日本でよくある「ボロネーゼ」がボローニャには無かった

 

関東には「山田うどん」という有名なチェーン店がある。
ある人がそれをずっと群馬県民のソウルフードと信じていたら、じつは埼玉発祥で、「山田うどん」は埼玉県民のソウルフードと知ってショックを受けた。
こういった誤解はたまにある。
個人的に、「ナポリにナポリタンは無い」ということは知っていたけれど、前にネットで、日本によくあるスパゲッティのボロネーゼは、じつはイタリアのボローニャ発祥ではなく、そもそもボローニャにそんな料理は存在しないと知って意外に思った。
ということで、これからこの「謎パスタ」について書いていこう。

*以下、スパゲッティ・ボロネーゼを略して「ボロネーゼ」とする。

 

まず、ボロネーゼとは麺ではなくミートソースのことで、本場ボローニャではこのソースを「ラグー(ragù)と呼ぶ。
ややこしい話だが、ボロネーゼとミートソースは厳密には違って、前者はトマトペースト、後者はトマトケチャップをベースに作られている。
戦後直後にやってきた米軍がミートソースを日本へ伝え、それをヒントにキューピーが缶入りミートソースを売り出し、これが全国に広まっていった。
ナポリタンのルーツもアメリカ進駐軍が伝えた「スパゲッティ・ウィズ・ミートボール」にあるという説がある。
日本では「ナポリタン=スパゲッティ」というイメージが強いから、海外で出会ったイタリア人に「I am a Neapolitan」と自己紹介されて、違和感を感じたという日本人もいた。

 

話をボロネーゼに戻そう。
ボローニャには、幅1cmほどの平べったいタリアテッレというパスタの一種があり、それにラグー(ミートソース)をあえた料理がある。
その見た目を日本の麺でたとえるなら、スパゲッティはそうめんで、タリアテッレはきしめんだ。
つまり、日本によくある「ボロネーゼ+スパゲッティ」という組み合わせはボローニャには無いのだ。
この食べ物はアメリカで誕生して、海外へ広がったらしい。それでボローニャ人がその誤解にウンザリして、現地では「#notspaghettibolognese」と書かれたTシャツが販売されるようになった。
だから、スパゲッティ・ボロネーゼを「ボローニャ人のソウルフード」と考えてはいけない。これはきっと、「群馬県民のソウルフードは山田うどん」以上のタブーだ。
もちろん、それは違法行為ではないから、ボローニャ人がボロネーゼ(ミートソース)とスパゲッティをあえて食べることもあるかもしれない。

 

 

ヨーロッパ 目次 ④

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。