イスラム教徒が日本人からのプレゼントを拒否 理由は…

 

きのう10月27日は「テディベアズ・デー」だった。
いま世界中で愛されている熊のぬいぐるみ、テディベアの名前はセオドア・ルーズベルト米大統領(愛称テディ)に由来して、彼の誕生日は10月27日だからこの記念日が爆誕。

ルーズベルト米統領、クマの銃殺を拒否 → テディベアが誕生

 

日ごろの感謝の気持ちを込めて、この日に大切な人へテディベアのぬいぐるみを贈ろう! という、まあ販促キャンペーンだ。

ぬいぐるみの魅力は世界共通で、女子のハートを一瞬で射ぬく力を秘めている。
下のインド人女性は伏見稲荷大社のお土産屋で、くじを引いたら特賞を引き当てて、特大のキツネのぬいぐるみをゲットした。
その子がくじを開けて、店の主人とボクが「特賞」の文字を見て、一瞬フリーズする。
いま何が起きているのか説明すると、目と口を限界まで大きく開けて、このインド人は「オーマイガー!」を連発。

 

彼女はこのぬいぐるみに「Kyoto」と名づける。

 

この時はトルコ人とモンゴル人の女性もいて、やっぱりお土産屋のぬいぐるみに吸い寄せられた。
経済大国と同時に、「カワイイ大国」として世界的に有名な日本のぬいぐるみは、考え尽くされたデザインや素材で作られているから、外国人の女性や子供の感性にも合うだろうし、特に女性→女性へのプレゼントなら、絶望的なセンスの違いでもなければ基本的にはうれしい。
重要ポイントはどちらかというと、モノよりヒトでは?
でも、そのぬいぐるみがどんなにかわいくても、相手との仲が良くても、もっとも根本的な理由から拒否されることがあるという話をこのまえ聞いた。

日本の大学に通うイスラム教徒の女子学生があるとき、友人の日本人女性から「コレあげる」と、とってもラブリー動物のぬいぐるみをプレゼントされた。
女性は「ありがとう」と受け取って、後でそのぬいぐるみを外国人の友人へあげてしまう。
それはうれしいのだけど、理由が気になった外国人が聞くと、イスラム教の偶像崇拝の教えから、ぬいぐるみは部屋に置きたくないとイスラム教徒の女性が言う。

「そんな理由があるのか!」とビックリしたけれど、ぬいぐるみに問題が無いことが分かって、その外国人女性は安心していただいた。
イスラム教徒の女性からすると、日本人の友人の気持ちはありがたいし、突然のことだったから思わずぬいぐるみを受け取った。
でも、ぶっちゃけこれはいらない。
かといって捨てるのも何だから、適切に”処分”したということらしい。

 

その友人は平均的な無宗教の日本人で、イスラム教については「豚とアルコールがNGでしょ? 知ってた」というぐらいの知識しか持っていなかったと思う。
でもイスラム教には、「偶像崇拝の禁止」という最も重要と言っていい教えがある。
この理由からイスラム過激派は仏像を破壊したし、サウジアラビアでは、「イスラム教徒は雪だるまを作るべきではない。果物や建物といった魂のない物なら神はお許しになる」といった内容のファトワ(宗教令)が出たこともあるのだ。

【偶像崇拝】図工に雪だるま、日本人とイスラム教徒の違い

友人思いの日本人さんはきっと、まだ世界の広さを知らない。

 

でも、こうなるとイスラム教徒の女性に、UFOキャッチャーのぬいぐるみをプレゼントするのも失礼なことか、嫌がらせのようになってしまうのか?
そんなことを、イスラム教にくわしいバングラデシュ人のムスリム女性に質問すると、こんな返事がきた。

Muslims are usually discouraged to keep statue /stuffed animals /dolls in their house as it may sometimes see as ‘Are you worshiping it?!’.

イスラム教徒(Muslims)はふつう、何かの像/ぬいぐるみ/人形を家に置くことを推奨されていない。それは時に、「あなたはそれを崇拝しているのか?!」と見られる可能性があるから。

なるほどなるほど。
となるとやっぱりイスラム教徒には、ぬいぐるみや人形のプレゼントは基本的に好ましくないようだ。
メールはこう続く。

But, if you keep it simply for decoration then it’s acceptable.

でも、単に飾りとして置いておくのであれば、それは認められる。

でもやっぱり、動物や人間などの造形物をつくったり、それを所有することができるのは神(アッラー)だけで、イスラム教徒にそれは奨励されないという。
そしてこれが彼女の結論。

But, gifts in any form are always lovely. How a gift could be rude!
Some people know very little about their own religion 🙁

どんな形であれ、贈り物はいつも素晴らしい。プレゼントが非礼になるとは!
自分の宗教についてほとんど知らない人もいるのです 🙁

 

ということでイスラム教徒にとって、人形やぬいぐるみは教義としては好まないモノではないけれど、プレゼントでもらう分にはいいし、飾りで置いておくのもOKだ。
つまり偶像はギリセーフで、崇拝は厳禁だと。
ただこれはこのバングラデシュ人の意見で、結局はぬいぐるみを拒否したり、雪だるまを禁止するイスラム教徒もいる。
インドネシア人のイスラム教徒のなかでも、髪を隠すヒジャブを着用する人もいれば、しない人もいて同じ信者でも対応は違う。

外国人にサプライズプレゼントをあげるなら、相手の宗教や信条を理解してからするべき。
でないと自分がサプライズして、傷つく最悪展開になりかねない。
特に宗教のタブーは個人的な好き/嫌いとはステージが違うから、無宗教の日本人の場合、イスラム教徒が相手なら特に注意した方がいい。
柔道や茶道で手をついて相手に一礼することを、「神以外にそれはできない」と拒否するイスラム教徒もいるのだから。

宗教か文化か? イスラム教徒に茶道を体験させる時の注意

 

イスラム教徒にこういうリアルな人形をプレゼントするときは、欲しいかどうかを事前に確認した方がいい。

 

 

イスラーム教 「目次」

【日本人とイスラム教徒】インシャアッラーという“不幸フラグ”

タイ人が牛肉を、イスラム教徒が豚肉を食べない理由:観音様とハラール

【デザートの話】パフェとトライフルの意味、サンデーは日曜日

ホットケーキとパンケーキの違い、アメリカ人の見方は?

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。