旅㊲明治時代、英語を日本語にして世界の五大国に!でも今は英語ヘタ。

 

日本語を聞いたアメリカ人やイギリス人が驚くことがあるという。

「日本語を聞いていても、知っている言葉がない!」

アフリカや南米など世界中で、現地の人は「デモクラシー」や「エコノミー」という英単語を使っている。
だからアメリカ人やイギリス人が現地の人の言葉を聞けば、「今、民主主義や経済の話をしているな」ということがわかる。

でも日本語を聞いていても、それができない。
このことに英米人が驚くという。

日本を訪れた英米人が驚くことの一つに、日本人の会話を何十分間聞いても、耳で聞いてわかる単語を一つも拾えない、ということがあります。
(中略)
日本を含むアジアの漢字語圏では、ミンシュシュギとかケーザイとか、英語の原語と全くかけ離れた発音の語を使う。それは、英米人の耳にショックを与えるのだそうです。

「NHK歴史に好奇心 日中二千年 漢字のつきあい (加藤徹)」

 

この英米人の驚きの理由は簡単。

明治時代に、日本人が英語を次つぎと日本語にしていったから。
日本人は「デモクラシー」を「民主主義」、「エコノミー」を「経済」という日本語にした。
こんな感じに、明治の日本人はいろいろな英語を日本語に翻訳していった。

だから今では、英米人が日本語を聞いても「耳で聞いてわかる単語を一つも拾えない」ということがおこる。

このことは前回書いたから、興味がある人はそちらを読んでくだされ。

今回書きたいのはこれ。
この時代の日本人が英語を日本語にしていったことの、メリットとデメリットについて。

 

明治時代に、日本人が日本語にした英単語はたくさんある。

「漢字と日本人 (高島俊男)」という本を見ると、ざっとこんな感じ。

政府、政治、裁判、建築、交通、公務員、選挙、会社、銀行、不動産、機械、経理、道路、鉄道、自動車、自転車、運動、体育、体操、陸上、野球

 

こう見ると、今の日本人が使っている日本語には、明治時代につくられた言葉がたくさんあることがわかる。

この日本語訳のメリットは、明治日本の近代化が成功したことだろう。
明治日本の近代化は、その時代の外国人から見たら驚異的なスピードで進んでいった。

あるアメリカ人は、それを「魔術的指揮棒の一振りで完成させた」と書いている。

日本の陸海軍の創設、警察機構、行政組織は諸外国の最高例を範とし、また教育機関は完璧で、米国、英国、ドイツも制度から得た賞賛すべき最高結合体となりました。

さらには郵便制度、灯台、電信、鉄道、病院も西洋と同じ方式を採用しています。

すべてこれらは、緩慢な成長、遅鈍な発達、悠長な必要性の所産ではなく、ほとんど自発的に日本帝国の魔術的指揮棒の一振りで完成させたのです

(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)

 

当たり前のことだけど、日本人にとっては英語よりも日本語の方がわかりやすい。
日本語にすれば、外国の思想や政治制度などむずかしい内容が簡単に早く理解できるようになる。

もちろん、日本が近代化に成功した理由は言葉だけではない。
でも外国語を日本語にしたことは、その大きな理由のひとつになっている。

 

「欧米に追いつけ!」とがんばっていた明治の日本では、「外国語を日本語にしたほうがいいか?それとも、そのまま受け入れたほうがいいか?」という議論はあった。

なかには、「日本語から漢字をなくしたらいい」なんていう漢字廃止論まで出てくる。

英語を日本語にしていったデメリットは、今の日本人を「英語がヘタな国民」にしたことだろう。

明治の日本人が英語を日本語にしてくれたおかげで、今の日本人はその分、覚えないといけない英単語が多くなった。

哲学者の西周にしあまねは「外国語を日本語(漢語)にしなくてもいい。そのまま使えばいいじゃん」と考え、1874年(明治7年)に「洋字ヲ以テ國語ヲ書スルノ論」を発表している。

翻訳文の学術語などは,今の字音の漢語のように,訳さずに用いるべきである。器械産物などにいたっては無理に訳さず,もとのことばのまま用いるべきである。

洋字ヲ以テ國語ヲ書スルノ論

 

明治政府が西周の意見を取り入れて、外来語を日本語にしないでそのまま使っていたら、今の日本語はどうなっていたか?

「デモクラシー」や「エコノミー」といった英語が日本語になっていて、日本を訪れた英米人が「日本人の会話を何十分間聞いても、耳で聞いてわかる単語を一つも拾えない」とい驚くことはなかっただろう。

それにもし、明治の日本が英語を公用語にしていたら、今ごろ日本人はシンガポール人なみに英語を話すことができていたかもしれしない。

 

ちなみに、今の日本は基本的に上の西周の考え方と同じ。
英語を日本語にしないで、カタカナで書いてそのまま使っている。
まあ、「インターネット」、「マウス」、「クラウド」といった英語を日本語にするのはむずかしいけどね。

「マウス」という英語を日本語にしたら。どんな言葉になるのかまったく想像できない。

 

明治時代、日本人が英語を日本語にしていったことのメリットとデメリットでは、どちらが大きいか?

結果から見たら圧倒的にメリットでしょ。
日本は外国の植民地にならないで、近代化に成功することができた。
第一次世界大戦の後、日本は世界の五大国にもなっている。

 

物ごとには、良い面と悪い面がある。
「悪いところはいらない。良いところだけがほしい」と思っても、世の中そんな都合よくいかない。

明治の日本人ががんばってくれたおかげで、今の日本がある。
だから現代の日本人は、英語の学習を他の国の人よりもがんばるしかない。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。