イスラム教と豚②味の素がインドネシアで大失敗、日本人逮捕

 

前回の記事を読んでいない人のために、このことを書かせてほしい。

・イスラーム教で豚肉を禁止している理由
・インドネシアという国の簡単な説明

「前回読んだから知っているぜ」という人は、先に飛ばしてオランウータンの写真からどうぞ。

 

イスラーム教徒が豚肉を食べてはいけない理由は、クルアーン(英語読み:コーラン)にそう書いてあるから。

あなたがたに禁じられたものは、死肉、(流れる)血、豚肉、アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの、絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。

ハラールとは

 

そもそも「イスラーム」とは「神(アッラー)への絶対服従」という意味がある。

イスラーム教

7世紀前半、ムハンマドが創始した宗教。
原義はアラビア語で「身を委(ゆだ)ねること」、転じて「唯一神(アッラー)への絶対服従」を意味する。アラブ人の征服活動とともにアラビア半島の外へ広がり、さらにムスリム商人の商業圏拡大ととも広がった

(世界史用語集 山川出版)

 

クルアーンの内容はアッラーの言葉。
イスラーム教徒である以上、これに従わないといけない。

内容が納得できるかどうかは関係ない。
「絶対服従」なんだから、信者が神の言葉を疑ってはいけない。

 

 

次に、インドネシアという国について。

1 面積は約189万平方キロメートルで、日本の約5倍。

2 人口は約2.55億人で、日本の約2倍。

3 首都はジャカルタ(「勝利の都」という意味。「じゃがいも」の語源)

4 民族は大半がマレー系(ジャワ,スンダ等約300種族)。インドネシアは他民族国家。

5 言語はインドネシア語。

6 宗教はこんな感じ。

イスラム教 87.21%,キリスト教 9.87%(プロテスタント 6.96%,カトリック 2.91%),ヒンズー教 1.69%,仏教 0.72%,儒教 0.05%,その他 0.50%

数字は外務省ホームページインドネシア共和国(Republic of Indonesia)基礎データから。

ちなみに、インドネシアという国名は「島のインド」という意味。

インドネシアとは「島のインド」の意味であり、歴史的にその文化的母国でもあったインドとの関係を物語っている。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インドネシアにいるオランウータン
オランウータンは「森の人」という意味。

 

国内にいるイスラーム教徒の数はインドネシアが世界最大。

そんなインドネシアで、韓国の企業が失敗してもうた。
インドネシアが輸入した韓国製ラーメンから豚のDNAが検出されてしまう。
これでその製品は輸入禁止。

前回そんなことを書いた。

 

このニュースを知ったある日本人はネットにこんな書き込みをする。

「とはいえ、以前に味の素も同じ事やらかしてるからなあ。あんま他所の国を笑えないんだよな…」

そのとおり。
実は「味の素」もインドネシアでイスラーム教のタブーにふれてしまい、大失敗したことがある。

やっぱり、今でもあの事件を覚えている人はいるんだなあ。

 

インドネシアのイスラーム教徒の女性
ヒジャブで髪を隠している。

 

今回の韓国企業の場合は輸入禁止ですんだ。

でも味の素のケースでは、現地の日本人が逮捕される事態にまで発展している。
理由は同じくイスラーム教のタブー、豚。

インドネシアの味の素では、製品に豚肉は使っていなかったけど、「豚の酵素」を使用していた。
これが判明して大問題になった。

ウィキペディアから。

味の素追放事件

2000年(平成12年)、インドネシアで、「味の素」の原料にイスラームで禁忌とされている豚肉が使用されている疑いがあるという噂が流れた。
材料として豚の成分を使用してはいなかったが、発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために、現地法人の社長が逮捕され、味の素製品は同国の食料品店から姿を消した。

この後、味の素は触媒を変えことで販売許可が下りて社長も釈放された。
現在、味の素はインドネシア人の生活に定着している。

 

ミャンマーの味の素
東南アジアの人たちに味の素は欠かせない。

 

過去には、横浜ゴムがイスラーム教のタブーに触れてしまい、タイヤを回収・交換し、生産中止に追い込まれてしまったことがある。

このとき問題になったのは、豚じゃなくてタイヤ。

横浜ゴムがつくったタイヤの溝の模様(もよう)が問題になる。
この溝の模様が「イスラーム教の神アッラーのアラビア語の文字に似ている」、ということでイスラーム教徒から苦情で出た。

くわしいことはこの記事をどうぞ↓

宗教のタブー②日本の会社がイスラム教の「豚肉・コーラン」で国際問題に

 

宗教に関心がない日本人からしたら、「宗教って面倒くせえ」と感じる人もいると思う。
でもでも、宗教のタブーは「知りませんでした」ではすまない。

日本に住んでいたインドネシア人のイスラーム教徒をラーメン屋に連れて行こうとしたら、「ラーメンはダメです」と言われた。
まず、チャーシューと豚骨スープがダメ。
他のラーメンでも、前に豚骨ラーメンが入っていたどんぶりもアウト。
ということで、このときはそば屋へ行った。

 

イスラーム教徒は中東だけではなく、世界中にいる。
東南アジアにも欧米にもたくさんいる。
国際化の時代では、英語の力だけじゃなくて宗教の理解も必要。

 

イスラーム教の聖典クルアーン(英語読み:コーラン)

 

「ポカリスエット」のアラビア文字。
タイヤの溝に似ているかも。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。