【日印友好】インド人が東京・蓮光寺を目指す理由 

 

きょう12月12日は「漢字の日」なので、それに合わせて「今年を表現する漢字」が発表された。この1年で話題になったのは、金メダル、裏金問題、カネ目当ての闇バイトなどだったから、清水寺でお坊さんが書いた漢字は「金」だった。
ということで今回のテーマは闇バイトではなくて、黄金のように輝く日本とインドの友好関係だ。

12月12日は1911年に、イギリスに植民地支配されていたインドで首都がカルカッタからニューデリーに移された日でもある。
「カルカッタ」はイギリス時代の名称で、2000年ごろに現地のベンガル語の呼び方である「コルカタ」に改名された。
首都カルカッタはイギリスによるインド支配の中心地だったところで、だからこそ同時に、インド人による独立を求める反英運動が盛んに行われていた。当時のイギリス人にとっては暮らしにくい場所となったため、首都をニューデリーへ遷都し、自分たちも移動した。
ちなみに、このころはアジアで民族運動が盛り上がっていて、1911年には辛亥革命が勃発して清王朝が滅亡している。

以前、コルカタから静岡へやって来たインド人と話をしていた時、日本で行きたい場所を尋ねると、彼はピンポイントで「東京のレンコウジです」と言う。
ああ、レンコウジね。…初めて聞いたお寺で、漢字もインドとの関係もさっぱりわからない。そこを目指す理由を聞くと、彼は笑顔でこう言った。

「そのお寺にはチャンドラ・ボースのお墓があると聞きました」

 

東京で東條英機と会談を行うボース(1943年)

 

ボースはインドの独立運動家で、国内ではおそらくガンディーと同じくらい尊敬されている。彼はベンガル出身だから、ベンガル人のあいだでは特に人気が高い。
コルカタの空港は彼に由来し、「ネータージー・スバース・チャンドラ・ボース国際空港」と名付けられた。ややピンボケしているトップ画像はそこにあった彼の像。

ボースは日本軍とともにイギリスと戦って、祖国を解放しようとしたが、その夢を実現することはできず、1945年に台湾の空港で起きた飛行機事故で亡くなった。
最後の夜は病院にいて、「何か食べたいものがあるか」と聞かれたボースは、「カレー」と答えたという。そして、用意されたカレーを少し食べた後、息を引き取った。ボースは骨の髄までインド人だった。
ボースの遺体は台湾で火葬された後、遺骨は日本に運ばれ、東京・杉並区にある蓮光寺で葬儀 が行われて墓がつくられた。
チャンドラ・ボースはインド独立運動の英雄だから、これまでにプラサード大統領、ネルー首相、インディラー・ガンディー首相といったインドの要人が参詣に訪れている。

 

チャンドラ・ボース国際空港にあったボースの絵。
彼が着ているのは日本軍の軍服と思われる。

 

たくさんの人がインド人が蓮光寺を訪れて、ネットに感想を書いているので、ここにその一部を紹介しよう。

・This temple is of great importance to Indians. It has a statue of subhash Chandra Bose.
このお寺はインド人にとってとても重要だ。スバース・チャンドラ・ボースの像がある。

・being Indian and Bengali, it was a place we couldn’t miss.
インド人やベンガル人として、ここは外せない場所。

・This is so great of Japan where they have donated a statue with the Hindi and the Japanese inscription on it.
ヒンディー語と日本語の碑文が刻まれた像を寄贈してくれた日本は本当に素晴らしい。

*以下、日本語訳のみ。

・インド人にとっては、インドの偉大な息子(=ボース)の存在を感じられる場所だ。
・ここはインドの愛国者たちにとって深い意味がある。
・もしあなたがインド人なら、インドの最も偉大な自由戦士の一人が眠るこの寺院を訪れたとき、それはあなたにとって誇りの瞬間となるだろう。

 

インド人のコメントを読んでいると、チャンドラ・ボースが母国でどれだけ尊敬されているのかがよく分かる。ベンガル出身のインド人なら、蓮光寺はマストプレイスだ。
彼の墓がしっかり管理されていることに感激したり、感謝したりするインド人も多い。蓮光寺は日印友好の象徴のひとつになっている。
日本人もここへ足を運んでボースの魂に手を合わせ、改めて当時の日本とインドの歴史を学んでもいい。

 

 

インド 目次 ③

【ガンディーの非暴力】インド独立運動の具体的な方法

日本という「アジアの光」② アジアの歴史教科書から見た日露戦争

【インドの廃藩置県】独立後、日本のようにいかなかったワケ

【イギリスの置き土産】インドの警察官が高圧的で暴力的な理由

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。