サラエボ事件から、「負の連鎖」にはじまった第一次世界大戦

 

1914年の4月、宝塚少女歌劇による初めての公演がおこなわれ、今につづく宝塚歌劇団の歴史がはじまった。その2か月後に大事件が発生し、ヨーロッパ世界は一度終わった。

1914年のきょう6月28日、パーンかバキューンか知らないが、とにかくオーストリア領のサラエボで銃声が響いた。
撃ったのはプリンツィプというセルビア人青年で、撃たれたのは、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者だったフェルディナント大公。
「不幸は友だちをつれてやってくる」なんていうけれど、このサラエボ事件が第一次世界大戦を引き起こす。この大戦で戦車や潜水艦などの新兵器が使われ、最終的には 1000万人を超える死者をだした。
なんでこんな大惨事になったのか?

 

フェルディナント大公
『ゴールデンカムイ』でこんなシーンを見た。

 

「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ!」というルール(?)に従えば、犯人のプリンツィプを裁判にかけて処刑すれば、一件落着だったと思われる。
しかし、この暗殺にはセルビア軍が関わっていたことが判明したため、そう簡単に終わらせることができなくなった。
当時のサラエボはオーストリア=ハンガリー帝国(以下、オハ帝国)の統治下にあったが、そこには多くのセルビア人が住んでいて、異民族に支配されることを不満に思っていた。
オハ帝国のすぐ南にはセルビア王国があり、軍人のディミトリイェヴィチがその不満に同調し、大公暗殺のテロ行為を支援した。

セルビアは暗殺を計画した軍の関係者を逮捕し、裁判にかけて処罰したけれど、オハ帝国の怒りはそんなもんじゃ収まらない。こんな事件が二度と起こらないように、さまざまな要求を突きつけた。
しかし、セルビア側が「全部はむり」と一部の要求を拒否すると、「よろしい。ならば戦おう」とサラエボ事件の1ヶ月後、7月28日にオハ帝国がセルビアに宣戦布告する。

 

この時代のヨーロッパはイギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどが自国の利益を優先し、お互いをけん制しながら微妙なパワーバランスを保っていた。
オハ帝国はドイツ寄りで、セルビア王国は親ロシアという立場だ。
もしセルビアが敗北したら、バルカン地域でドイツやオハ帝国の影響力が増大することは必至。
ドイツが強大化することは、国境を接しているロシアとしては安全保障上の重大な危機となるから、それだけは阻止しなければならない。
ロシアはセルビアの支援をきめ、オハ帝国と戦うために、7月30日には総動員令を出すと、8月1日にドイツがロシアに宣戦布告した。
ドイツにパワーアップすれば、隣国のフランスにとってはピンチになる。フランスは対ドイツでロシアと同盟関係を結んでいた(露仏同盟)から、8月3日、ドイツに宣戦布告する。
イギリスもドイツに対抗するため、フランスと手を組んでいた(英仏協商)から、8月4日にドイツへ宣戦布告した。

これ、ドイツ嫌われすぎでしょ。
いや、それだけ警戒されていたのか。

負の連鎖はつづき、日英同盟を結んでいた関係から、大日本帝国も8月23日にドイツに宣戦布告した。
第一次世界大戦には、イギリスの植民だったインドも参加させられたから、まさに世界大戦だ。
サラエボで銃声が鳴り響いたことからはじまり、各国を巻き込んで、それまでの人類史上、最大の大戦争に発展した。

こうなると、日本国民も宝塚歌劇団の公演を見に行っている場合じゃない、という状況にはならなかったと思う。
主戦場はヨーロッパ大陸で、日本は中国にあったドイツの守備隊と戦ったりと、小さな戦闘をしただけで、国内は「無風」だったのだ。
むしろ、ヨーロッパへ兵器を輸出して大もうけし、「成金」と呼ばれる金持ちが続出。歴史教科書で、「ほれ、これで見えるだろう」と紙幣を燃やす成金の絵を見た人も多いはず。
宝塚公演を見に行く人の数は、むしろ大戦がはじまった後に増加したと思われる。
ちなみに、日本ではこの時ドイツ軍の捕虜から、バウムクーヘン、ソーセージ、ハムといったドイツ文化を教えてもらった。

日本にあるドイツ文化:戦争捕虜が伝えた、音楽・パン・料理…

 

その一方、1918年に第一次大戦が終結し、結果的にドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン、ロシアの4つの帝国が崩壊した。
これでまたヨーロッパのパワーバランスが変化し、ラウンド2(第二次世界大戦)につながって、日本は今度は壊滅的なダメージを受けた。
大惨事世界対戦が起こらないことを願う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。