今はセントレア空港の中にいる。
大連(中国)いきの飛行機のチケットは手に入れた。
でも、出発にはまだ時間がある。
「じゃ、できるだけ安くてなるべく日本的な食べ物を食べとくか?」
ということで、おにぎりを買いに空港にあるコンビニへむかっているところ。
情けないことを言ってんじゃねえ。
こんな弱音をはく空港を初めてみた。
前回、韓国でのおにぎり(チュモクパプ)について書いた。
簡単にいったら、韓国ではおにぎりに対して「下品で貧しい」という悪いイメージがあった。
そのことで、日本語ガイドの韓国人の顔が頭にうかんでくる。
15年ぐらい前のソウル旅行でのこと。
ガイドさんと話をしているときに、その人がおにぎりについてこんなことを言っていた。
「私はおにぎりがキライです。おにぎりのように、手づかみで食べるものには抵抗がありますから。労働者みたいですし礼儀も良くないです」
この言葉を聞いたときは驚いた。
というより衝撃的だった。
2017年の今なら、そのガイドさんは60歳ぐらいになっていると思う。
このときの「労働者みたいですし」という言葉には、あきらかに蔑視(べっし)がこめられていた。
それを感じたから、今でもこのときの言葉をよく覚えている。
前回に続いて今回も、日本の食文化であるおにぎりについて書いていきたい。
まずは、おにぎりってどんなもんかを確認しときましょ。
日本の食と歴史に精通した樋口清之氏によると、日本人がおにぎり(にぎり飯)をつくりだした理由は「米の保存」にあるという。
それを防ぐために生れたいちばん素朴な方法が、‘握り飯’である。握り飯をつくると、外側は空気に接触するから、かびが生えたりするが、中は腐らない。そこで、握り飯の表面に発酵作用を止める塩をまぶしたり、ミソで包んだり、あるいは焼いて表面を炭化させておく方法を考えついた。
「梅干と日本刀 樋口清之」
この握り飯の考え方の延長に「餅(もち)」がある。
つまり、握り飯(おにぎり)と餅は同じ考え方から生まれているという。
中国や韓国(朝鮮半島)でも、人々はむかしからお米を食べている。
でも、おにぎりをつくって食べるという食文化はなかった。
韓国のトッポギ。
元は宮廷料理だった。
トッポギもお餅だけど日本の餅とはちがう。
先ほどもかいたように、韓国にはおにぎりに対して悪いイメージがあった。
でも何とかして、韓国でおにぎりを売ろうと考えた人が出てくる。
これはなかなかむずかしいミッションだ。
それには、おにぎりの「下品で貧しい」というイメージを変えないといけない。
ということで、「チュモクパプ(げんこくつ飯)ではダメだ。別の名前をつけて売り出そう」と思いつく。
そこで前回紹介したキンパプ(のり巻き)を名前を取り入れることにした。
これで、「三角キンパプ(のり巻き)」という名称ができ上がる。
これでおにぎりの「下品で貧しい」というイメージが大きく変わって、韓国人にうけたという。
そのことについて、韓国に精通したジャーナリストの黒田勝弘氏がこう書いている。
<随筆>◇キムパプ(ノリ巻き)礼賛論◇ 産経新聞 黒田勝弘 ソウル支局長
韓国で長らく文字通り“冷や飯”を食わされてきたオニギリが、ついに商品として市民権を得たのはその名称を「三角キムパプ(つまり三角オニギリ)」と命名したからだ。以来、コンビにでも売れ筋になった。
これはつい近年のことで、まだ十年ほどの歴史しかない。オニギリを意味する「チュモクパプ(つまり、げんこつ飯)」では絶対に売れない。「チュモクパプ」は下品(?)で貧しさと非常食のイメージを抜け出せないからだ。
おにぎりを「三角キムパプ(三角おにぎり)」と名づけることで、イメチェンに成功した。
黒田勝弘氏はこれを、「オニギリの進化、高級化だ」と絶賛している。
今の韓国のコンビニでは、日本のコンビニと同じようにいろいろなおにぎりがならんでいる。
その背景にはこんな命名の物語があった。
今の韓国では、おにぎりがすっかり定着している。
韓国でおにぎりがブームとなった背景には、「本多さん」という日本人がいた。
韓国には「冷めたものを食べるのはお金のない人」と考える人が多くて、コンビニでおにぎりはほとんど売れなかったという。
それでも本田さんが中心となって、日本ののりを使った新しいおにぎりを開発する。
くわしく書くとキリがないけど、他にもいろいろな工夫があって韓国でおにぎりが大きなブームとなった。
韓国のコンビニで初めてテレビCMを打ったことも功を奏し、コリアセブンのおにぎりは爆発的な売上を記録することになる。
・新しい名称をにして、「下品で貧しい」というそれまでのおにぎりにあった悪いイメージをくつがえした。
・日本ののりを使って新しいおにぎりをつくった。
そんなこんなで、今ではおにぎりが韓国人の日常生活にすっかり溶けこんでいる。
個人的には、こっちのほうが下品な感じがするんだけどなあ・・・。
韓国人の友人も「下品!」と「おもしろい!」にわかれた。
こちらの記事もいかがですか?
イギリスという国とは?階級社会・日本の平等・アメリカ人との違い
満州の旅②東南アジアのルーズな時間感覚!ゴムのようにのびる。
コメントを残す