最近、(個人的な感覚では11月になってから)、Xのトレンドで「クルド人」が何度も上がるようになった。
なぜなのか?
それについて、3カ月ほど前に埼玉県川口市の議員がこんな投稿をしている。
ネットで何と言われようと、川口市議会意見書が可決された、数日後に市民が行方を注視しているのにもかかわらず、前川で30人規模の騒乱が起き、7月4日には市立病院での暴動。…
— 奥富精一 川口市議会議員 自民党 (@sei1973jp) August 13, 2024
*投稿が削除されるかもしれないから、やや長めだけど、ここに全文を載せておく。
「ネットで何と言われようと、川口市議会意見書が可決された、数日後に市民が行方を注視しているのにもかかわらず、前川で30人規模の騒乱が起き、7月4日には市立病院での暴動。
その後に続く、交通事故の多発や今年8月直近での刃物や金属バットを持ち出しての、木曽呂と前川での騒乱騒ぎ。等々多数があった事は消せない事実なのです。
私の住まう地域の住民からは意見書を支持する声が圧倒的多数です。当時より今の方が、支持が圧倒的です。
こういう現実に、差別やヘイトで覆いかぶせ、地域住民の声を無き者にしようとする限り、川口の選挙でリベラル勢力が過半数の議席を抑える事は絶対にないでしょう。
あった事を無かったことにしようとする抗弁で、この問題を解決できるのか??否、出来るはずがない。」
川口市議会意見書というのはクルド人を念頭に置き、川口議会で可決された「一部外国人による犯罪の取り締まり強化」を求める意見書のこと。
「病院での暴動」というのは、2023年に起きた「川口クルド人病院騒動」を指す。
女性をめぐるトラブルからクルド人の間で殺人未遂事件が発生。それがきっかけで、川口市内の病院前に100人ほどのクルド人が集結し、一部で乱闘騒ぎが始まった。
この出来事で多くの川口市民が不安を感じ、全国的な注目が集まった。
「川口クルド問題」については、一部のクルド人によってゴミ出しや騒音などのトラブルが発生し、日本人が死亡する事故なども起きて、地域住民との間で軋轢(あつれき)が生まれている。
全国的には双方を支持する人がいて、対立している。そのため、具体的なトラブルをSNSで紹介すると、「それは差別だ!」 「ヘイトスピーチはするな!」といった非難のコメントが飛んでくる。逆に、クルド人を擁護する投稿をすれば、反対の立場から批判が殺到するカオス状態となっている。
川口議会で意見書が出されたときも、これを支持する議員が激しく叩かれた。「ネットで何と言われようと」という言葉の背景にはそんな事情がある。
川口市内の女性が作って、ネットで拡散された画像
奥富議員は「地域住民の声を無き者にしようとする限り、川口の選挙でリベラル勢力が過半数の議席を抑える事は絶対にないでしょう」と“予言”をしたのだが、これはどうなったのか?
投稿の2カ月後に行われた選挙では、埼玉2部(川口市の一部)で『日本維新の会』の高橋英明氏がこう訴えた。
「ルール違反の外国人問題、おまかせください!」
「ルールを守らない外国人はいったん国に帰ってもらって、きちんとした在留資格で来てもらう。支援団体もそういうことを手助けすべきだ」
自民党の新藤義孝氏は「治安の確保」が重要とし、こんな主張をする。
「いわゆるクルド人問題。この機会だから申し上げるが、難民認定申請を繰り返し、10年も20年も川口にいる人たちが増えてしまった」
「ルールを守ってこその共生だ。川口をあやふやな出入り自由の街にはさせられない」
ここで指摘されている「ルール無視」とは、不法滞在の状態にあるクルド人のことと考えて間違いない。
で、選挙の結果はどうだったのか?
住民が選んだのはこの2人で、クルド人問題を(少なくとも積極的に)取り上げなかった「リベラル勢力」の候補者は落選した。「川口の選挙でリベラル勢力が過半数の議席を抑える事は絶対にない」という結果となる。
当選したのは、「私たちの存在を、消さないで」という声と正面から向き合った人物だ。
個人的に「多文化共生」の観点から、この問題には関心があったから、各メディアの報道をチェックしていた。住民の間では以前から、「政治家は何もしてくれない」という不満が上がっていて、今回の選挙はその声が反映された結果になっている。
多文化共生を実現するためには、地域住民の理解が欠かせない。そう思って、以前こんな記事を書いたこともある。
難民認定申請を繰り返し、不法滞在状態にあるクルド人にはいったん帰国してもらい、きちんとした在留資格で来てもらうことが、日本で合法的に生活しているクルド人のためになる。一部の人たちの行動で、民族全体が「ルール無視」というレッテルを貼られるのはおかしい。
差別やヘイトの非難を覆いかぶせ、住民の声を「無き者」にしようとしても、選挙制度がある限り、住民の声を封殺することはできない。
民主主義社会の日本で外国人と日本人が協力的に生活するのなら、何よりもそこに住む人たちの声に耳を傾ける必要がある。奥富議員はその現実を理解していたから、それを無視した共生には「否、できるはずがない」と強調したはず。
今回の民意でそれが証明されたと思う。
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