日本人の美意識「わび・さび」と、マスク氏の言う「侘び寂び」

2月21日は、1482年に室町将軍・足利義政が慈照寺(じしょうじ)、いわゆる銀閣寺をつくり始めた日。
彼の祖父・足利義満は金閣寺(金閣)を建て、豪華さを特徴とする北山文化を生み出した。
それに対し、1467年に応仁の乱が始まり、戦乱の世の中に花開いた能、茶道、庭園などの芸術をひっくるめて東山文化という。その象徴が銀閣寺だ。
東山文化の特徴に「わび・さび」があり、時代を超えて、現在の日本人もこの美意識を大切にしている。

「わび・さび」とは、不完全を肯定し、時間の経過によって表れた美しさを認める考え方や、質素やつつましさの中に、奥深さや豊かさなどを味わう感性を指す。
わび・さびは日本人の独特の美意識や感覚を表す言葉として、今では世界的に有名だ。
英語版ウィキペディアには、その美学や原則の特徴には、非対称性、粗さ、簡素さ、経済性、厳格さ、慎み深さ、親密さ、自然物と自然の力の両方への感謝などがあるという説明がある。

asymmetry, roughness, simplicity, economy, austerity, modesty, intimacy, and the appreciation of both natural objects and the forces of nature.

Wabi-sabi

 

昨年11月、この言葉に世界中の関心が集まった。
アメリカの実業家で「X」のトップであるイーロン・マスク氏が、自身のXアカウントで、突然日本語で短く「侘び寂び」とつぶやき、日本ではトレンド1位となった。
マスク氏は4文字を投稿しただけで、その理由についての説明は一切ない。

なぜマスク氏は日本独特の美意識をつぶやいたのか?
マスク氏は2022年にも漢字の「侘寂」と、「the elusive beauty of imperfection」(定義することが難しい不完全な美しさ)というコメントを投稿していたから、もともと彼が日本文化に関心やリスペクトがあることは間違いない。

それに「タイミング」も重要だったと思われる。
このときはトランプ政権で、新しく「政府効率化省(DOGE)」が新設され、そのトップ(日本でいう大臣)にマスク氏が起用されることになっていた。
DOGEの重要な仕事のひとつは政府支出を大幅に削減し、国をよみがえらせること。そのため、「侘び寂び」には、それに対するマスク氏の考え方が表れているとの指摘がある。
大量生産・大量消費に代表されるアメリカ国民の意識を変え、生活をもっとシンプルなものにすることをアピールしたのではないか?
マスク氏は物質文化から精神文化への転換を図り、それを経費削減につなげようと考えたのだろう。このタイミングで「侘び寂び」と投稿したことは、DOGEと無関係とは思えない。

 

先日、そんなマスク氏が、今度はとってもわかりやすい投稿をした。

 

この投稿には一部の日本人から、「名誉と地位を手に入れたデンジくん」といった喜びの声があがった。
マスク氏はプレゼントされたチェーンソーを掲げ、「これは官僚機構を断つチェーンソーだ」と言い放つ。これと同じ日、政府効率化省が米内国歳入庁の職員約6000人の解雇を発表した。「このチェーンソーでムダな予算を切りまくってやるぜ!」という強い意思を感じる。

業務を見直し、大胆なコストカットなどをすることを日本語では「大鉈を振るう」というが、チェーンソーを振り回すのが米国式らしい。
この投稿は根本的には「侘び寂び」と同じ目的で、ウィキペディアのいう「経済性」を指しているのだろう。
深遠さがなくて、ストレートでわかりやすいところにアメリカ人っぽさが表れている。

 

 

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