リトアニアと日本の「脅威」の違い 自然災害か周辺国か?

 

ほんじつ9月26日は、日本で「魔の9月26日」といわれるほど、過去にこんな悲惨なことが起きている。

1921年(大正10年)、富山県で台風により約900人が遭難した。
1935年(昭和10年)、岩手県沖で台風により海軍の第四艦隊が大打撃を受ける。機密書類が漂流し、他国に入手される事態を防ぐため、生死不明の24名の乗員ごと駆逐艦・初雪の艦首を艦砲射撃で沈めた。
1935年、台風により利根川流域の河川が氾濫し、群馬県だけで218人が亡くなった。
1954年、洞爺丸台風により青函連絡船「洞爺丸」が転覆し、1155人の死者・行方不明者が出た。これが日本の海難史上、最悪の事故となった。
1954年、洞爺丸台風による強風により火災が発生し、33人が死亡。
1959年、伊勢湾台風により、東海地方などで5000人を超える死者・行方不明者が出た。

日本で9月26日が、「台風襲来の日」や「魔の9月26日」と呼ばれている理由がおわかりいただけだろうか。

 

伊勢湾台風の被災地

 

さて、ここからは、日本に住んでいたリトアニア人の話になるのだけど、日本でこの国はほとんど知られていない。知名度は、成功した地下アイドルほどで、「知る人ぞ知る」というレベルだと思うので、まずは基本情報を確認しておこう。

面積:6.5万平方キロメートル(島根県よりすこし小さい)
人口:約280万人
首都:ビリニュス(人口約54万人)
言語:リトアニア語
宗教:主にカトリック

リトアニアは東ヨーロッパにある国で、場所は大ざっぱにドイツとロシアの間にあると考えてほしい。

2018年の9月の終わりか10月の初めに、知人のリトアニア人が日本へやって来た。
その数年後、日本の第一印象について尋ねると、彼は「暗くて暑くて不便だった」と言う。
というのは、この年の9月末に大型の台風24号が日本列島に上陸し、浜松市では過去最大の大停電に見舞われたからだ。
リトアニアは冷涼な国で、ビリニュス では最も暑い月の7月でも平均気温は18 度、10月の平均気温は7度しかない。
日本とは真逆のような国で生まれ育ったから、彼には暑さや湿度への耐性がほとんどなかった。そんなリトアニア人が不幸にも浜松大停電の最中にやって来たから、部屋の電気はつかないし、エアコンもシャワーも使うことができなかった。文明が復活するまで、彼は本当に苦しい生活を送っていたらしい。
その強烈な体験がそのまま日本の第一印象となる。

リトアニアは環境に恵まれていて、自然災害といえば大雨が降り続いて洪水が発生する程度だから、彼は日本に来て、初めて地震と台風を経験したという。それも一年に何度も。
それに加え、2011年に発生した東日本大震災で、津波が街をのみ込む映像を見て心から震えたから、自分が日本にいる間にそれが襲ってこないか不安もあったらしい。
日本に来てから、リトアニアがどれだけ恵まれているか分かったという話を聞くと、日本は本当に災害大国で、リスクの高い国なんだなとつくづく思い知らされる。

 

しかし、天は二物を与えない。
リトアニアは地震や台風、津波を気にしないで、安全に暮らすことができるが、周辺国には恵まれなかった。
18世紀末にはロシア帝国の支配を受け、一時、ナポレオン率いるフランスに占領された後、またロシアの支配下におかれた。
第一次世界大戦が始まると、1915年にリトアニアはドイツ帝国に占領されてしまう。
1918年に独立を宣言し、リトアニア共和国が成立したが、第二次世界大戦が始まると、1940年にソ連へ強制的に編入させられた。
その後、ソ連軍が撤退すると、今度はナチス・ドイツに占領され、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)が行なわれた。
戦後になると、リトアニアは再びソ連に支配されるようになり、1991年代にやっと独立を回復した。

 

日本は現在につづく国としては、世界最長の歴史を誇る。

 

日本はリトアニアと違い、四方を海に囲まれていて、外敵が攻めてくることはほとんどなく、異民族に支配されたことは一度もない。古代からずっと独立を守りつづけている。
リトアニアではドイツとソ連に殺害された人は、おそらく100万人を超えるが、日本でそんな凄惨な虐殺事件はない。

日本は地理や歴史で恵まれているが、リトアニアは自然環境で恵まれている。
地震や台風に襲われるのと、ナチスやソ連に攻め込まれるのでは、やっぱり人災の方が恐ろしいか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。