最近、浜松市でイスラーム教徒のインドネシア人が話した内容が全国的な話題になった。
その人は静岡県に住むムスリム(イスラーム教徒)で、おなじイスラーム教徒から日本での生活で感じている困難や苦労について調査をしていた。
イスラーム教徒が日本で生活すると、どんな苦労があるのか?
そのインドネシア人は調査結果をもとに、イスラーム教徒の生活の実態を市民に伝えている。
イスラーム教徒が日本で生活するときに問題になることに、「ハラルフード」というものがある。
イスラーム教徒は宗教の教えによって豚肉を食べることはできないし、アルコールを飲むこともできない。
イスラーム教徒が食べられるものは、「ハラルフード」とよばれている。
ハラルフード
イスラム教の戒律に沿った食べ物。ハラルはアラビア語で「許された」などを意味し、豚肉や酒類を禁じている。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説

「イスラーム教徒が食べても大丈夫」というハラルフードであることをしめしている。
浜松市にはこのサインがあるスーパーがある。
静岡県の学校はこのハラルには対応していない。
これは日本中の学校がそうだろう。
ハラル対応の給食を提供している学校は聞いたことがない。
福岡県のある私立保育園ではハラル対応の給食をだしているけれど、これは日本でも例外中の例外。
ハラルフードでなければ、イスラーム教徒はその給食を食べることができない。
そのため多くのイスラーム教徒の親は、お弁当を持たせたり豚肉があるメニューのときだけおかずを持たせたりしているという。
こうした現状をふまえたうえで、先ほどのインドネシア人は「ルールだから駄目というのではなく柔軟な対応を検討してほしい」と市民に理解を求めている。
他にもこのような問題があるという。
学校や職場で、お祈りや断食、女性が頭にかぶる「ヒジャブ」を禁止された例や、侮蔑の言葉を投げ掛けられた体験談も示された。
学校生活、給食など苦慮 ムスリムの子に「理解を」
浜松市でおこなわれた講演が全国的な話題となったのは、こうした問題がこれから日本の他の地域でも出てくるからだろう。
日本で生活する外国人やイスラーム教徒の数は増えている。
だからこれと同じような問題が日本に広がることはまず間違いない。
異なる宗教や文化の人たちと共生は、今の日本人が考えなくてはいけない問題になっている。
では、外国人との共生で大切なことはなにか?
それはいろいろなことがある。
けれど、とても大事なことに「外国人が日本人の価値観や日本の社会のルールを守る」ということがある。
外国人との共生については、今のヨーロッパがその問題をかかえている。
ヨーロッパ各国の対応は日本にも参考になるはず。
たとえば、最近のオーストリアではこんな動きがあった。
今年(2017年)3月に、オーストリアでイスラーム教徒の女性が公共の場でブルカやニカブを着ることを禁止する法案が閣議決定されている。

ブルカ(ウィキペディア)

ニカブ(イエメンの女性)
バスや鉄道などの公共の交通機関を利用するときにも、イスラーム教徒の女性はブルカやニカブを着ることが禁止されることになる。
でもこれは、イスラーム教徒を「ねらい撃ち」するのではない。
オーストリア政府は、「イスラーム教徒と他の市民がいっしょに生活するためには必要なこと」と説明している。
欧州でイスラム過激派によるテロが続発する中、法案はイスラム教徒らの「社会統合の促進と平和的な共存の確保が目的」としている。
たくさんの人がいる公共の場所で、イスラーム教徒の女性がブルカやニカブを着ているとどうしても市民が不安をおぼえてしまうらしい。
今のヨーロッパで、テロは人々の生活をおびやかす最大の問題になっている。
公共の場でブルカやニカブを着ることはオーストリア人の価値観には合わない。
だから、それを禁止することになった。
これと同じ動きはオランダやフランスでもある。

外国人がある国で生活するのなら、その国の価値観や社会のルールを守ることがどうしても必要になってくる。
もちろん、外国人の言うことを聞かずに一方的に日本の価値観やルールを押しつけるわけではない。
だから先ほどのインドネシア人のように、外国人が日本で生活するうえでの苦労を広く市民に伝える機会はとても大切なことになる。
でも、そうした意見をふまえたうえで決まったルールに対しては、外国人も守ってもらう必要はある。
外国人が日本人の価値観より自分たちの価値観を優先していたら、日本での共生はできない。
それはオーストリアを始め今のヨーロッパを見るとよくわかる。
これからの日本では、外国人との共生が進んでいくことはまず間違いない。
そのことを考えたときに日本人が知っておくべきことは、「外国人が日本人の価値観を尊重することが大事」ということだと思う。
外国人の価値観に日本人のほうが合わせようとすると、日本人のあいだで外国人への不満がでてきて結局はうまくいかなくなってしまう。
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