前回の記事で、ロシアのピザ店がしたすさまじいキャンペーンのことを書いた。
ドミノ・ピザのロゴをタトゥーで体に入れれば、ピザを一生無料で食べることができる。
日本でこれはありえない。
ビジネスをするうえで注目を集めることが大事だけど、反感をかってはいけない。
社会の常識を理解したうえで、それを上手に破る発想やテクニックが必要になる。
日本で勝負するのに、日本人の基本的な価値観を無視するのはただのバカ。
そんな話をどっかの飲み会で聞いた。
「エレガントでありながら行儀を悪くする。つまりくずすには、まず第一に礼儀正しい基礎がなければならない」
こう言ったのはココ・シャネル。
新しいものや変化を作り出すためには、まずは社会の常識や基本的な価値観を理解しないといけない。
おっと話がそれた。
前回はロシアのクレイジーなキャンペーンのほかに、アリアナ・グランデさんが腕に「千と千尋の神隠し」の千尋のタトゥーを入れたことを紹介した。
このすぐあと、「りゅうちぇる」さんも腕にこんなタトゥーを入れて話題になった。
タトゥーについてボクの立場を書いておくと、基本的には否定派だ。
タトゥーは好きじゃないし、自分が入れることは絶対にない。
まわりに「する」と言う人がいれば、とりあえず胸ぐらをつかんで反対するだけど、最後は本人が決めればいいと思う。
他人がタトゥーをしていることについては、関係ないから批判もしない。
さて、話をりゅうちぇるさんに戻す。
「大切な家族の笑顔を守る」という理由で妻と息子の名前を自分の肩に入れたのだけど、これには賛否が分かれた。
「これでタトゥー入ってる人=怖い人っていう偏見は減るはず。りゅうちぇるみたいないい人でもタトゥー入ってるってこと」とファンは肯定的だったけど、それ以外の人からは批判が殺到。
やっぱりタトゥーは日本人の価値観とは合わないのだ。
「ファンからは支持されるけど、それ以外からはたたかれる」というのは想像していたけど、このあとりゅうちぇるさんがインスタグラムで書いたことは予想外だった。
今まで応援してくれていた方が、冷たいコメントだけを残し、ぼくのことを一瞬で嫌いになるのが本当ならおどろきです。
ファンですら、「一瞬」でアンチになってしまう。
しかもこういう人が1人や2人ではないらしい。
りゅうちぇるさんのファンには若い人が多くて、タトゥーには寛容な層だと思う。
そういう人でもこうなるとは思わなかった。
タトゥーが日本人の価値観と合わないことが改めて分かった。
りゅうちぇるさんは寄せられた批判について、「こんなに偏見のある社会 どうなんだろう。仕方ないよね。ではなく、僕は変えていきたい」と言う。
ボクとしては、タトゥーを入れることより、批判的な見方を「偏見」の一言で否定するほうが気になる。
タトゥー(入れ墨)に対する日本人の見方には、長い歴史や伝統にもとづく価値観がある。
社会を変えたい人がいれば、変えてほしくない人もいる。
人数でいえば、だいたい後者のほうが多い。
自分と違う価値観を「偏見」と呼んで否定するやり方はスマートではない。
「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」と言うフィリップマーロウのように、他人の価値観を否定すのなら、自分が否定される覚悟が必要だ。
あんまり否定されたくなかったら、まずはその社会の常識や基本的な価値観を身につけたほうがいい。
それをふまえたうえで否定するなら、まだ摩擦は少ない。
打たれても出続ける強い釘ならいいけど、その自信がなかったら、打たれないように出る工夫や知恵がほしい。
ただ、りゅうちぇるさんのファン層でも抵抗があるから、タトゥーへの日本人の認識を変えるのは相当むずかしい。
でも、シャネルはこんなことも言っていた。
「人生がわかるのは逆境のとき」
「ただの人ではなくて、ひとかどの人物になろうと思ったら、ずいぶんたくさんの人が離れていくもの」
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