外国人が見た日本社会⑥女性車両は差別?特権?アジールです

 

はじめの一言

*明治時代の日本について
「はかり知れない変化はまさに驚異であり、歴史のうえでも、くらべるものがないほどだ
(ネルー)」

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

ネルー

マハトマ・ガンディーとともにインド独立運動の最も著名な指導者となり、1947年に独立を達成したインドの初代首相に就任した。

国際政治では「第三世界」の中心的人物として注目された。国内の経済政策では計画経済を推進したが、成功を収めるには至らず、晩年に行き詰まりを見せる中、死亡した。
(ウィキペディア)

 

今回の内容

・女性専用車両は男性への差別か?
・「アジール」としての女性専用車両

 

・女性専用車両は男性への差別か?

前に日本にある女性専用車両について書いた。
知り合いのアメリカ人の女の子が、東京で女性専用車両を見て驚いていた。

「こんな車両はアメリカで見たことがないわ!これは男性への差別になると思う」

日本では当たり前のようにある「女性専用車両」は、男性差別になるのだろうか?

 

 

個人的には、男性差別にあたると思う。

ウィキペディアに書いてあるけど、女性専用車両をもうけることには法的な根拠がない。

現在の日本の公共交通機関における「女性専用車両」について国土交通省では「鉄道事業者において、輸送サービスの一環として導入された女性等に配慮した鉄道車両」と定義しており、「男性の乗車に対しては禁止する法的根拠はなく、男性利用者の協力のもとに成り立っているもの」としている。

(ウィキペディア)

 

「法的根拠はなく、男性利用者の協力のもとに成り立っているもの」としている。
法律として定めていないというのは、これが男性差別にあたる可能性があるからだろう。

台湾でも女性専用車両が登場したことがあった。
けれどそれは「男性への差別になる」と認められて、すぐに廃止されてしまった。

 

最近、グアム出身のアメリカ人の女の子と話す機会があったから、彼女にも聞いてみた。

「その判断はとても難しい。女性専用のスポーツジムは問題ないけど、公共交通機関で女性専用というのはどうかなあ?男性へに差別と思われてもおかしくはない」

ちなみに、彼女にとっては映画館の「レディース・デー」は男性差別にはならないという。
グアムにも特定の日には女性だけ飲物が無料になる日があるらしい。
でもそれは問題になっていない。

そんな彼女はこんなことを言う。

「同じ料金を払って、男性だけが入ることができないというのは、差別とみられも仕方がない。だから、女性専用車両に乗る人は割り増し料金を払えば、問題ないんじゃない?特別のサービスを受けるということだから」

なるほど!
「割り増し料金」というのは考えたこともなかった。

くり返しになるけど、ボク個人としては女性専用車両は男性への差別にあたると思っている。
でも現状では、女性専用車両は必要だと思っている。

 

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仏教国のタイでは、「お坊さん優先席」がある。

 

・アジールとしての女性専用車両

痴漢にあったことがあるという女の子から、その話を聞いたことがある。

そのときその子は、ショックと恐怖で体が動かなくなって声も出せかったという。
それから3年たった後でも、そのとき感じた怒りや屈辱は消えない。

女性専用車両が導入さると、男性が不便を感じることはたしかにあると思う。
けど、この女の子と同じぐらい不快な体験をすることはないだろう。

 

 

理想としては、痴漢がいなくなって女性専用車両の必要性がなくなればいい。
でもこれは現実的に考えられない。
不可能だろう。

これまで考えられる限りの対策をしてきたけど、痴漢がなくなることはなかった。
痴漢をなくす手段は、現時点ではない。

先ほどの女の子のように恐怖で動けなくなってしまうような女性がいるとしたら、男性差別であってもこの車両の導入はやむを得ないと思う。

それは一種の「アジール」として。
アジールという言葉については前にも書いたけど、このようなもの。

アジール

聖域を意味する語。
そこに逃げ込んだ者は保護され,世俗的な権力も侵すことができない聖なる地域,避難所をいう。古くはユダヤ教の祭壇,ギリシアやローマの神殿,日本の神社や寺院の領域が,これに当たる。

(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説)

簡単にいったら、「そこに行ったら、とりあえずは絶対に守ってもらえるという避難所」と考えていいと思う。
現在の世界では、各国の大使館や領事館がアジールにあたる。
だから、亡命者は大使館に駆け込む。
そこに逃げ込めば、とりあえずは確実に保護してくれるから。

 

先ほどの子のように、大きな心の傷を負った女性もいる。
電車に乗らないといけないのに、痴漢のことを考えると乗るのが怖くなってしまう。
そんな人が現実にいる。

大声で抵抗できたらいいけど、どうしてもそれができない人もいる。
そうした人が駆け込むことができる場所は必要だと思う。
「そこに行けば絶対に守ってもらえる」という避難所のようなところをつくる必要はあるだろう。

だから、たとえそれが男性への差別であったり「女性の特権」に見えたりしても、「アジール(避難所)」として女性専用車両があってもいいと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。