タイのマクドナルドには「サムライ」がいる! ということを前に書いたワケですよ。
まぁ、サムライポークバーガーというメニューがあるってだけです。
このサムライバーガーとは日本でいうテリヤキバーガーのこと。
照り焼きソースとパティで豚肉を使っている点では日本と同じなんだが、ポークを選んだ理由が違うらしい。
タイの、とくにバンコクでは牛肉を食べない人がたくさんいるから、そうなったらしい。
タイ旅行でお世話になった現地の日本語ガイドから、
「牛肉を食べない人でも食べられるハンバーガーを提供したいと、マクドナルドが考えたんですね。それで生れたのがサムライポークバーガーです」
という話を聞いた。
ヒンドゥー教徒ならともかく、牛肉を食べられないタイ人が多いというのは初耳で、意外な気がした。でも、ネットを見ると、タイ人男性と結婚した日本人で、「タイに来て驚いたことは、仏教徒で牛肉を食べませんという方が多くいることです」と話す人がいたから、タイでは一般的なことのようだ。
何を食べていいのかダメなのかは、信仰する宗教によって決められていることが多い。
日本の学校ではヒンドゥー教徒の牛肉のほかに、イスラーム教徒の豚肉タブーも教わったと思う。
イスラーム教の教えで豚肉の摂取は禁止されていて、日本ハラール協会によると、聖書クルアーン(英語読み:コーラン)にこう書かれている。
あなたがたに禁じられたものは、死肉、(流れる)血、豚肉、アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの、絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。
イスラーム教徒が食べられるものを「ハラールフード」という。
ハラールは「許されている」という意味のアラビア語で、反対のハラームは「禁止された」になる。
牛肉を食べることのできないタイ人にとっては、豚肉のサムライバーガーは「ハラールフード」だ。
浜松市内のスーパーにあったハラールマーク
タイで牛肉を食べない人は珍しくない。
ボクが日本で知り合うタイ人の中にも、「私は牛肉が食べられません」「できれば牛肉は食べたくないです」と言う人はけっこう多い。
そこで気になるのはその理由だ。
質問したタイ人によって返ってくる答えがじゃっかん違うのだけど、牛肉を食べない理由として共通していたのは「観音様に関係している」ということ。
このことについて、農林水産省のレポート(P.47)には次のように説明している。
タイでは、観音信仰を持つタイの仏教徒は、牛を食べないといわれる。これは、観音様の出家を反対した観音様の父親が、生まれ変わって牛になったと信じられているからで ある。つまり、観音様の父親に敬意を表して食べないということがある。
こうなると牛肉を食べることは、観音様の父親を食べることにつながってしまうから、タイ人は牛肉を食べないという。
この「牛=観音菩薩の父親」説以外にも、タイ人のガイドからはこんな話を聞いた。
「観音様の乗り物は牛なんです。だから観音菩薩を信仰するタイ人は牛肉を食べられません。中国系のタイ人に多いですね」
先祖に中国人がいるというタイ人は多く、特にバンコクには中国系タイ人がたくさんいるから、こういう人のために「サムライバーガー」が必要になるわけだ。
このほかにも、バンコクに住んでいた日本人に事情を聞くと、「タイの牛肉って、日本と比べたら全然おいしくないんですよ。単純に味が理由と思いますよ」と言う。
このへんの理由も、タイではもともと牛肉を食べる習慣がなかったから、おいしい牛肉を開発する技術が発展しなかっただけかもしれない。
*タイの牛肉事情についてはタ イ 編 にくわしく書いてある。
おまけ
バンコクの街並み
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