ソウル在住アメリカ人が見た韓国の「ノージャパン」運動

 

友人に、いまソウルの小学校で英語を教えているアメリカ人がいる。
今回はそのアメリカ人女性から見た韓国の「ノージャパン運動」を見ていこうと思う。

 

 

でもその前に、彼女の立場について書いておきたい。
そのアメリカ人は日本に3年間住んでいたから、日本をことを知っているし愛着もある。
日本にも韓国にも興味があるけど歴史認識や政治問題にはノータッチで、いまの日韓の対立は「it’s like cats and dogs」という。
龍虎の戦いではなくて犬と猫だから、日本語でいえば「目くそ鼻くそ」といったところか。
つまりどっちもどっちに見えるらしい。

そんな中立というか冷めた目をしているアメリカ人に、メールで韓国での「ノージャパン運動」について聞いてみた。

日本が韓国に対して輸出管理強化を発表したのは7月の上旬。
ムン大統領は「日本に二度と負けない」と宣言し、マスコミは「経済侵略」と非難して国民の反日感情はあおり立てる。
ノージャパン運動のはじまりだ。

それから1か月後の8月2日、日本政府は貿易上の優遇対象国「グループA(ホワイト国)」から韓国を除外することを閣議決定した。
当然、韓国でのノージャパンはさらにヒートアップ。

そんな8月上旬に先ほどのアメリカ人に韓国での様子を聞いてみた。
これがその返事。

yeah. Korean people really are boycotting stuff. When I mentioned Japan one of my students he instantly responded, ‘Oh 나쁜 일본’ ‘Bad Japan!’

 

韓国の人たちは日本製品のボイコット運動を熱心にやっている。
勤務先の学校で「日本」と言及したら、小学生がすぐに「悪い日本!(日本は悪いやつ)」と反応した。
韓国社会の空気が伝わってくる。

そしてこれは8月中旬にもらったメール。

travel agencies are having hard time convincing people to go to Japan. So nows the cheapest time to visit Japan lol

 

「日本には行かない!」という民意が韓国の航空会社や旅行会社を直撃。
でもそのおかげで、いまは最安で日本に行くことができる。(笑)

これは9月の記事だけど、乗客が激減したある航空会社は「非常事態宣言」を出した。

日本不買はもはや自傷行為。韓国企業が初の非常経営体制を宣言

また韓国政府は旅行会社に緊急融資を行うことを決定する。
国民が不買して、政府が税金でその穴埋めをするというバカげたことがおきていた。

【助けて!】ノージャパンで韓国企業が悲鳴 → 政府が緊急融資

とにかく8月の時点で、ノージャパン運動は韓国企業にかなりのダメージをあたえていたのだ。
でも関係ないアメリカ人には、「lol(lauglaugh out loudly)」と笑いごと。

 

このメールの前から、「ノージャパン運動」のシールを見たら送ってほしいと彼女に頼んでいたのだけど、「分かった」と言って何も送りゃしない。
でもしばらくしたら、「ノーアベ」のサインを見たと写真を送ってくれた。

I saw several ‘No Abe!’ signs today.
I couldnt read it fully though. If I see another one I’ll take a better pic

 

この少し前から、行き過ぎた反日活動が韓国国内でも問題になっていた。
「日本人お断り」というレストランが現れたと思ったら、旅行船のチケット(約1750円)が日本人には815万ウォン(約71万円)で販売するという地方自治体もでてきた。
こうなるともはや日本人への差別だ。
くわしいことはこの記事をどうぞ。

【日本人お断り】愛国行為が“差別行為”へ。韓国人も批判や不安

「ノージャパン」から「ノーアベ」に変わった背景には、こういうことが欧米のメディアから非難されたこともあるはず。

 

8月下旬、韓国を旅行中の日本人女性がソウルの街を歩いていたら、韓国人男性から差別用語を言われ、さらに髪をつかまれるなどの暴行を受ける事件があった。
このときこの男性は、自分が殴っているように見えるよう女性が動画をねつ造したと主張する。
でも韓国人のことは韓国人がよく知っている。
韓国警察はこの男を暴行と侮辱の疑いで書類送検した。

このときのアメリカ人のメールにはこうある。

I’ve seen Japanese tourists here in Korea. They are fine. No one bothers them.

日本人旅行者を見るけど、特に問題はないらしい。

 

そして9月16日にこんなメールをもらった。

All the No Abe signs are gone! I wonder why

 

とつぜん「ノーアベ」のサインが全てなくなってしまった!
このアメリカ人にも理由が分からない。

「韓国人は熱しやすくて冷めやすいからじゃね?」と書くと、こんなメッセージがくる。

yeah. One thing Koreans are good at is the “go hard or go home mentality”. But luckily….they also tire easily.

 

「go hard or go home mentality」という表現を見たのは初めてだからイマイチ意味が分からないけど、「全力でやるか、あきらめるか」ということだと思う。
個人的な経験からだけど、韓国人には「好き・嫌い」「やる・やらない」といった「ゼロか100」という極端な傾向がある。
でも彼らは飽きっぽい(tire easily)。

このアメリカ人は日韓のどちらにも肩入れしていないし、「面倒なことにはかかわりたくない」という意味での中立の立場だから、言っていることは信用できる。
そもそもウソをつく必要がない。
だから小学生の「Bad Japan!」から「signs are gone!」まで、見たこと聞いたことをすべて正直に言っているはず。

韓国ではまだまだ、日本製品の不買運動や日本旅行をもボイコットするノージャパン運動は続いている。
つい先日も中央日報にこんな記事(2019年09月20日)があった。

プロ野球球団が日本キャンプを次々と中止している。国民的な反日情緒を考慮した決定だ。(中略)日本不買運動(No Japan)の核心「日本旅行をしない」にプロ野球が参加するということだ。

日本キャンプに行かない、韓国プロ野球も「No Japan」

こんな動きはあるけど、「人種差別」のような一時の激しさは確かになくなった。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。