8月の初めごろ、日本に住んでいるカナダ人女性が、「私が住んでいるのこんなところ」とSNSに自分のスマホ画面を投稿した。それを見ると時刻は深夜1時で、気温は31度、湿度は69%になっている。
カナダでは、たとえばバンクーバーの8月の平均最高気温は22度で、こんな蒸し蒸し地獄はありえないから、その投稿は友人や知人に衝撃を与えた。
では、ドイツ人は日本の夏についてどう感じるのか? 日本に住んでいた知人のドイツ人に聞いてみたから、今回はその内容を紹介しよう。
ちなみに今ネットで見てみたら、ドイツの8月の最高気温は23度、最低気温は13度と天国だった。
ーー最近の日本は毎日クッソ暑くて、エアコンは夏を生き抜くための必須アイテムになっている。
そんな機械がなかった時代、日本人は暑さを克服するために、風鈴・川床・金魚鑑賞・打ち水・怪談といった納涼文化を生み出した。ドイツでもそんな文化はある?
ドイツでそんな風流な文化は聞いたことがない。
もともとドイツは日本より気温も湿度も低くて、エアコンもいらないほど過ごしやすかったから、納涼なんて発想は生まれなかったんじゃないかな。
私は日本に住んでいた時、夏になると「人生初」というほど大量の汗をかいてビックリした。ドイツから持ってきたTシャツは、汗に濡れると色が変わって恥ずかしかったから、速乾Tシャツを買ったよ。
ーーいま辞書で調べてみたら、納涼の英語訳に「summer evening festival」という言葉がある。納涼の考え方は欧米では一般的ではないらしい。
「夜の祭り」という感覚はわかる。
ドイツでも暑くなると、メリーゴーランドやローラーコースターなどがつくられるから、人びとは夜遅くまで、そんなアトラクションや屋台の食べ物を楽しんでいる。プレッツェルなんかをね。
ーードイツでは、プレッツェルが屋台の定番商品か。日本の屋台では、フランクフルトがよくあるけど。
ドイツのフランクフルトにはない、日本のソーセージだねww。
ーー日本では、豚の腸を使って作るのがフランクフルトで、羊の腸を使うとウインナーになるらしい。だから、どっちもフランクフルトとウィーンは関係ない。
*「ウインナーコーヒー」のウインナーも、オーストリアの首都ウィーンのことでソーセージとは無関係。
そう言えば日本にあるプレッツエルも、本場ドイツのものとは違うと聞いた。
ドイツのプレッツェルはパンだから、柔らかくて少ししょっぱい。日本で食べたプレッツェルはクラッカーみたいに硬いし、甘かった。あのプレッツエルはアメリカから伝わったんじゃないかな?
ーーそうかも。
日本にカレーはインドじゃなくてイギリスからもたらされたから、「これがカレー?」と驚くインド人はよくいる。
第三国を通して外国に伝わったものだと、発祥の国の人からは別ものに見えることもあるだろうね。
とにかくそういうことで、日本の「納涼」をドイツに当てはめるなら、夜に出かけて祭りに参加して、涼しい風を感じることだと思う。
ーー夏の短い期間に、アトラクションが設置されるというのは移動遊園地みたいだ。
そうそう。ドイツではそれが夏の風物詩になっている。
でも、日本の夏祭りは山車(祭り屋台)の引き回しがあって、神道と関係していると聞いたけど、ドイツの祭りは宗教とは関係がない。市民が夜風にあたったり、楽しんだりするだけだよ。
*デュッセルドルフで夏に登場する移動遊園地「Kirmes(キルメス)」はとても有名で、観覧車や絶叫マシーンなどの乗り物や、ビールやソーセージなどの屋台がある。
キルメスとは「教会のミサ」という意味だから、もともとは宗教と関係があったようだ。
1370年(か1369年)にベルギーのブリュッセルで、ユダヤ人が虐殺された出来事を記念するパレードが行われ、それが現在ではお祭り(キルメス)になったらしい。
詳しい情報は Kermesse (festival) をクリック。
この山車を見ると、昔の日本人が山を神の依り代と考えたことがわかる。
デュッセルドルフのキルメス。
ライン川沿いで開かれるから、ラインキルメスとも呼ばれているらしい。
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