徴用工問題、原因は文大統領(韓国)に。日本は配慮より圧力を。

 

四国の徳島新聞と高知新聞の社説がおもしろい。

両紙とも同じ日、8月21日付の社説。

徳島新聞の社説がこれ。

8月21日付 徴用工問題  韓国は火種をつくるな

高知新聞の社説がこれ。

【徴用工問題】過度の外交論争を避けよ

 

二紙とも同じ「徴用工問題」について書いているけど、その主張はかなり違う。
同じ問題について違った見方を知ることは大切だ。

どちらが正しいか考えると、いい頭の体操にもなる。
そんなことで、今回はこの二紙の意見を見ていきたいと思う。

 

 

でもまずは、「徴用工問題」について簡単に説明させてほしい。

今の韓国でこんな動きがある。
「日本の植民地統治支配、朝鮮人が当時の日本政府によって強制的に働かされた」ということで、元徴用工らが日本の政府や企業に補償を求めている。

具体的な事例は、「三菱 徴用工」で検索すると出てくる。

 

でもこれはすでに終わった問題なんだな。
徴用工問題については、1965年の日韓の請求権協定(にっかんせいきゅうけんきょうてい)ですでに解決されている。

日韓請求権協定

日本が韓国に5億ドルの経済支援を行うことで、両国及び国民の間での請求権を完全かつ最終的に解決したとする内容。

知恵蔵の解説

韓国政府が「完全かつ最終的に解決した」と確認している。
これまでの韓国政府も、この「解決済み」という考えを継承していた。

 

それを今の文(ムン)大統領がひっくり返す。
「元徴用工個人の請求権はまだ消えていない。元徴用工は日本に補償を請求できる」と言い出したため、日本が大反発。
日韓でこの徴用工問題が新しい外交問題になりつつある。

8月21日付の徳島新聞と高知新聞は、社説でこの徴用工問題について書いている。

 

 

両紙とも、文大統領が「個人の請求権は消滅していない」と言い出したことを非難する。

「徴用工問題は、両国政府が解決済みとしてきたものだ。それを今になって否定するとは、全く理解に苦しむ(徳島新聞)」

「文氏の今回の発言は首をかしげざるを得ない(高知新聞)」

そしてともに、この徴用工問題によって日韓関係が悪化してしまうことを心配している。

両紙ともここまでは同じ。
意見が分かれるのはここから。

徳島新聞は「この問題の責任は文大統領にある」と主張する。
だから、文大統領に問題の解決を求めている。

請求権協定も日韓合意も、長い交渉を経て国同士が交わしたものだ。政権が代わったからといって、一方的にほごにできるはずがない。
(中略)このままでは、韓国は約束を守れない国と見なされるのではないか。国際的な信用が問われかねないことを、文氏は認識しなければならない。

高知新聞は「文大統領の言葉はおかしい」と指摘しつつも、この問題の原因として「日本の歴史認識」を指摘する。

強制連行されて日本企業などで働かされた韓国人の徴用工問題は、元従軍慰安婦への謝罪や補償とともに日韓の癒えない歴史問題の一つだ。目を背けることができない。
(中略)日本の植民地支配からの解放を記念する15日の式典で文氏は、日韓関係について「歴史問題にふたをして進むことはできない」と述べた。同感だ。日本は真摯(しんし)に歴史に向き合わなければならない。

徳島新聞は「この問題は韓国側にあるのだから、文大統領は約束を守れ」と言う。
高知新聞は「この問題は日本にも責任があるのだから、日韓が対応するべき」と言う。

どっちが正しいのか?

 

 

そりゃ、徳島新聞でしょ。

この問題の原因と責任は完全に文大統領にある。
文大統領が今までの韓国政府見解を否定することを言い出したのがいけない。

政権が変わったからといって、これまでの日韓の合意を”なし”にすることなんてできるわけがない。
そんなことをしたら、世界から「韓国は約束を守れない国と見なされる」というのは当然。

後になったら勝手に約束をキャンセルしてしまう。
そうなったら、日本は韓国を信用できなくなくなる。
韓国相手には、どんな約束や合意も結ぶことができなくなるだろう。

だから、「歴史問題を蒸し返し、新たな火種をつくることが、一国のリーダーとしてふさわしい行動なのか。文氏はよく考えてもらいたい」という徳島新聞が正しい。

 

高知新聞の「日本も悪い。だから日韓で対応するべき」という意見は現実的ではないし、公平でもない。

これは韓国の一方的な約束違反なのだ。
それにもかかわらず、日本の歴史認識を持ちだして「日本にも責任がある」という主張は強引すぎる。
韓国に責任があるのだから、その解決は韓国がするべき。

「日本は過去に韓国に悪いことをしたのだから、日本も対応するべき」という主張はもう、今の日本で支持されないだろう。

 

 

高知新聞は「日韓ともに相手を怒らせるようなことな言動はつつしみなさい」ということで、「過度の外交論争を避けよ」というタイトルをつけている。

「過度の外交論争を避けよ」というのは当然だけど、必要な外交論争には向かい合わないといけない。

徴用工問題の問題化は、文大統領の約束違反にその原因がある。
だから、日本は「韓国はルールを守ってほしい」と言えばいい。
「日本にも責任がある」なんて態度を見せてはいけない。

 

「日韓ともに冷静な対応が求められる」という高知新聞の主張はおかしい。
約束を守っている人間と破ろうとする人間を「どっちもどっち」というの不公平だ。
これでは、「高知新聞は、中立・公正をよそおいつつ実は韓国寄りだ」と思われても仕方がない。

 

 

「韓国に対しては配慮はいならい」というわけではない。
相手を思いやる心は大切だ。

でも、今までの日韓関係を見ていると、日本が韓国に対して過度に配慮していたために失敗していたと思う。

徴用工問題のような問題がおきたら、日本は過去の加害責任とは切り離して、韓国に言うべきことをハッキリ伝えたほうがいい。
「遺憾の意をしめす」だけではなくて、日本政府は韓国にしっかり抗議の意思や怒りをしめすべきだ。

 

長い目で見たら、互いの意見をぶつけて少しぐらいもめてもかまわない。
国民としても、そういう強気の日本政府を支持したほうがいい。
それは自民党政権だけではなくて、他の政党が政権をとっても同じこと。

「配慮か?圧力か?」という2つに1つではなくて、韓国に対しては、配慮しつつ圧力をかけていったほうがいい。
重点は圧力におくべきだ。

ようするに、「過度の配慮は避けよ」ということ。
日本が強気に出たことで韓国が反発したとしても、それを不安に思う必要はない。

 

 

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2 件のコメント

  • こんにちは、菊池です。

    以前僕が所属していたアムネスティの知り合いで、70代の男性二人と韓国問題でちょっとした議論をしたことがあります。
    お二人とも韓国に強いシンパシーを感じておられる方で、キリスト教徒で考え方はリベラルだと思いますが、僕が少しでも韓国に批判的なことを言うとむきになって反論してきます。でも中身はとても論理的とはいえず、結構感情的です。
    どうも韓国シンパは議論の仕方まで韓国的になるのか、とさえ思えてしまいました。
    たとえば僕が「韓国人はなぜ自分たちを第二次大戦中のユダヤ人になぞらえるんですかね」というと「韓国人はそんなことは言っていない。そう言ったのは日本人ですよ」と言い返えしてくるわけです。それで僕が「そんな話は聞いたことがない。韓国人自身が言ったという証拠が欲しいのであれば、ネットで調べればいくらでも出てくるから用意してもいいですよ」というと、いかにも怒った風にぶつぶつ言いながらどこかに行ってしまう、という具合。また、もう一人の方が日韓併合を日本による韓国の侵略だというので、「日韓併合は、欧米列強のアジア・アフリカ諸国の植民地化を侵略というのであれば侵略だと思います」と返すと、その方は一瞬返す言葉を失い、そんなことはないというようなことをぶつぶつと言っているのですが、理由を述べることはありませんでした。その方は欧米の植民地政策に対しても否定的な方ですから、当然アジア・アフリカ諸国の植民地化も侵略だ、という反応が返ってくるかと思っていたので、ちょっと意外でした。
    その方としては現在の多くの韓国人と同様に、当時の欧米列強と日本は違う(日本の方がよっぽど悪質だ)と思っているようで、両方を同列に並べること自体が不遜と感じられるようでした。(もちろん事実に依拠しているわけではありません。)
    また、「僕は日本と韓国が戦争したとは思ってません」と言ったところ、「それは失礼だ!」と言い返してきました。これはさすがに予想外の言葉で、僕の方が言葉を失ってしまいました。

    韓国シンパの方は日本にだけ一方的に厳しく、韓国に対して異常にやさしい、という印象があります。韓国人の日本批判は無批判に受け入れるのに、日本人の韓国批判には感情的に反発してきます。
    日本のリベラル派は韓国シンパが多いので、韓国の一方的な日本攻撃にも日韓間の約束をないがしろにするような態度にも非常に寛容に対してきました。
    自称リベラルの僕もそのような彼らの姿勢にはかなりイラつかされてきました。
    でもリベラルの中でも韓国の身勝手な姿勢に腹を立てている人もいるのではないか、でも、それが言えない雰囲気があるのではないか、と思っています。
    なぜ言えないのか、おそらく理由の一つは保守派に迎合していると受け取られるのがいやだから、ということがあると思います。
    リベラルの中にも韓国に反発を感じる人がいる、それをハッキリ認識させられたのが、大沼保昭教授が著書「慰安婦問題とは何か」の中で韓国に対して大きな失望感を感じていることを明らかにしていたことです。
    おそらく大沼教授にかぎらず多くのリベラル派が同様の感情をもっているのではないかと思いますが、勉強不足のため、そこら辺のことはよく分かりません。

    そのような状況に風穴をあけたのが韓国人の朴裕河教授の「帝国の慰安婦」だったと思います。
    朴教授の本は、「反日ナショナリズムを越えて」「和解のために」などを読んできて、非常に信頼していますが、「帝国の慰安婦」を読んだときは、このような本を出版できるのなら韓国もまだまだ捨てたものではないな、と思っていたのですが…。
    やはり、悪い意味で韓国は僕の“予想”を裏切らない国でしたね。
    「帝国の慰安婦」は日本のリベラルをみごとに二つに分裂させましたね。
    ある意味、この現象は日本の言論界の健全性の表れではないか、と思っています。

  • 菊池様、コメントありがとうございます。

    韓国に強いシンパシーを感じている人は、一方的な思いこみによる理解が多いと思います。
    日本をドイツ論になぞらえるのは聞いたことがありますが、韓国人をユダヤ人になぞらえるのは初めて聞きました。
    ナチスはユダヤ人を絶滅しようとしていましたが、日本が当時の朝鮮人を絶滅しようとは思っても見ません。
    だったら、なんで併合したのか理由がわかりませんし。

    今までの過剰な「韓国擁護」が反韓・嫌韓を生んでいると思います。
    大切なことは感情的にはならずに、事実を伝えることですね。

    最近では、韓国人にも「韓国政府が言っていることが正しいのか?」と疑問に思う人も増えているらしいです。
    韓国の大学にいる日本人がこんなことを言っていました。
    「今となってはネット等でなんでも知れる時代なので日韓両方の立場を知って自国が主張していることがおかしいと感じている韓国人もたくさんいるように私は感じます」

    日本を批判することはまったく問題ありませんが、韓国と自分を正義の側において悪の日本を糺す、という姿勢では共感を得られないでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。