4度の結婚に名誉剥奪。そんな国王にタイ国民の反応は?

 

もしタイ人と話す機会があったら、どんな話題がいいだろう?

若いタイ人ならアニメやラーメンなんかのカジュアルな話でもいいけど、ちょっとまじめな話で日本との共通点を取り上げてもいい。
日本とタイには、独立を守り通したという歴史と皇室(王室)という文化がある。
19世紀から、特にタイの場合はマレーシア、ミャンマー、カンボジアなどの周辺国が次々とヨーロッパの植民地となっていく。
でも、名君ラーマ5世がいたタイはその運命をまぬがれて、東南アジアでは唯一、独立国であり続けた。

ラーマ5世と明治天皇には共通点がたくさんあって、たとえばお2人とも即位した年は1868年とまったく同じ。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

明治天皇とタイ国王ラーマ5世・2つの共通点1つの違い

 

時間や約束をあまり守らないタイ人だけど、仏教と王室にはとても真面目で信仰や信頼が深い。
バンコク中央駅(日本でいえば東京駅)にはこんな国王の祭壇があった。

 

こうしたものがイオンやレストランなどにもある。
この点は日本とまったく違う。

 

タイの王室と日本の皇室では国民との距離感が違う。
日本にはない「不敬罪」がタイにはあって、国王に失礼な言動をとったら警察に捕まる。
だから国王の写真を燃やしてその灰を足で踏むというアートはタイでは表現の自由とは認められず、作家と展示を許した人間は刑務所でしっかり反省することになる。

そんなタイについて、最近おどろいたのはアメリカCNNが報じたこのニュース。(2019年10月22日 )

タイ 王妃と別の「配偶者」称号剥奪 「王妃のようなふるまい」

現在のワチラロンコン国王に「別の配偶者」がいたというのは初耳。
不敬罪になるか分からないけど、これはつまり、「第二夫人」や「愛人」ということじゃないか?
ともあれ国王には王妃以外にも愛する女性シニーナートさんがいて、ことしタイでは100年ぶりに、その女性に「チャオクンプラ」(高貴な配偶者)の称号が与えられた。

でもその3か月後、勅命(王の命令)によって彼女は「チャオクンプラ」の称号も、軍の階級や勲章も一切の名誉を剥奪された。
これに国民の間では驚きが広がっている。

シニーナートさんは「国王への不実」をはたらき、「自らの野心のため」のためにチャオクンプラの地位を追われたという。
野心というのは、彼女が王妃と同様の地位を求めたこと。

「現在の地位に満足せず、王妃のようにふるまった」
「国王にいかなる敬意も払わず、王室の伝統を理解していない」
「無礼で恩知らずだ。人々の誤解を招き、国や王室を傷つけるものだ」

タイ王室からこうにらまれたシニーナートさんは、これからどうやって生活していくのだろう。
そもそもタイで生きていけるのか。

ワチラロンコン国王は4回結婚していて、今回このような対応をして「高貴な配偶者」を一般人に降格させた。
日本の天皇ならいろいろありえない。
国民の描く皇室像からかけ離れているから、日本でこんなことがあったら天皇や皇室には大ダメージになるはすだ。

 

 

「タイ人は国王のこの振る舞いについて、どう思っているのだろう?」

そんな疑問がわいたから知り合いのタイ人に話を聞いたら、タイ王室のイメージが低下することはなくて「みんな面白がっていますよ」と言う。
意外とあっけらかん。

3か月で天国から奈落に落ちた女性に、一般のタイ人は大いに興味を引かれている。
日本のワイドショーでもこんな人物がいたら、「素材」としてはかなりおいしい。

国王の結婚回数や妻に準じる女性がいたことは、国民にとっては大したことではないらしい。
その理由についてタイ人は「だって、ラーマ5世には妻が100人以上いましたから」と話す。
ラーマ5世には正妻・副妻・側室などがいてその数は160人以上にのぼり、生んだ子供の数は77人と歴代最高を記録している。
ただこの結婚には、いろんな地方の女性と結婚して国をひとつにまとめるという政治的な意味合いが強い。
ちなみにロシア人女性とも結婚したから、当時タイとロシアが仲が良かった。

妻の数なんてものは、奴隷を解放してタイを近代化させたラーマ5世の偉業の前では色あせる。
こんな“伝統”というか前歴があるから、タイの国民は国王のプライベートにあまり関心がなくて、今回の件で王室への印象が大きく変わることもないという。

マイペンライ(気にしない)というタイ人の国民性のせいか、「徳」を重視する日本人とは受け止め方が違うようだ。

 

ラーマ5世

1999年にはアメリカの『タイム』誌で、「今世紀もっとも影響力のあったアジアの20人」の1人にタイ人から唯一選ばれた。

ラーマ5世

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。