最近、インターネットの掲示板に、どこかのラーメン好きがこんな質問を投げかけた。
家系ラーメン食べるのやめられた人いる?
友達に勧められてからやめたいんだけどずっとやめられない
体に悪いのわかってるから早くやめたい
スポーツもやってるから本気で悩んでる、でも明らかに家系ラーメンに依存してる
自力で食べるのやめられた人いる?
この気持ちは分かる。
ボクも一時期、天下一品のラーメンの味にはまってしまい、抜けられなくなったことがある。
この悩みには、こんな意見が寄せられていた。
・家系ラーメンじゃないラーメン行けばいいじゃん
・家系のなかでも当たり外れあるからな。外れの店ならやめられる。
・無理
・2、3ヶ月薄味のものを食べ続けた後家系食べるとしょっぱ過ぎて受け付けなくなる
・ガチで5キロ太った
・二郎系にシフトしたら止められた
家系ラーメンのやめ方は分からないけど、日本人にとってラーメンが本当に身近なものなのは分かる。
日本人ならだれでも知ってる国民食、ラーメン。
でも、この「ラー」を知ってますか?
ボクは中国語の「拉(ラー)」だと思ってました。

中国語の「拉(ラー)」は「引く」という意味。
だから拉面(ラーメン)というのは「手で引いたメン」という意味だと理解していて、中国人の日本語ガイドからもそう聞いたことがある。
でも、実はちがうらしい。
5月25日に放送されたNHKのチコちゃんに叱られる! #7という番組でそれを知った。
ラーメンの「ラー」は、「おかみさんの優しさから生まれた」という。
明治時代に登場したラーメンは、大正時代に日本全国へ広がっていく。
でもそのころは、「しな(支那)そば」と呼ばれていた。
この「支那(シナ)」という言葉には問題がある。
日中戦争のときなど戦前戦中、日本人は中国を「シナ」、中国人を「シナ人」と呼んでいた。
この言葉には中国人への蔑視や侮辱が込められていたから、いまの中国人は「支那」という言葉をとても嫌う。
友人の中国人はこんなことを言っていた。
「ボクは旭日旗より、『支那(シナ)』という言葉のほうが嫌いです。理由は中国のテレビです。ドラマでよく、日本兵が中国人をバカにして『シナ』と言っていました。それを何度も聞いたから、旭日旗よりこの言葉のほうがイヤですね」
たとえ悪意がなくても、いまの日本でこの言葉は使わない方がいい。
テレビで「支那」は放送禁止用語になっているし、政治家が公の場で使うことはあり得ない。
このことは前回書いたので、くわしくはこちらをどうぞ。
「支那」にはこんな背景があるから、中国人の彼は日本で「支那そば」という文字を見ると不快になってしまう。

友人の台湾人も日本に来たとき、これを見て不快になった。

中国のラーメンは味が薄いし、麺はうどんに近い。
大正時代、北海道大学の前で食堂をやっていたタツさんという女性も、「シナ」という言葉が気になっていた。
というのは、北海道大学に通う中国人留学生がよくその店に来ていたから。
当時、その食堂には「肉絲麺(ロースーメン)」という人気の麺料理があった。
これは店の中国人が作っていたのだけど、日本人の客は「ロースーメン」ではなく「支那(しな)そば」と言う。
それを中国人が聞けば当然イヤな気持ちになるから、おかみさんはそのことに心を痛めていて、「支那しなそば」とは別の言葉を考えていた。
そのころ店では、中国人シェフが料理をつくると「好了!(ハオラー:できたよ)」と言っていた。
これを聞いたおかみさんは、ある日「『ラー』って響きがいいな」と思ったことから、ロースーメンが「ハオラーメン」に変わり、さらに「ラーメン」になった。
日本人客もこの「ラーメン」という言葉が気に入る。
それで日本人も中国人も「ラーメン」と呼ぶことで、店から「しなそば」という言葉が消えていった。
それでNHKの番組では、「ラーメンの『ラー』はおかみさんの優しさから生まれた」となる。
その後、ラーメンという言葉が週刊誌やテレビCMで取り上げられるようになって、全国的に広がっていったという。
この話は「北海道・中国交流デジタル資料館」のサイトにものっている。
ただNHKの番組では、「ラーの由来には、拉(ラー:引く)という説もある」とも紹介していた。
ラーの由来にはいくつか説があるけど、ここでは「おかみさんの優しさ説」を推したい。
ちなみに1958年(昭和33年)に作られた「チキンラーメン」とともに、「ラーメン」という言葉が日本で広がったといわれる。
日本を代表する芸術家で美食家の「北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)」という人がいる。
この人は伝説的な人物で、マンガ「美味しんぼ」の海原雄山のモデルにもなった。
北大路魯山人は「食器は料理の着物」なんてことを言う。
「ボールはともだち」みたいな。
とにかくその魯山人は、料理をつくることで大事なことは、知識ではなく愛情だと強調している。
実際、料理 といいますのは、好きでつくるというのでなくてはなりません。それが趣味であります。 ただ知って美味くつくるという知識だけではなく、温かい愛情で楽しみながらやるという気持であります。
「日本料理の基礎観念 (北大路 魯山人)」
こんなことからも、ラーメンのラーの由来は、やっぱり「おかみさんの優しさから説」を推したい。
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