今回の登場人物は今年の10月に来日して、日本の大学に通っている20代のバングラデシュ人男性と、彼の知り合いで、日本に10年以上住んでいる40代のバングラデシュ人男性だ。では、さっそく2人から聞いた「日本の人と社会」について書いていこう。
でも、その前に両国の関係について少し紹介させてほしい。
歴史的にバングラデシュは広大なインドの一部、ベンガル地方として存在していて、1947年にパキスタンとともにインドから分離独立した。だから、バングラデシュ人は西ベンガル州のインド人と同じ民族で、同じベンガル語を話している。
インドとバングラデシュは兄弟のような関係で、価値観や文化はよく似ているのだ。
*今年6月にバングラデシュで反政府デモが発生して、ハシナ前首相がインドに逃げ出した。バングラデシュは前首相の身柄引き渡しを求めているが、インドは拒否しているため、いまは関係に亀裂が生じている。
ーー君は2カ月前に日本に着いたんだよね。おいでやす。日本の第一印象はどんな感じだった?
バングラデシュ人「成田空港に着いた後、すぐに東京駅へ行ったんだ。そこで新幹線に乗り換える予定だったんだけど、乗り場がよくわからなかったから、近くにいた女性に聞いてみた。そしたら、彼女は子どもと父親をそこに残して、私を案内してくれたんだ。信じられないほど親切で、すごく感動したよ!」
ーー全員がそうではないけれど、その「日本人ガチャ」は大当たりだ。
もし、日本人がバングラデシュで同じ状況になったら、どうなると思う?
バ「もちろん人によって反応は違うけど、いちばん多いのはその場で口で説明するだけだね。わざわざ案内してくれることは期待できない。」
インド人「インド人もそんな感じ。でも、日本人が外国人を目的地まで案内することは珍しくない。それに安心感もある。インドの場合、道をたずねた時点で、「コイツは初めてここに来たんだな」とバレるから、女性だと知らない男性について行くのは危ない。でも、日本ならそんな心配をしなくていい。」
ーーそれは「インドあるある」だ。
ボクがインドを旅行していた時、駅の構内を歩いていたら、見知らぬインド人が「どこへ行くんだ?」と話しかけてきて、「◯◯か。わかった。オレについて来い」と言われてついて行ったら、まったく関係ない旅行会社に案内された。彼は日本人を連れてきたことで、会社からチップ(?)をもらえるらしい。
日本の駅にはそんなトラップはない。
バ「その人だけじゃない。今のところ、日本で出会う人はみんな親切なんだ。」
イ「(苦笑いして)私も日本に来たころは同じように感激したよ。でもね、日本人と付き合っていると、彼らはいつも一定の距離をとっているから、親しみを感じにくいんだ。きっと君もそこで寂しさを感じるよ。私の友人のインド人は同じ理由で、日本は旅行するには最高だけど、ずっと住みたいと思わないと言っている。」
ーー「そう思っていた時期がオレにもありました」と。
で、日本での生活はどんな感じ?
バ「いま私が住んでいる浜松は地方都市だけど、インフラストラクチャーはとてもしっかりしているし、コンビニもあって生活でまったく不便を感じない。」
ーーバングラデシュでは、都市部と地方では大きなギャップがあるの?
バ「バングラデシュは貧しい国で人口が多いから、大都市、特に首都ダッカに集中的にお金を投じて発展させている。だから、どうしても地方は後回しにされてしまう。地方の道は古くて質が悪く、デコボコでところどころに穴もある。ダッカの道とはかなり違う。まだ日が浅くてよくわからないけど、日本では地方も発展していると思う。」
イ「都市部と地方で大きな差があるのはインドも同じ。有力な政治家でもいなかったら、地方は置き去りにされる。でも、日本はそれとは違って、全体的に発展している。」
ーー20年ぐらい前に中国を旅行していて、中国在住のアメリカ人からこんな話を聞いた。『中国の発展は驚くほどアンバランスだ。北京や上海は21世紀なのに、地方に行くと、19世紀や18世紀とあまり変わっていないところがある』と。
イ「日本は小さい国で全体的に教育水準が高いから、地方も発展して豊かなんだ」
ここには出なかった意見で、日本とインド&バングラデシュの発展の違いには「植民地にならなかった」ということがあるはずだ。
インドとバングラデシュを1947年まで支配していたイギリスは、自国が発展するために両国から資源を奪ったり、都市設計をしたりしていた。
日本にはそんな闇歴史がない。ご先祖が独立を守り、日本の発展のためにデザインしてきたことが現代の発展の土台になっている。
コメント
コメント一覧 (1件)
> インドの場合、道をたずねた時点で、「コイツは初めてここに来たんだな」とバレるから、女性だと知らない男性について行くのは危ない。
> ボクがインドを旅行していた時、駅の構内を歩いていたら、見知らぬインド人が「どこへ行くんだ?」と話しかけてきて、「◯◯か。わかった。オレについて来い」と言われてついて行ったら、・・・
いやいや、それば女性でなく男性ても、またインド以外の国でも、非常に危ない行動です。
先方から話しかけてきた見知らぬ奴について行こうなどと、私だったら絶対に考えませんけどね。
そう言えば、「96時間」(原題:Taken、つまり「誘拐」)というリーアム・ニーソン主演のアクション・サスペンス映画がありますが、それがまさに「フランスで見知らぬ奴についていったアメリカ人女学生が人身売買組織に誘拐されてしまう」というストーリーでした。