと寛大だったから、オーナーは胃痛を感じるほどのストレスを抱えたという。
彼が指摘した日本人とタイ人の最大級の違いは責任感だ。
前日に、「いますごく頭が痛い。明日は仕事に行けそうにない」という連絡があればまだ良心的で、当日に無連絡でドタキャンされることも珍しくなかった。
当然、それはこちらがカバーするしかなく、オーナーは肉体的にも精神的にも大きなダメージを負った。
ちなみに、彼が雇った社員たちは大卒のエリートではない。
オーナーが怒ると、「なんでそんな一方的なことを言うんだ! 私のことをもっと考えてほしい!」と逆ギレされ、そのまま解雇になることもあった。ビックリしたのは、そのタイ人が突然オフィスに現れ、ニコニコしながら給料を請求してきたこと。
オーナーは彼の姿を見た時、また雇用してほしいと頭を下げられるのかと思ったが、じつはまったく違って、彼はそれまで働いた給料をすぐに確保したかっただけだった。
その日本人は、彼が去っていく後ろ姿を見ながら、「タイ人はワケワカラン」とつぶやくしかなかったという。
「もうね、日本人とは育ってきた環境や、住んでいる世界がまるで違うと思ったね」というオーナーには「ですよねー」と同意するしかない。
「責任感」という点において、日本人とタイ人の価値観や感覚は今でも天地のレベルで違うらしい。
「ガールフレンドを〜」という超非常識なメールをした新人に対して、人事担当者はこんな返事をした。
「それなら来なくていいよ。ありがとう」
多くの人たちが新人の主張を「妥当」と認め、会社側もナゾの感謝をするような社会だと、日本人がタイへ行ったら、異世界に転移されたと感じるかも。
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