日本に住むアメリカ人の視点 好きなところ・嫌いな性格

 

知人のアメリカ人(40代・男性)は日本に興味があって、大学で日本の言葉や文化について学んだ。卒業後、彼は来日して働きはじめ、日本にはもう10年以上住んでいる。
最近、そんな日本好きのアメリカ人と会って話をしたから、今回は日本通のアメリカ人から見たこの国の良いところとダメなところについて書いていこう。
もちろん、これは彼の好みや主観だ。

 

迷惑行為の禁止を訴える看板 in 京都

 

ーー久しぶり。 最近はどんな感じ

うーん、とくに良くはないけど悪くもない。ぼちぼちだな。

ーーその返しはさすが、日本に住んで長いだけはある。
日本語を学び始めた外国人の「はい、私は元気です。あなたはどうですか?」みたいな“テキストの丸暗記”感がない。

ところで、夏休みにどっかに行った?

昔の日本を見たくて、郡上八幡と高山へ行ってきた。

ーーどっちも伝統的な建物が保存されていて人気がある。

それそれ。
アメリカは1776年にできた新しい国だから、俺にとって、日本の歴史的な建築物や古い町並みにすごく魅力がある。日本人は歴史を大切にしていて、建物の保存状態がすごく良いから、俺は「歴史散策」が好きなんだ。

ーーそう言えば、「うちのアパートの近くには、合衆国建国よりも古い仏像やお堂がいくつもある。日本は歴史の宝庫や〜」みたいなことを言ってたアメリカ人がいたな。
で、郡上八幡と高山はどっちが良かった?

俺の推しは郡上八幡。いちばん重要なポイントは「外国人がいない」ってことなんだ。
高山では、日本人よりもたくさんいた気がする。いまの日本には外国人観光客が多すぎんだよ。

ーーそれはツッコミ待ち? でも、外国人観光客と日本在住の外国人は分けるべきか。日本がモテモテなのはいいことだけど、観光客が増えすぎて各地で問題が起こっている。

知ってる。
一部のアホな観光客のせいで、外国人全体のイメージが悪くなるのは迷惑だ。
俺は日本で税金や年金を払ってまともに生活しているのに、巻き込まれて「害人」扱いされてしまう。

ーーそれを感じたことはある?

飲食店に入って、明らかに歓迎されていないムードを感じると、「昔、店員に迷惑をかけた外国人がいたんだな」って何となく思う。

 

1877(明治10)年に日本最大の内戦・西南戦争が起きた少しあと、1885年にフランスの作家ピエール・ロティが来日した。彼は人力車に乗って京都の街を見た感想を『秋の日本』にこう書いている。

「これこそ正真正銘の日本である。どこにも何一つ調子はずれなものはない。わたしだけが汚点になっている。その証拠に、みんなはふりかえってわたしを眺める。」

知人にとってはこの時代の日本が最&高なんだろうけど、そんな「正真正銘の日本」はもう失われてしまった。
「汚点」という表現は適切ではないが、彼が高山で感じたのはまさにそんなことだ。

 

ピエール・ロティ

 

ーーそう言えば、日本でも訪日外国人を対象に「エスタ」が導入されるらしい。

*「ESTA」はいまアメリカが採用している電子渡航認証で、事前にその人物をチェックして、問題があるとわかった場合は入国を認めない。これは不法就労やテロの防止に効果がある。
いま政府は2030年までに「日本版エスタ」の運用を開始したいと考えている。

それは俺も聞いたけど、2030年というのは驚きだ。
日本人は何にでも慎重で、動き出しが遅いんだよ。
同じ島国で外国人観光客の多いニュージーランドでは、2019年に「NZeTA」(電子渡航認証)を導入したんだぜ。

ーーそういうのを「周回遅れ」って言って、日本にはそんなことがよくある。

わかる。役所で今でもフロッピーディスクを使っているのは、世界的に見れば「周回遅れ」だ。あれはもう博物館で展示しておくべきものだ。

ーーでも、「日本版エスタ」について言えば、英語のことわざに「Better late than never(遅くてもやらないよりはまし)」ってあるし…。 

いやいやいや、遅すぎだろ。
日本には世界が認める高い技術力がある。ニュージーランドとの最大の違いは決断のスピードなんだよ。

ーーまぁ、たしかに知り合いのインド人も韓国人も「日本人は時間をかけすぎる」と文句を言っていた。外国人が「日本人はほんとにスピーディー!」と褒めることは例外的かな。

ーーまぁ、日本の会社で働いていたインド人も韓国人もトルコ人も、「日本人は時間をかけすぎる!」と文句を言っていた。外国人が日本のスピード感をホメることは例外的かな。

日本の会社では、何かするには事前に関係者に根回しをして、何度か会議を開いて、その結果を上に伝え、そこで話し合って判断をする。
日本は安全重視で、決定までに時間がかかり過ぎるのがダメなんだ。
日本に比べると、アメリカの会社では現場の人間に決定権があるから、実行に移すまでのスピードが早い。
日本人は危険を回避するために、時間をかけて検討しているのだろうけど、スタートが遅れるほどリスクは高くなる。
今の時代、即断即決ができないと、海外の企業には勝てなくなる。

 

ーーそれでも君は日本が好きで、この国に住むことを選んだ。

アメリカよりは住みやすいからね。
どこの国の人間にも欠点はあって、俺から見ると、日本人は慎重すぎるってところがその1つだってこと。一部を批判しただけで、全否定したわけじゃない。

ーー日本人の意思決定の遅さは、多くの日本人も批判している。だから、これからゆっくり変わっていくんじゃないかな。

 

 

アメリカ 「目次」

【匿名性と間接的】アメリカ人が痛感した日本人の性格

【病院コワい】アメリカ人から見た、日本社会の良いところ

日本はどんな国? 在日外国人から見たいろんな日本 「目次」

カリフォルニアの米国人に比べ、日本人がイイと思う理由

 

1 個のコメント

  • > どこの国の人間にも欠点はあって、俺から見ると、日本人は慎重すぎるってところがその1つだってこと。

    うーん、それはその通りなんですが。
    でも、そのような国民性があるからこそ、韓国や中国と違って、日本では伝統的な民族文化が現代にも残っているのだとも思いますよ。
    両方を得るのはなかなか難しいです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。