日本の「外国人お断り」を差別と思わない外国人もいる

 

自分の正義に目がくらむと、悪事が悪事とわからなくなってしまう。ことし京都のホテルでそんなことがあった。
あるイスラエル人がそのホテルに宿泊を希望したところ、支配人が「ガザでの攻撃に加担すべきではない」と考えて拒否してしまう。昨年からイスラエルとイスラム組織のハマスが戦争状態が続き、イスラエル軍の攻撃でガザ地区の民間人が死傷している。それを「許せない!」と思うことはいいのだけど、そんな個人的な正義を仕事に持ち込んで、自分勝手な価値観で客を裁いてはいけない。
国籍を理由に宿泊を拒否することは法律違反。
だから、6月に京都市はそのホテルに行政指導を行った。支配人はホテル側から、業務より個人の信条を優先しないことを求められたが、それを拒否したため、結局は解雇された。

感染症にかかっているといった合理的な理由もなく、客を国籍で判断して拒否することはどこの国でも差別行為になるから、された相手は激怒する。そんなことは世界的な常識だ、と思っていたけれど、そう考えない外国人が日本にいた。

 

知り合いのポーランド人(30代・男性)が今年9月に日本の大学を卒業した後、12月まで3カ月ほど日本に滞在することになったため、8月に静岡県内でアパートを探すこととなった。彼はそれまで大学の寮に住んでいたから、日本でそれをすることがどれほど大変か、まったく知らなかった。
不動産屋に入って話を聞こうとしたら、外国人というだけで「申し訳ありませんが…」と断られるのはまだマシで、そんな丁寧な言葉はなく、「外国人に紹介できるところはない」と門前払いをする店もあったという。
彼は日本語ができて、3カ月住むには十分すぎる貯金もあったのに、「外国人」という理由だけで何度も断られ、気持ちが凹んで心が折れそうになった時に、親切で協力的な不動産屋と出会い、物件を紹介してもらうことができた。

最近、20代のスリランカ人の夫婦からも同じ話を聞いた。
彼らは日本語学校を卒業した後、夫は職業訓練学校に通い、妻はアルバイトをしながら生活をしていて、去年の春ごろ浜松の会社に就職するために引っ越してきた。
その際、何度もぶち当たったのが、「外国人お断り」の壁。それでも、何とかそれを乗り越えて、自分たちが入居できるアパートを探すことができた。

 

日本で、この問題は前々から指摘されている。
なかなか物件が見つからなかった外国人がSNSに、「外国人OKの物件を探すのは、ペット可の物件よりも難しい」と投稿しているのを見た。
ポーランド人もスリランカ人のカップルも当然、「日本にはまだこんな不当な人種差別がある。恥ずべきことだ!」と怒るかと思ったら、実際にはそうならず、ポーランド人はこんなことを言う。

「日本人は部屋を丁寧に使うしマナーも良い。でも、外国人はそうじゃない。部屋を傷つけたり、友だちを呼んで深夜にパーティーをしたりするから、大家や不動産屋が嫌がるのも分かるよ」

この反応は完全に予想外。
日本の「外国人お断り」に理解を示す外国人に会ったのは初めてだから、正直リアクションに困った。
スリランカ人の夫婦も同じ意見で、知り合いの日本人からこんな不動産屋の話を聞いたという。

昔、住む部屋が見つからなくて困っているインド人がいたから、入居者が外国人と知って渋る大家を説得し、彼に部屋を紹介してあげた。しかし、そのインド人が入ると、騒音やゴミ出しなどでトラブルが発生し、いろいろな人に迷惑がかかった。それに、大量の油を使って料理を作っていたため、キッチンがすごく汚れて、部屋全体を修繕するために数十万円の費用が必要になった。苦労して見つけてあげた不動産屋としては「恩をあだで返された」という感じ。
そんな経験もあり、大家や日本人の入居者が嫌がるとむずかしいから、外国人を助けたいという気持ちはあってもそれができないこともある。

スリランカ人の夫婦は日本に5年以上住んでいるから、いろいろな事情を知っている。
外国人に部屋を貸すと、確かにそんなトラブルは起こりそうだし、周囲の日本人が嫌がることも想像できる。もし、日本人の入居者が出て行ったら、不動産屋や大家が損をしてしまう。
だから、外国人への差別感情というよりは損得の問題から、外国人に貸したくないという気持ちは理解できるという。

 

このポーランド人とスリランカ人は、日本人の礼儀正しさ、ルールやマナーをしっかり守ること、周囲の人に配慮して行動することを美点と考えていて、それが日本に住みたいと思った大きな動機になっている。外国人の立場から、多くの外国人にそうした点が欠けていることは知っていた。
それに、まったく差別のない国なんて地球上に存在しない。彼らの母国にある人種や宗教の違いを原因とする差別行為はもっと直接的でひどいらしい。
「外国人お断り」というのは客観的にみれば差別行為だ。しかし、ポーランド人もスリランカ人も人種への憎悪や敵意は感じなかったから、それは差別ではなく、異国に住む外国人が経験する「文化の壁」と受け止めていた。
良い不動産屋と出会って、今は快適に生活することができているから結果オーライ。

しかし、こんなに理解のある外国人は少数派というか、きっと例外だ。
日本で「日本人オンリー」と入口に書いてある店があると、差別的だと失望したり怒ったりする外国人は多い。

信じられない!日本人の「人種差別行為」に外国人が怒りと衝撃

それが一般的な反応で、そもそも「外国人お断り」は日本の法律に違反している。
差別や偏見をなくすには、外国人が日本の常識やマナーを守ることが重要だが、日本人も外国人を理解するために、まずは交流する機会を持って慣れたほうがいい。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

韓国人が感じた日本人との違い:社会・国民性・価値観

【ダメ絶対】韓国人が日本で、日本人が韓国で受けた“差別”

日本の警察の職務質問は差別的? 在日外国人はこう思った

【ハーフに差別的】海外に広くある、日本人の悪い印象

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。