日本はインドネシア人にとって植民地支配の解放者?侵略者?

 

うれしいことに、「日本は好きだ!」と言ってくれるインドネシア人は多い。

旅行サイトの「TABIZINE」の記事(2016年8月)では、世界の親日国としてインドネシアをあげている。

日本に好感をもっている国ってどこ?世界の親日国10選

 

でも、なんでインドネシア人は日本に好感をもってくれているのか?

「TABIZINE」の記事では、その最大の理由を「日本人がインドネシア人とともに独立のために戦ったから」ということをあげている。

インドネシアが親日国と言われるようになった最大の理由は、日本人がオランダによるインドネシアの再植民地化を防ぐ手助けをしたこと。

インドネシアは約340年間にわたるオランダによる植民地支配と、日本による1945年までの3年間の統治の後、独立を宣言します。

しかし、オランダが再度インドネシアを植民地化しようとしたため、再び独立戦争が勃発しました。そこでインドネシアとともに戦ったのが軍籍を離脱した日本人約3000人。その甲斐あって、1947年にインドネシアは悲願の独立を果たしたのです。

日本に好感をもっている国ってどこ?世界の親日国10選

 

20年ぐらい前に、ボクもこれと同じことを本で読んだことがある。

「インドネシアはとても親日的な国だ。その理由は、太平洋戦争の前後で日本人がインドネシア人のために良いことをしたから」

その具体的な内容は、次の2つがあったと思う。

・「TABIZINE」の記事で書いているように、インドネシアの独立のために日本人もオランダ軍と戦ったこと。
・前回の記事で書いた「ペタ(郷土義勇軍)」で日本人が協力したこと。

 

この2つの理由によって、「今でも日本に感謝してるインドネシア人はたくさんいる」ということをその本で知った。

そんなことを知って、インドネシアという国に興味が出てきた。

 

その本を読む前まで、太平洋戦争のときの日本というと「残酷な侵略者」というイメージがあった。

インドネシアを始め、東南アジアで多くの人たちに苦しい思いをさせて迷惑ばかりをかけていた。
「だから太平洋戦争のときの日本軍のおこないによって、今でも日本は東南アジアでは嫌われている」という印象をもっていた。

 

今になってみたら、このときボクがこう考えていたのは中学や高校で学んだ歴史の影響が一番大きい。

何も知らない「白紙」の状態で、「日本軍は残酷なことばかりをしていた」「今でも日本人を恨んでいるアジアの人たちはたくさんいる」という歴史教育を受けていから、自然にこういう認識を身につけてしまった。

当時はネットをつかって自分で調べることもできず、教師の影響力は今よりずっと大きかった。

 

だから、その逆の内容を知って驚いてしまう。

インドネシアは日本を好きな人が多い親日国である。
その理由は、日本がオランダの植民地支配からインドネシアを解放したことや独立を守るために戦ったからだ。

そんなことを本を読んで知って、まさに目からウロコが落ちる思い。

そんなことで、「インドネシアに行って、現地の声を聞いてみなくては!」とインドネシア旅行を思いたつ。

 

ちなみに、「目からウロコが落ちる」ってこんな意味の言葉です。

めからうろこがおちる【目から鱗が落ちる】

あることがきっかけとなって、迷いからさめたり、物事の実態がわかるようになる。

大辞林 第三版の解説

 

短く「目からうろこ」と言うこともある。
これはもともと、キリスト教の聖書(使徒行伝九章)に書いてある言葉なんですよ。

 

そんな目的があったからインドネシアを旅行していたときには、太平洋戦争の前後で日本がしたことをいろいろなインドネシア人に聞いてみた。

すると、日本で読んだ本と同じことを言う。

「ああ、そのとおりだ。インドネシアの独立は日本のおかげだよ。だから今でも感謝しているインドネシア人はたくさんいるんだ」

やっぱり!太平洋戦争のときに、日本軍はインドネシアに良いことをしたんだ。
それじゃ、ボクが教わった教育はなんだったんだろう?

 

 

・・・・となることを期待していた。

でも実際には、そんなことを言うインドネシア人には出会わない。

宿のスタッフや旅行会社で働いていたインドネシア人に話を聞いてみたけど、「日本軍がオランダの支配から解放した」なんて話した人はいない。
独立戦争で、日本人もインドネシア人と一緒にオランダ軍と戦ったことを知っているインドネシア人は1人もいなかった。

ペタやインドネシアの独立宣言にある皇紀のことなんて、だ~れも知らない。

「あれ?話が違う」

旅行に行く前は、「植民地支配からの解放者としての日本」や「独立を守った日本人」というイメージを頭に思い描いていた。
でもバリ・ジョグジャカルタ・ジャカルタで出会ったインドネシア人に話を聞いても、そんなことを話す人はいない。

 

今度は中学や高校の歴史教育とは逆で、「あの本に書いてあったことはなんだったんだろう?」と不信感をもつようになってしまった。

日本に住んでいるインドネシア人に話を聞いてみても、同じことを言う。

「太平洋戦争のとき日本は、インドネシアになにをしたの?」

と聞くと、「オランダの次に支配したのが日本」と答えるのが一番多い。

だれにきいても、日本を「解放者」や「戦友」なんて言わない。

 

でも、インドネシアが親日的な国だということは本当。

宿のスタッフも旅行会社のインドネシア人も、「日本は大好きださ」と口をそろえて言う。
宿のスタッフが「日本人は部屋をきれいに使うし、問題もおこさない」と言えば、旅行会社のインドネシア人は「日本人の客はルールや時間を守るし、キャンセルもしない」と言ってくれる。

他にも移動中のバスで話を聞いたインドネシア人からも、日本に対して良い印象をもっていることを聞いた。

インドネシアが親日国であることは実感できた。

 

ボクが話を聞いた限りでは、「オランダの次に支配したのが日本」というものが多かったけど、だからといってインドネシア人は日本に悪い感情をもってはいない。

というか、だれもそんな話題に関心がない。

日本で住むインドネシア人の関心は、そんなことより今の日本での生活のほうにある。
70年前に日本人がしたことなんて彼らの意識にはない。

「自転車に乗っていると警察官に呼び止められて、『盗難車ではないか?』と疑われることが多いです。それがうっとうしくてイヤですね」
そんなことを話していた。

 

これはインドネシアに住んでいる人たちも同じ。
ふつうのインドネシア人は日々の生活で忙しいし、頭のなかにあるのは週末の予定ぐらい。

独立記念日がある8月になると、インドネシアの国旗を街で見かけるようになるから、オランダの植民地支配や独立のことを考えることもあるぐらいだという。

 

結局、ボクがインドネシア人から話を聞いた範囲では、「オランダの植民地支配を解放した日本」も「インドネシア独立を助けた日本」もなかった。

TABIZINEの記事にあったことは、まったく確認できなかった。

「インドネシアが親日国と言われるようになった最大の理由は、日本人がオランダによるインドネシアの再植民地化を防ぐ手助けをしたこと」

今となっては、この記事を書いた人が何を根拠にこう書いたかに興味がある。

 

でも、「日本軍は残酷なことばかりをしていた侵略者だ」とか、「今でも日本人を恨んでいるインドネシアの人たちはたくさんいる」という話も聞かない。

さっきも書いたけど、70年前の日本のことなんてだれも興味がないし、ほとんど知らない。
インドネシア人にとっては、「解放者としての日本」や「侵略者としての日本」なんてことより、もっと身近で大切なことがたくさんあるから。

 

この記事では「世界の親日国」に興味がある人ために、TABIZINEのこの記事のリンクをはっておきました。

日本に好感をもっている国ってどこ?世界の親日国10選

 

この記事を参考にするぐらいならいいけど、記事の内容を信じるなら自分で調べて確認したほうがいいですよ。

この記事で「1947年にインドネシアは悲願の独立を果たしたのです」と書いてあったけど、これはアヤシイ。

外務省のホームページにある「インドネシア共和国 基礎データ」では、次のように書いてある。

1945年 8月17日,スカルノ及びハッタがインドネシアの独立を宣言。

1949年 ハーグ協定によりオランダがインドネシアの独立を承認。

 

1947年については、なにも書いていない。

これはインドネシアの高校生がつかう歴史教科書も同じで、インドネシアの独立は1945年となっている。

旅行サイトの情報はホテルやレストランの情報は正確でも、歴史については「これはどうかな?」というものがちょこちょこある。

ブログを書く人は自分で確認してから記事を書いた方が絶対にいいよ。

 

こちらの記事もいかがですか?

日本とインドネシアの関係②生活の違いと独立宣言の「皇紀」

日本とインドネシア③peta(義勇軍)と独立戦争で共に戦った日本人

旅といえば「東南アジア」。その意味は?インドシナとは?

日本とタイ(東南アジア)の仏教の違い① 飲酒・肉食・喜捨(タンブン)

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ②

 

15 件のコメント

  • ブログ読ませていただきました。
    感想を書かさせて頂きます。
    確かに今の日本人も戦後のアメリカの占領などについて関心のある若者は少ないという印象を持たざる負えないですよね 。
    私も貴方と同じようにインドネシアが親日的な理由が独立に関係しているのかと思っていましたが、インドネシアの方は今を生きることの方が大切なのだと考えているのがこのブログで感じ取れました。
    私も時間があればぜひインドネシアに行ってみたいと思っています。貴重なブログありがとうございました。
    あと、こういうコメントは不馴れなもので長文失礼しました。

  • 丁寧なコメントありがとうございます。

    日本人が日本人の読者に向けた書いた本は、「読者受け」をねらっているものが多いと思います。
    大げさで実態と離れているような。

    インドネシアは親日国ですけど、それは戦後の支援や食べ物やポップカルチャーなどの文化の影響でしょうね。
    私も「日本軍に感謝している」というインドネシア人を探してみましたが、見つかりませんでした。
    インドネシアの歴史教科書を読むといいと思いますよ。
    それとインドネシアはいい国ですから、ぜひ行ってみてください。

  • なんだか日本が国の信頼を得るために途上国に経済支援している無償の温情は、
    その国が立ち直る頃には世代変わって忘れ去られるって印象が、記事読んで
    率直に思うこと。日本政府は、日本国民の暮らし向きを犠牲にしてまで
    いったい何を勝ち得たいのかさっぱりわからなくなった。相変わらず
    近隣社会主義国同様、特権階級がひとり勝ちして内部留保に励み、
    庶民は圧迫され、80年代バブル期、中流を意識していた国民庶民感情は
    どこへやら。ああ、嫌味ったらしい貧乏庶民の愚痴になるぅ…

  • いえいえ!
    そんなことはありません。
    最近、外務省が発表した調査では、東南アジアの国は日本を高く信頼していることが分かりました。
    それは日本がおこなってきた支援が大きいです。
    よかったら、この記事をご覧ください。

  • こんにちは、良い勉強をされてますね。私も毎年インドネシアのマランにある日本人慰霊碑に手を合わせてきます。世界中探しても嘘の歴史しか教えてません。嘘で都合が良くなる国や人たちがいると云う事です。インドネシアにしてみれば自分たちの力で独立をしたことにしたいでしょう。自分の知人のインドネシア人も知らなかったし学校の歴史でも教えていないのが現実です。インターネットが普及して、自分で調べられるのに歴史の真実を知りたい人は少ないですよ。自分が何を信じるのかですね。殆どが嘘ですから国によって真反対になったりもします。
    ただ、真実は兵隊さん達(英霊)がいなければ私たちは生まれていなかったってことです。たとえ敵でも同じです。英霊様を貶めてはいけないと思います。ドイツのように責任を押しつけて生きてる国じゃなくて良かったと思います。日本人が良く思われているのも先人のおかげです。
    どうも、長文で失礼いたしました。
    PS、マランは山に囲まれた静かで良いところです。独立の時に戦われた小野盛さんが暮らしていた場所です。
       マランにある日本人の慰霊碑には「友好国インドネシアの美しい静かな街マランに安らかに眠ってください。日イ両国の平和と繁栄を祈ります。」と刻まれてます。スラバヤ方面に行かれることが有れば是非お寄りください。

  • こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    >私も毎年インドネシアのマランにある日本人慰霊碑に手を合わせてきます。
    これは本当に素晴らしいです。
    忘れてはいけない人やことがありますから。

    >自分たちの力で独立をしたことにしたいでしょう
    インドネシアの歴史教科書はそういう方針で書かれていました。
    自国の歴史をどう解釈するかは、その国の自由ですから、仕方ないです。

    でも、いまのインドネシアで日本は人気があると聞きました。
    これも今までの日本人のおかげです。

    マランですね。
    わかりました。いい情報をありがとうございます。

  • >結局、ボクがインドネシア人から話を聞いた範囲では、「オランダの植民地支配を解放した日本」も「インドネシア独立を助けた日本」もなかった。

    →最近のインドネシアの人達は、このことを確かに知らないかもしれませんが、これは特定の誰かが言い始めたことでもなんでもなく、歴史上の事実です。その証拠のほんの一部を以下、ご紹介します。
    1994年のインドネシアの独立記念パレードで、日本兵が使い方を教えた日本刀や竹槍を持って、日本の軍歌をみんなで歌うインドネシアの人々の映像です。

    インドネシアに4年駐在していたものですので、ついついインドネシアの肩を持ってしまうおじさんのたわごとでした(^_^)。

  • コメントありがとうございます。
    こういうインドネシア人に出会えたらよかったのですけど、ボクの場合は縁がありませんでした。
    インドネシアの歴史教科書を読みましたが、「インドネシア人が独立のために勇敢に戦った」という愛国心を鼓舞するような書き方をしていました。
    インドネシア独立のために戦った日本人はいましたが、この教科書には何も書いてありませんでした。
    そういう日本人のことを覚えてほしいのですけどね。

  • インドネシアに旅行に行ったときに現地のガイドに、日本軍(日本人)は悪いことをして済みませんてきな事を言ったら
     オランダは300年 日本は3年だけ それだけ事的な答えであっけらかんとしました。 結局相手が変わっただけでその後の独立の事などの経過など知っているのか聞かなかったが気にしてない感じで特に日本に対して悪い印象ではなかった。 反日教育などはしてないのでしょう。 

  • ボクもいろんなインドネシア人から話を聞きましたが、現在のインドネシア人は80年ほど前のことに関心はないです。
    それより週末の予定のほうが大事ですね。
    「ロウムシャ」という言葉は有名ですけど、いまのインドネシアは親日国で日本は人気があります。
    韓国・台湾・インドネシアの歴史教科書を読みましたが、インドネシアで反日教育はないです。

  • 日本人が勝手に来てやったことなんだから、感謝しろよってのは筋違いですわな

  • でも、旧日本軍はインドネシアの人に強制労働をさせていっぱい死なせてますね。言う事聞かないなら殺せって言う上層部からの命令書も見た事有ります。かなり美化はさべてますね。

  • >インドネシアの人に強制労働をさせていっぱい死なせてますね。言う事聞かないなら殺せって言う上層部からの命令書も見た事有ります。
    このことについて客観的な根拠はありますか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。