ドイツのミュンヘンでは秋になると、世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」が行われる。
これが日本にも伝わって、最近は各地でオクトーバーフェストが開催されるようになった。しかし、これを楽しむのは、アルコールを飲める一部の層に限られる。
その点、ハロウィーンは子どもから大人まで参加できるから、今では日本の秋の風物詩となっている。これと恵方巻きは商業イベントとして、すっかり日本に定着した。
酒を飲む会場が設置されているオクトーバーフェストと違って、日本のハロウィーンでは路上飲酒が問題になっている。
特に「渋谷のハロウィーン」では、酔っぱらいがゴミを捨てる、大声を出して騒ぐ、ケンカを始める、通行人にからむ、物を盗むといった事案が発生し、深刻な問題になっている。2018年には、軽トラックを倒して4人が逮捕された。
そんなことがあって、ハロウィーンの渋谷は「特別警戒地区」となり、区は2019年にこの時期の夜間、渋谷駅周辺での路上飲酒を条例で禁止した。この措置によって、「今度はこっちに人が流れてくるんじゃね?」と警戒感を強めているのが池袋。
ことしはハロウィーンの期間中、日本人や外国人の観光客が洪水のように押し寄せて混乱になるのを防ぐため、今年はハチ公像のまわりに柵と幕が設置された。だから、今はハチ公像を見ることができない。
これにネット民の感想は?
・開店してる飲食店にハロウィン税を課して清掃代負担させたらどうか
・✕ ハロウィーン
◯ 変態仮装行列
・浅草ではサンバやってるのになw
・素直にあなた達はゴミですと言ってやれ
・てか、なんで外で飲みたがるのか分からん
・群衆の「何が何でも路上飲酒をするぞ」という執念を感じるw
渋谷区は2019年に、ハロウィーンの期間中に路上飲酒をすることを禁止したが、トラブルはなくならなかった。それで、ことし10月に条例が改正され、夜間の路上飲酒は年間を通して禁止することとなった。しかし、この条例には罰則がない。酔っ払って騒ぎを起こしていた連中に、担当者は注意やお願いで立ち向かっていかないといけないらしい。ゲームで言うなら、棍棒でゴブリンと戦うような無茶ぶりでは?
飲酒と酔っぱらいは日本の「伝統」だから、今になって取り締まることはむずかしいのだ。
10年ほど前にアメリカのネットメディア「インサイダー」が、“外国人が驚く日本の4つの法律”という記事を掲載した。(Sep 10, 2015)
4 Japanese laws that surprise most foreigners
それによると、「常にパスポートを携帯していなければならない」、「アメリカでは合法な市販薬でも、日本では違法なものがある」、「ほとんどのレストランやバーでは喫煙が可能」、そして「Drinking on the street is legal in Japan(日本では路上での飲酒は合法である)」ということに、外国人(主にアメリカ人)がビックリするという。
2024年の現在では喫煙事情は変わったけれど、路上飲酒についてはかなりユルく、法律で禁止されているところは例外的だ。
友人のアメリカ人が花見を好きな理由にそれがあった。
彼女が住んでいたニューヨークでは、公共の場所で酒を飲むことは違法行為になるから、公園でビールやワインを飲むことは考えられない。ワインを持って公園を歩いていただけで、警察に捕まって罰金を払わされた人もいるという。
しかし、日本でそれは合法で、大人にとって桜を愛でることと飲酒はセットになっている。彼女は酒好きで、日本の花見ではアメリカの法を堂々と破ることができて、禁断の自由や解放感を得られたから、春の到来を楽しみにしていた。
日本に10年以上住んでいるアメリカ人と話をしていた時、海外のネット上で「日本では酔っぱらいに寛容な文化があって、酒を飲みながら街を歩いてもOK」という情報が拡散されていると聞いた。
「旅は恥の捨て書き」で、渋谷のハロウィンで外国人が羽目を外すのは、そんな特別な体験をしたいと思うことが理由の1つになっているという(特にアメリカ人には)。
アメリカ出身のお雇い外国人、ウィリアム・エリオット・グリフィス(1843年 – 1928年)
日本人が飲酒にやさしく、酔っぱらいを好意的に見る文化は昔からあった。
戦国時代、キリスト教を布教するため、宣教師のフロイスが日本へやって来た。(“ふろいす”を変換したら風呂椅子になった)
彼は日本人の酒グセを見て、彼はこんな記録を残している。
「われわれの間では自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこく勧められることもない。日本でとてもしつこくすすめ合うので、ある者は嘔吐し、また他の者は酔っ払う」
また、当時のヨーロッパでは、ワインを飲み干すことは下品な行為とされていたが、日本人は反対で、酒を一滴も残さず飲むことを立派な行為と考えていたという。
戦国、安土・桃山、江戸時代とトキが移っても、日本人の酒にだらしない(寛容な)態度は変わらない。
明治時代に来日したアメリカ人教師のグリフィスも、日本人の酒グセの悪さにあきれた。
働き者の使用人が酒を飲み過ぎるのを見て、「喉を酒の漏斗(ろうと)にする」と書いている(明治日本体験記)。その使用人は芸者遊びで酒を飲むから、すぐにお金がなくなってしまい、女房にひどく叱られたという。それでも彼は酒をやめられない。
こういう伝統と国際化がコラボすれば、渋谷ハロウィーンの騒動は必然だったかも。
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